アプリ限定 2025/03/13 (木) 12:00 5
今年デビューする競輪選手候補生の第127回生(男子)と第128回生(女子)の卒業式が7日、伊豆市の日本競輪選手養成所で行われた。当サイトでは競輪選手候補生の卒業を記念してルーキーたちの横顔を特集シリーズで更新中。Vol.4となる今回は、野球投手から転身を遂げた岩原健馬候補生(20歳・愛知)のインタビューをお届けする。(取材:3月4日卒業記念レースにて/構成:netkeirin編集部)
軟式で7年、硬式で3年、10年間野球に打ち込んだ岩原健馬候補生。高校は野球強豪校・中京大中京に進学、1年生からサウスポーの投手として試合に出るほどの実力者。しかし、そんな岩原候補生は、今年2025年に競輪養成所を卒業し、競輪選手としての道を歩み始めようとしている。将来を有望視されていた中で、なぜ未経験だった“競輪界”に転向を決めたのかーー。
ーー岩原候補生はもともと野球の強豪校で、サウスポーの投手として1年生から試合に出られていたんですよね。
そうなんです。でも、肩をケガしてしまったんです。あと、舟状骨が潰れてしまうケーラー病という病気になってしまったりして。それが原因で野球を辞めてしまいました。
ーーそれは大変でしたね。そこから競輪を始めるのには何かきっかけがあったんでしょうか?
飲食店でたまたま競輪中継を見て、感銘を受けたんです。スピード感だったり、それを生み出す選手の肉体とか駆け引きにすごく心を惹かれて、自分もやってみたいなという気持ちになりました。
ーー飲食店でたまたまですか! それまでは競輪を全く見たこともなかったのですか?
そうですね。『競輪』という言葉を知っているくらいで、観たことはなかったです。初めて観て、衝撃を受けました。
ーーでも、やっぱり長年打ち込んでいた競技からの転向って、なかなか柔軟な考えを持っていないと踏み切るのが難しいと思います。ご自身のことをどのような性格だと思いますか?
性格ですか、難しいですね…(笑)でも、好奇心は強い方かもしれないですね。知らないことにチャレンジしたいというか。趣味も多いですし。何か興味を持った時に、気軽に一歩踏み込めるようなタイプかもしれないです。こうやって競輪にも出会えましたし、野球のことはそんなに後向きには考えていないですね。
ーー例えばどのような趣味がパッと浮かびますか?
音楽が好きで、ギターを自分でちょろっとやっています。あとは昔から絵を描くことが好きです。芸術的なことが好きなのかもしれません。
ーープロフィールシートの尊敬する人物に「レオナルド・ダ・ヴィンチ」と書かれていたと思いますが、『芸術』がお好きと聞いて、ようやくつながりました(笑)
そうなんです(笑)デザインも少しやっていて、iPadでお絵描きしたり、それを自分でTシャツにしたり、アイコンに使ってもらったり。127期の卒業記念ジャージも作らせてもらいました。競輪やりながらでも、そういう経験は役に立っているかなと思います。
ーー岩原候補生の出身地の愛知県豊橋市はレトロで流されない感じの町っていう印象ですが、愛知の好きなところを一つ挙げるとしたらなんですか?
自分はずっと愛知にいて、めちゃくちゃ愛知が好きです。でも、改めて好きなところって言われると、なんだか難しいですね(笑)もしかすると、みんな我が強いというか、自分をちゃんと持っているところがあるかもしれません(笑)やっぱり地元なんで、無条件に好きですね。
ーー素敵ですね!愛知といえば、netkeirinでも金子貴志選手(49歳・愛知=75期)と仲良くさせてもらっています!
そうなんですね! 金子さん、たまに競輪場でお会いします。ちょうど金子さんのお弟子さんと同期ですね。花田雄飛さん(24歳・愛知)。
ーー現在活躍している先輩レーサーの中で、走りを参考にされていたり尊敬する選手はいますか?
浅井康太選手(40歳・三重=90期)ですね。今、ちょうどフレームをお借りしています。
ーー横の関係性についてはどうですか? また、養成所生活で一番記憶に残っていることがあれば教えてください。
山本康旗さん(大分・24歳)とは仲良くさせてもらっていますね。養成所生活で記憶に残っているのは、やっぱり第3回記録会でゴールデンキャップをとった時ですね。
ーー自転車未経験からゴールデンキャップを獲得するまでに相当な練習を積まれたと思います。成長の秘訣などはありますか?
1回目、2回目の記録会は正直ゴールデンキャップを狙える位置にいなかったので、基礎のところからやっていこうと思っていました。でも、2回続けて白帽(※)を獲って、他の同期生が9人もゴールデンキャップを獲ったのを見て、3回目は本気で自分もゴールデンキャップを目指して頑張りたいなと思いました。自分の体がどういうふうに動いているのかとか、そういう内面に意識を向けて練習できたのが、ゴールデンキャップ獲得に繋がったのかなと思います。
※白帽:スピード・持久力ともに優れた候補生に贈られるキャップ
ーー浅井康太選手も体の動かし方についてはたびたび言及されていますよね。線の細さ太さ関係なく、活躍されている選手も多いですよね。
はい。そういうところも、浅井さんを尊敬している理由の一つですね。
ーー飲食店で中継を見た時に『競輪選手の肉体に感銘を受けた』と仰っていたことにも通じるところがある気がします。
そうですね。ただ、自分は内面に向きすぎる癖があって、外に意識を向けるというのがまだできていないところがあります。デビューまでに改善していきたいなと思っています。
ーー今後は、メンタルやレース勘などが課題ということですね。
はい、ここからはまた切り替えてやっていきたいと思います。
ーーデビューしてから、具体的な目標はありますか?
やるからにはグレードレースに乗りたいなと思います。まだ(目標が)漠然としているんですが、まずは土台づくりをして、一歩一歩近づけていけたらなと思います。
ーー岩原候補生は養成所のホームページで「誰かの心を動かしたい」と書かれていたのがとても印象に残っています。改めて、デビュー後の意気込みをお聞かせください。
そうですね。あの時に飲食店で見たレースはA級のパンツだったと思うので、グレードレースとかではなかったと思うんですが、それでも自分は心を打たれました。競輪のCMでもやってますけど、人生が変わったきっかけになったんで。自分もそんな走りができたらいいなと思います。
自分がかつてそうだったように、競輪は知らない人の方が多いと思います。競輪を好きな人にもより一層届けたい思いももちろんあります。でも、自分のように競輪を知らなかった人が競輪を知るきっかけになったり、競輪以外のことでも誰かの人生を変えるきっかけになるレースができたらいいなと思います。
ーーちなみに、楽しみと不安はどのくらいの割合ですか?
楽しみが9、不安1です!
ーー素晴らしいです、応援しています!
長年打ち込んだ野球はケガで断念するも、飲食店で偶然目にした中継に心惹かれて下した勇断。自転車歴が浅い中でも己とじっくり向き合い、みっちり追い込むことで、ゴールデンキャップを獲得するまでに成長を遂げた。不運に決して後向きになることなく、自らの手で未来を切り拓いていく力には、間違いなく誰かの人生を変える可能性を秘めている。まずは「土台作りから」と語る岩原健馬候補生、持ち前の好奇心と探究心で“未知数な自分の走り”を追求していく。
■卒業記念インタビュー公開スケジュール
・3月10日(月)12時00分 北岡マリア
・3月11日(火)12時00分 椎名俊介
・3月12日(水)12時00分 北津留千羽
・3月13日(木)12時00分 岩原健馬
・3月14日(金)12時00分 半田水晶
・3月15日(土)12時00分 酒井亜樹
・3月16日(日)12時00分 “銀河系軍団”127回生・128回生データ考察特集
netkeirin特派員
netkeirin Tokuhain
netkeirin特派員による本格的読み物コーナー。競輪に関わる人や出来事を取材し、競輪の世界にまつわるドラマをお届けします