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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の近況報告】GI決勝までの道は険しい ワンチャンス逃せば万事休すということ

2025/03/04 (火) 16:30 21

豊橋GI・全日本選抜を走り終えた松浦悠士(写真提供:チャリ・ロト)

 netkeirinをご覧のみなさん、松浦悠士です。斡旋停止だった1月が終わり、2月からレースに復帰できました。今回は復帰戦となった静岡記念と今年最初のGI全日本選抜競輪を振り返ります。

「やっと走れる!」待ちに待った復帰戦

 やっとレースを走れると楽しみに静岡へ入りました。静岡記念前に違反訓練があったのですが、眞杉君とか坂井洋君とか、福島の山崎歩夢君が一緒でした。その時にした練習の手応えがまあまあだったので、静岡記念は自信とまでは言えないですが、いい感じで入ることができたと思います。

 初日特選は単騎戦でした。思った以上に伸びがなく、読みも外れて後方になってしまったのはありましたが、“久々の復帰戦”としては割と考えずに体が動いてくれた印象がありました。読みが外れたというのは深谷さんラインが叩きに行くと思っていた点です。でも新山君は突っ張ってから“緩めることなく”って感じでしたね。

 僕はロング捲りを出したくて動きましたが、深谷さんに合わされてしまって結局は追い上げになってしまいました。長い距離でも行くという気持ちの部分では良かったと思いますが、実際に合わされてしまっているので、もう少し伸びや加速が欲しかったと振り返っています。

 1か月半以上も実戦から離れていたので12月とは違う感覚があり、ゴール前はかなりキツかったです。ただ、今までの感覚なら「あー、抜けないな」と感じる場面でしたが、結構キレが出ました。思い返してもかなりキツい状態でしたが、その状態でキュッと自転車が出ていたので「悪くはないのかな」と実感することができました。

落車は“良くない時のパターン”で起きたこと

久々の実戦、状態確認と試行錯誤を繰り返す(撮影:北山宏一)

 二次予選は石原颯君との連係でした。石原君は調子を落とした時期がありましたが、しっかり戻してきているのがわかる感じで、連係するのが楽しみでした。レースは波があったので後ろにいてもそんなに休めなかったと思いますが、踏み出しも良かったです。

 石原君本人は『もう少しスピードに乗せれば良かった』と言っていましたが、最後まで踏めていたし、強かったですね。苦手なパターンだったと思いますが、力を出してくれました。一方で僕は余裕が持てず、ミスをしてしまいました。後ろの山下一輝さんに迷惑をかけることになり、反省点がありました。

 そして準決勝は自力勝負になり、後ろが河端朋之さんでした。レースでは頭で考えている通りに体が動いてくれない状態になってしまいました。頭の中では流れのままに仕掛けて外を踏んで行きたいと思っているのに、体は吸い込まれるように岩本さんの内に入っていってしまいました。復帰戦で決勝に乗りたいという気持ちが強過ぎたのか、「仕掛けてダメだったら…」と頭をよぎってしまったんだと思います。「頭で考えていても体が動いてくれない」というのは良くない時の感覚です。

良い感覚、悪い感覚を自己分析している(撮影:北山宏一)

 そんな中での落車でしたが、久々に軽傷でした(苦笑)。頭を後続の選手に轢かれてしまったので、むち打ちも結構ありましたけど、次の日になると今までにないくらい軽傷に感じました。擦過傷やむち打ちは当然ありましたけど、体が動かないとか重たいとかがなくて、安心しました。

 静岡で復帰戦を走ってみて、悪いことばかりではありませんでしたが、自分の想定以上のキツさを感じました。思っていることとレース実戦の間にはかなりギャップがあったと振り返っています。練習ではもっと全然キツい負荷をかけて追い込んでいるのに、レース後はかなりのキツさ感じていました。落車は軽傷で良かったですが、考えることは多い静岡記念でした。

スタールビー賞に進めたのは大きかった

決戦の地、豊橋の舞台へ(写真提供:チャリ・ロト)

 落車してから日にちがあまりない中でもGIには悪くない状態で入れたと思います。豊橋にはこれまでとまったく同じ寸法の新車で臨みました。初日は松本貴治君が好位置を取ってくれましたが、逃げていた眞杉君が強かったですね。ペース配分もすごく上手で、カカリも良かったと思います。僕も古性君と三谷さんがヨコが厳しいので、下りられないように気をつけながら走っていました。貴治君も隙のない走りだったと思います。

 結果は3着でスタールビー賞に進むことができました。1走してみて、新車で流れ方が違って追走が難しかった面もありましたし、「そこまで良くはないのかな」という思いはありました。乗り方は悪くなく、問題はありませんでしたが。ただ結果的に今年初めてのGIで優秀戦に勝ち上がれたのは大きかったですね。

 そしてスタールビー賞は単騎戦で1番車でした。正直にいえば「ここで1番車かぁ」という思いでしたね。これで準決勝の1番車はないなって(苦笑)。レースは深谷さんのペースが予想外で、思った以上に車間が空いてしまいました。あんなにスピードを上げるとは思わなかったです。

 後ろが来ていなかったですし、「ペースで駆けているところを仕留めに行こう」と意図しての車間の空け方だったんですが、ホームでは全開。こんなに駆けるのかぁっていう感じで、思った以上に車間が空いてしまって脚が全然たまらなかったです。

南関ラインと車間が空き、脚をためるポイントが作れなかった(写真提供:チャリ・ロト)

 ペースで追っかけ過ぎて、詰める勢いを使うこともできませんでした。余裕もなかったし、深谷さんはオーバーペースだと感じでいたので、タレてくれればと思って仕掛けたんですけど…。まさに“行っただけ”になってしまいましたね。単騎なので、前に強い選手が並んでいる状態でゴール勝負に持って行っても頭までは届かないです。キツくても仕掛けていかなくてはと思っての仕掛けです。早めに抜け出すような展開に持って行かないと、ああいったレースで1着を獲るのは厳しいです。

ワンチャンスを逃すと決勝はない

松浦悠士は3番車で準決勝に挑んだ(撮影:北山宏一)

 準決勝は犬伏湧也君との連係でした。初手で後ろになるのは覚悟していましたし、レースの流れはイメージ通りでしたね。ホームで眞杉君が仕掛けたタイミングで犬伏君も行かなくてはいけないレースだったと振り返っています。あそこまで前と遠くなってしまうと、コンディション的にもキツかったと思います。当然突っ張られてキツかったと思いますが、眞杉君が行った時に、そのスピードをもらって行けていれば…。

 GIの二次予選や準決勝はワンチャンスを逃してしまうと、“もう勝利はない”です犬伏君にはそのワンチャンスをものにできるような選手になって欲しいと思います。本人も一番わかっていると思いますし、僕も自分が気がついたことを伝えていくしかないと考えています。

大舞台の要所で連係することが多い犬伏湧也とさらに力をつけていく(撮影:北山宏一)

 そして最終日。初日同様に貴治君マークでした。貴治君が内に行った時は様子を見ていたけど、「ちょっと付いていけないな」と判断しました。まだ時間も残っているし、「下がってきたら迎え入れる」か「行ったら追い上げればいいや」と走っていました。内が空いたので内を突いて、2コーナーで仕掛けられたら良い結果になっていたように思います。でも反省すべきは最後の4コーナーです。内に行くか外に行くかの判断で迷いながら内を選択しましたが、僕が内に進路を取ったゆえに事故になってしまったので…。

 それにしてもシリーズ全体を振り返ってみて冬の豊橋バンクは重かったです。もう少し踏めるようになっているとイメージしていましたが、なかなかイメージとは遠かったです。一方で収穫もあり、新車の感じが悪くありませんでした。少し昔の感じに戻したセッティングで走りましたが、"やれそうな手応え"を掴めましたし、今後が楽しみになるものでした。「ここで優勝したい」と思って戦っていたので、当然悔しさはあります。次に繋げていける要素を大事にして、前に進んでいこうと考えています。

松浦悠士の2025年はまだ序章に過ぎない(撮影:北山宏一)

残念なニュースと嬉しいニュース

 先日、「北井佑季選手ドーピング違反」というとても残念なニュースがありました。命を懸けて、人生を懸けてやっている選手を踏みにじる行為だと思いますし、許せません。毎回KEIRINグランプリでは必ずドーピング検査が行われていますが、まだ今のままの検査体制だと「公正確保」が十分だとは思いません。例えば「GIは必ず検査する」とか、もっと検査体制そのものを徹底する必要があると思います。今回の一件を機に検査体制の強化、罰則の見直しを切に願っています。

 その一方で僕にとって嬉しいニュースもありました。再来年の全日本選抜競輪が広島で開催されることが決まりました! 本当にすごく嬉しいし、まだ2年あるのでしっかり準備したいと思います。地元開催のGIを目標にできるのはすごく幸せなことです。中国地区にとって初めてのGI開催です。今まで他地区でやることばかりで、正直中国地区からすると、厳しい戦いを強いられてきました。それを考えてもホームでできるっていうのはすごく嬉しいです。なんとしてでもS級S班として迎えたいです! 精一杯やるだけですね!

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

今回も3つの読者質問に真っ向勝負!(提供:チャリ・ロト)

ーー高松のトークショーで「僕はサウナには入らない」とおっしゃっていました。競輪サウナ部とか盛り上がりを見せていますが、松浦選手がサウナに入らない理由は何ですか?

 僕はサウナに入ると疲れてしまうんですよね。サウナって自律神経を整えるものだと思うんですけど、僕は入らなくても整っているんだと思います(笑)。逆に入ることによって崩れることもあると思うんですよね。その辺も気になっちゃいます。昔は入っていたこともあるんですけど、そんなに好きじゃなかったです。水風呂が苦手というのもあると思います。競輪場によってはサウナの中にテレビがあって競輪が流れていたりするので、それを見るために少しだけ入ることはありますけど、サウナ目的で入ることは一切ありませんね。

ーー自分は98期の選手と同世代です。たくさんの選手が検定に受からなかったり、ストレート代謝する選手も多くいました。同世代としてネガティブ気味に「色々ある期だなあ」と思いながらも、松浦選手や原田選手がトップで活躍するようになり、松浦選手はGIもGPも獲りましたね。松浦選手のデビュー時期の思い出話があればお聞きしたいです。

 デビュー時期の思い出は、10月の武雄で失格したことが強く残っています。その結果、斡旋が止まってルーキーチャンピオンに出られなくなってしまったんです。それが悔しい思い出として残っていますね。デビューした頃はレースがよくわからなくて、いつもライン戦の難しさを感じていたことも覚えています。練習だって何も考えずにしていました。間違いが多かったですし、何も気がつかずにやっていたので、S級上位で戦えるまでにとても時間がかかりましたね。

ーー「〇〇だけには負けたくない!」と力が入ったり、なぜか相性が悪くて走りにくいと感じたり、特別な意識を向けてしまう選手っているものですか?車券を買う側からすると「〇〇選手には〇〇選手だけには負けて欲しくない!」とか思ったりするので聞いてみたくなりました。

 やっぱりありますよ。でも公表はできませんね(笑)。なるべく私情は持たずに走った方が良い走りができるのは間違いないと思いますけど、やっぱり感情がある人間なので…。「この人だけには負けたくないな」っていうのは全然思い浮かびます。一方で、「この人と一緒だと走りにくい」とかはないです。対戦相手として戦いたくないとかはありますけど、「それ言っても仕方ない」って感覚があります。強い選手を相手にしても、できる走りで差を埋めるしかないと思って走っているので、そこまで誰が相手だろうと気にしないです。

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2019年の競輪祭でGI初優勝を飾り、翌2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し優勝、自身2つ目のGIタイトルを獲得した。その翌年2021年には日本選手権競輪を“有言実行”で優勝。3つ目のGIタイトルを獲得し、グランドスラムへの意識を高めた。2023年はGI優勝こそなかったが、賞金順位でKEIRINグランプリの出場権利を獲得。広島カラーを象徴する3番車で挑んだ大一番は最終直線で渾身の差し切り勝ちを決め、見事グランプリ王者となった。チャンピオンとして臨んだ2024年は度重なる怪我に苛まれてS班の座を明け渡すことになったが、グランドスラムを目指す気持ちには一点の曇りなし。中国地区の大エースとしてさらなる飛躍を目論む。

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