2021/08/20 (金) 12:00 8
新田祐大(35歳・福島=90期)の名前が松戸競輪開設71周年記念(燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯)のメンバーの中にある。東京五輪からいわき平競輪でのオールスター競輪、そして今回という強行日程だ。あまりにもハードに見えるが、新田は“体力オバケ”と呼ばれるほどの肉体を誇る。
東京五輪に向けて、ナショナルチームでは五輪本番以上を想定したスケジュールでの大会もこなしてきた。そんな大会でも結果を残していたのが新田だ。体はキテいる。気になるのは精神面の方だが、オールスターからの修正、という点に集中すれば大きな崩れはないのかと思う…。
五輪の結果に対するものが残っているとしたら…、いや残っていないはずはないか…そうだよ。決して万全とはいえないだろうが、いわきオールスター、松戸記念を走る意味を深く考えている男だけに、振り切って強烈なスピードを披露してくれるだろう。
岩本俊介(37・千葉=94期)、根田空史(33・千葉=94期)、野口裕史(38歳・千葉=111期)。新田、佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)、松浦悠士(30歳・広島=98期)や中川誠一郎(42歳・熊本=85期)らを迎え撃つ地元勢も迫力がある。
ゴリラはぱっと見では鈍重そうに見えるが、実は恐るべき身体能力を有するという。その見地から“ゴリラ”と称されるのが野口だ。岩本や根田ですら「練習での強さはとんでもない」と恐れている。
と言いつつも岩本も根田も持っているパワーはぶっ飛ぶレベル。千葉の頼れるゴリラーマンたちである。戦争は絶対にしてはならないし、人類は和をもってすべてでよい。
…だが何かあったらこの3人の後ろにいたい。
滝澤正光杯である。元々は千葉記念に冠されていたものだが、千葉が250バンクに生まれ変わるということで、この松戸記念に名前を移すことになった。怪物・滝澤正光は2008年6月30日に引退し、今は競輪選手養成所の所長として、養成所の候補生の指導に当たっている。
誰もから愛される、『元祖ゴリラーマン』と言っていい。豪快過ぎる笑顔と爆発力に満ちた走り。滝澤正光杯だからこその走りを、岩本、根田、野口の3人には期待したい。これまでも頑張ってきているのは事実でも、もう一段の奮起を促したい。
根田の2008年7月のデビュー戦、千葉競輪場に取材に行っていたことははっきり覚えている。初戦はガツンと踏むもタレてしまい7着。勝ち上がりも逃した。「前半のタイムはすごい」とか「こうしたレースが2年後、3年後に生きるよ」などと偉そうに話したことも覚えている。
当時、佐渡という名字だったので、いつか上位に上がった時には「サドだから、みんなを引きずり回す“サディスティック先行”と書こう! 」と思いついたこともはっきりと。“マルキ・ド・サド”も笑ってくれるんじゃないかと。
いや、彼には物足りないか…。
ゴリラ級の肉体を手にするためには過酷なトレーニングが必要。「苦しくなければ、やった気がしない」。
しばらく前に深谷知広(31歳・静岡=96期)に「あんなトレーニングをして、ケガはしないの? 」と聞いたら、「ケガをしながら強くなるんですよ」と笑って返されたことがある。
大藪春彦の小説「野獣死すべし」に、主人公が酒への強さを手に入れるくだりがあって「吐くほどに強くなる」という一文がある。強くなるための資質は「M」。それでいて勝利への欲望に満ちていないと頂点には立てない。
岩本、根田、野口はM性に満ちるが、野獣的な勝利への欲望に薄い。優しい…。今回ばかりは変態的なほどに勝利を求める、野獣の走りを見せてほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。