閉じる
すっぴんガールズに恋しました!

【荒牧聖未】選手生活10年目! 闘志を燃やし続ける草創期支えた1期生

アプリ限定 2021/08/20 (金) 18:00 14

日々熱い戦いを繰り広げているガールズケイリンの選手たち。このコラムではガールズ選手の素顔に迫り、競輪記者歴12年の松本直記者がその魅力を紹介していきます。8月のピックアップ選手は選手生活10年目に突入した1期生。

1着を着実に積み重ね充実期を迎えている「荒牧聖未(あらまき・さとみ)選手」です。アイスホッケーに打ち込んだ思春期から競輪選手を目指すまでのストーリー、デビューからずっと変わらない考え方......などなど今月も盛り沢山でお送りいたします!

荒牧聖未(31歳=栃木県・102期)

アイスホッケーに情熱を注ぎ、五輪日本代表に選ばれた思春期

 荒牧聖未の出身地は栃木県日光市、観光とウインタースポーツが盛んな土地だ。小さい頃から体を動かすのが大好きで、アイスホッケーと水泳に熱中。小・中は日光で過ごしたが、高校は都内(東京女子学院高)へ進学。上京の理由はアイスホッケーだった。

「スイミングは幼稚園から、アイスホッケーは小学2年からやっていました。日光という土地柄もあると思うのですが、アイスホッケーが身近にある環境で育ったので、見る機会も多くハマっていきました。高校進学の時、都内に出たのはアイスホッケーのクラブチーム(SEIBUプリンセスラビッツ)に入るため。両親の協力もあり、都内で暮らしながら学校に行き放課後はクラブチームの練習に参加する...そんな3年間を過ごしました」

 アイスホッケーの才能が開花すると、高校1年でU-18の代表に、高校2年では全日本の代表に選ばれバンクーバー冬季五輪の予選にも出場を果たした。大学はクラブチームの先輩の勧めもあり日本体育大学へ進学する。

アイスホッケーをやめ「やりたいことがない」無気力状態が続く

 しかしアイスホッケーへの熱は急に冷めてしまったらしい。

 その頃の話を聞くと「特に理由はないんですけど、大学2年のころに『アイスホッケー、もういいかな』となってしまった。東京に行った理由がアイスホッケーだったし、大学も辞めて、実家へ帰りました」

 日光の実家へ帰るもやりたいことは特になく、無気力状態が続いた。バイトをするわけでもなく、だらだらとした時間を過ごしていた。そんなタイミングで『ガールズケイリン再開』のニュースを目にした。目標を失っていた荒牧の心に、希望の光が差し込んだ。荒牧自身はやる気モードになったが、両親の反応は意外なものだった。

「私、ガールズケイリンをやる!」元競輪選手の父は猛反対

「ガールズケイリン再開のニュースを見た時、すぐにやりたいと思った。目標を失ってボーッとしている時期で“そろそろ仕事を探さないと”って思っていたし、タイミングがよかったので。両親にはすぐ相談しましたが、母は大賛成だったけれど、父には大反対されました。父は競輪の厳しさを知っているから『そんなに甘くないぞ』という気持ちだったのだと思います」。

 父・友一さんは元競輪選手(39期)。自分が戦ってきた激しい競輪の世界に、かわいい娘を行かせたくなかったのだろう。荒牧はそんな父を根気強く説得して、何とか競輪挑戦の許可を得た。

仲間と支え合った養成所時代

左から、荒牧聖未、山口菜津子(引退)、松尾智佳、中川諒子、藤原亜衣里(写真:本人提供)

 荒牧の競輪学校受験指導には父の弟子・大橋徹が付いてくれた。小さい頃から父の仕事・競輪の存在は知っていたが、自転車競技は未経験。初のバンク走行は怖かったと振り返る。「初めて宇都宮競輪場で自転車に乗ったときは怖かったです。でも楽しかった。競輪学校の受験まで一生懸命練習をしました。競輪学校に合格したときは嬉しかったですね!」

 競輪学校での生活はキツかったが、仲間の存在に支えられて1年間を乗り切った。
「藤原亜衣里さん、中川諒子さん、松尾智佳さん、山口菜津子さん。この4人の存在は大きかった。つらいこと、キツいことがあったけど仲間のおかげで乗り越えられました」と述懐した。訓練では常に1番になることを意識して、日本競輪学校は4位で卒業。

一緒に練習する仲の良い102期(左から松尾智佳、荒牧聖未、中川諒子、山口菜津子(引退)、藤原亜衣里 写真:本人提供)

ガールズケイリン1期(102期)生へ

 荒牧は2021年7月の平塚でプロデビューを果たした。デビュー戦は3・2・4着。3場所目の京王閣で初日に初白星を挙げたが、当時のことはあまり覚えていないと話す。「デビュー戦のこととか、覚えていないですね。緊張をしていたのもあると思うけど、目の前のことをやることで精一杯だったんだと思います」

愛着のあるオリジナルウェアには期を表す102の数字と同期達の名前(写真:本人提供)

 5場所目の広島で初優勝を飾り、第1回・ガールズグランプリ出場へギリギリ滑り込んだ。グランプリは最終バックを3番手で通過。加瀬加奈子-小林莉子の後ろからまくりを打ったが、番手を回った小林に届かず2着に終わった。

「広島を優勝しないとグランプリに出られない状況だったので、優勝できてよかったです。グランプリは前夜祭から本番まで本当にすごかった。レース結果は2着...。今思うと焦っていたんだと思います。あのときはベストのレースをしたと思っていたんですけどね」

7位と8位でこんなに違うのか...ビックレースには届かない日々

 2年目以降もコンスタントに1着を取り、優勝を積み重ねていくがビッグレースへの出場はなかなか叶わず。2番手集団の先頭が荒牧の位置になってしまった。2017年には3月、5月のコレクション出場。7月のフェスティバル決勝3着と堅実に賞金を積み重ねたが、次点でグランプリ出場を逃す悔しい思いをした。

「『うわー』って感じでした。検車場に居場所がなかった。グランプリに出る選手は取材の人が群がっているのに、自分は何をしているんだろうって。7位と8位でこんなに違うのかと思いました」

4年ぶりのガルコレ出場、荒牧の「原動力」とは

いつも笑顔でハキハキとコメントをする姿が印象的だ

 近況は安定感が抜群。今年は4年ぶりにガールズケイリンコレクション(5月京王閣)への出場も果たし、賞金ランキングも12位に位置している。(8月19日現在)

「特別なことはしていないですよ。午前・午後とバンク、街道を使い分けて練習をする。積み重ねてきたことが少しずつ実になってきた感じ。もちろんグランプリは出たいですね! あの雰囲気は一度味わったらもう1度出たいって思います。でも、先を見るより目の前のレースをしっかり戦っていきたい」と気を引き締める。

 荒牧はどんな開催でも大きなことは言わず、「目の前のレースで力を出し切る」と話す。言葉の真意を聞いてみるとシンプルな答えが返ってきた。

「1着をたくさん取りたいんですよ。これはデビューのころから変わらない。自分も嬉しいし、車券を買ってくれている人にも貢献したい。この考え方は変わらないですね」

仲の良い2期生と(杉沢毛伊子、明珍裕子(引退)、奈良岡彩子)

300 勝まであと少し...! 目標は2回目のグランプリ出場

 ここまで積み重ねた1着回数は290回。区切りの300勝まであと10勝と迫っている。そのことについて尋ねると「言われるまで全然気が付かなかった。300勝、早く決めたいですね!」と意気込みを語った。

 300勝達成は通過点。その先に見据えるのは2回目のグランプリ出場しかない。
「11月のグランプリトライアルの出場が決まったら気合いが入りますね! 厳しいレースだけど、優勝すればグランプリに乗れるチャンスがある大会。昨年は決勝2着だったので、今年は1着が取れるように力を出し切りたいです!」

 父の反対を説得して、人生を懸けて勝負すると決めたガールズケイリン。常にトップクラスで戦うために自己を高めることを怠らない。選手生活10年目、夢の大舞台グランプリ2回目の出場に向けて、彼女は今もなお闘志を燃やし続けている。

102期の仲良し(左から荒牧聖未、藤原亜衣里、松尾智佳、山口菜津子(引退)、中川諒子 写真:本人提供)

つづきはnetkeirin公式アプリ(無料)でお読みいただけます。

  • iOS版 Appstore バーコード
  • Android版 googleplay バーコード

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

すっぴんガールズに恋しました!

松本直

千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。

閉じる

松本直コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票