あの時の山崎賢人

　佐世保競輪場で大阪・関西万博協賛「開設74周年記念　九十九島賞争奪戦(GIII)」が12月19〜22日に開催される。山崎賢人(32歳・長崎＝111期)は10月デンマークで開催された世界選手権の男子ケイリンで37年ぶりの金メダルを獲得し、地元に凱旋となる。

　その金メダルの美しさは果てしないが、山崎にとってはパリ五輪出場がかなわなかった影が差す。出場選手が発表されてしばらくしてからのことだ。少し会える機会があった。「気持ちの整理はできています。自分が結果を出せなかったので」。ネイションズカップを中心に、他の日本選手との成績の差は明らか。代表漏れは、仕方ない。

　とはいえ、長い年月をかけて勝負してきた。「大丈夫です」と話す表情はさすがに覇気がなく、目はうつろだった。その時は国内の競輪に参加する予定もあったので、まずそっちで頑張ってほしい、と祈ったものだ。久留米記念(中野カップレース)を優勝した時にナショナルチームのみんなが喜んでいたと聞いて、グサっときた。

　正直、世界選手権を最後にナショナルチームを引退すると思っていた。望外、といっては失礼だろうが、この金メダル獲得で実力を知らしめた。先々については、目の前の戦いを応援することに集中したい。

地元記念を勝てるかどうか

　当コラムはグレードレースの前検日に公開する形になっている。時折書いていることで、地元記念を勝つことがGI優勝への気運を高めることになる、というものがある。今回の山崎にもそれが当てはまる。

　荒井崇博(47歳・長崎＝82期)、井上昌己(45歳・長崎＝86期)という偉人がいる中だが、今回は山崎が取れるかどうか。北津留翼(39歳・福岡＝90期)や嘉永泰斗(26歳・熊本＝113期)、伊藤颯馬(25歳・沖縄＝115期)が、強敵相手に九州の意志を示す。

　そう、相手も強力。地元の広島記念(in玉野)を勝った松浦悠士(34歳・広島＝98期)や、ケガ直後ながらも松山記念(金亀杯争覇戦)で大奮闘していた深谷知広(34歳・静岡＝96期)、復帰戦になる佐藤慎太郎(48歳・福島＝78期)とS班がいて、坂井洋(30歳・栃木＝115期)、浅井康太(40歳・三重＝90期)、窓場千加頼(33歳・京都＝100期)と実力者の名前がズラリ。

　菅田壱道(38歳・宮城＝91期)や佐々木悠葵(29歳・群馬＝115期)もGIでの活躍が当たり前。12月だが、佐世保の海は沸騰するだろう。

松浦の底力

　松浦が広島記念(ひろしまピースカップ)をラインの力で制したわけだが、その余裕ぶりはすごかった。競輪祭から、完全に戻っている。競輪祭の1走目の時に、取鳥雄吾(30歳・岡山=107期)の後ろで、まくる取鳥の後ろながら、その外をまくってくる窓場をけん制し、空中戦を展開した。

　レース全体を見通しながら、動けている時が松浦のいい時。本人が話しているように、あとは自力で動いた時にどうか、を今回楽しみにしたい。こればかりは番組によるところも大きくはなるが、そのシーン、松浦が自力ではじけるところを見たい。

レインボーカップA級ファイナル

　最終日の9Rで行われる「レインボーカップA級ファイナル」だが、小原丈一郎(26歳・青森＝115期)、橋本智昭(42歳・宮城＝99期)、梁島邦友(25歳・茨城＝175期)の3人が来期のS級を決めていない。

　北の並びがまず気になるところで、また九州3人も地元地区でどんな戦いを見せるのか。

　興味深いのは棚瀬義大(25歳・岐阜＝123期)と小嶋敬二(55歳・石川＝74期)の中部勢。にぎやかなことが好きな小嶋だけに、棚瀬の番手で、ド迫力の優勝、そして盛り上がる勝利者インタビューが待っているかもしれない。

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