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ほろ酔い放談 -競輪の因数分解-

【競輪偏差値70の男】選手人生初体験♡ GI補充の知らせは突然に「1泊2日で30トン近くの仕事がある、と」♯43

2024/12/06 (金) 18:00 39

11月は競輪人生初めての体験も!? 何も無さそうで結構いろいろあった激動の1か月を競輪選手・中川誠一郎が責任持って振り返ります。今月は最近サボり気味だった質問コーナーとも徹底的に向き合いながら、競輪の魅力を紐解きます。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】

ーー11月は防府競輪G3、武雄競輪ミッドナイトFIそして競輪祭を補充で走りました。まずは防府から振り返ってください。

 後輩の(宮崎)大空、(松本)憲斗と初めて連係しました。地元の頼れる介護人がまたまた増えましたね。

ーー2人と連係してどのような感想を持ちましたか。

 憲斗はちゃんとした王道の自力って感じでしたが、大空と連係する日が来るとは思わなかった。しかも前を任せる日が来るとは、なかなか感慨深いものがありました。

ーー宮崎選手とは2日目と最終日に連係しました。

 2日目はハグれましたが、最終日はなんとか3着を取らせてもらいました。一瞬、内を行きかけたけど外を踏んでくれたので追走できた。レース後に「誠一郎さんがハグれないように外へ行きました」って、まさか大空に気を使われるとは(笑)。

ーーそんな印象深いのですね。中川選手にとって宮崎選手はどのような評価なのでしょう。

 しくじりの王様ですよ。以前はやんちゃで飲み屋とかで騒いだり暴れたりして、そのつど松川(高大)に締められたりしていたけど、最近はそんな話を聞かないししっかりしてきた。

ーー強烈なイメージですね。

 いつもバンクにいますもんね。ちゃんと練習しているんでしょう。そうでなければA級で9連勝なんてできないですよ。ああみえて、選手会の道場の掃除を進んでやったりといいところがあるんです。

ーー元々、ポテンシャルは高かったのですね。

 飲んでゲロ吐いたりとかってみんなやるじゃないですか(笑)。調子に乗る時期って誰にでもあるので。オレも森内(章之)さんや合志(正臣)さんからこっぴどく怒られてきましたから。

オトナになった宮崎大空と

ーーそれだけに成長を感じた、と。

 昔ならオレも脚があったしコイツに任すのは…って思ったでしょうが、今は改心して頑張っているし、頼りになる後輩です。

ーー最終日は宮崎選手の気持ちに応えて番手から出ましたが、山口拳矢選手のまくりに屈して3着でした。

 オレが自力で飛び出してきたものだから拳矢がビックリしていました。「ん? 誰だ、5番車?」って思いながらまくっていたみたいで、レース後に「あんなに脚が残っていたんですね」って言われました。

ーー成績は置いといて、ほかに何か思い出があれば。

 今回は東口(善朋)とけっこう話しました。「会いたかったよ〜」って来たから前回(弥彦GI寬仁親王牌)も会ったじゃんって返したら「オレは毎回、会いたいんだよ。悪いか」って居直られました。競輪祭へ行ったらまたいたし(笑)。

盟友、松川高大と

ーー武雄はミッドナイトFIでした。

 開催している21時から23時ぐらいって普段は飲み歩いているから、オレ的には生活スタイルが変わらなかったし時間帯は合っていました。

ーーリラックスして走れたということですね。

 松ちゃん(松川高大)と久々に連係もできたし、義理の弟の(吉成)晃一もいましたから。晃一とは久々の義兄弟あっせんでした。アイツは今年だけで110本以上を走っているみたいで疲れていましたが、それだけの本数をこなしても稼ぎはワタクシの方が上です。

筆者と同じく最終日に補充で入った坂本健太郎と

ーー競輪祭は突如として最終日に補充で参戦しました。

 補充を受けたのは選手になって初めてでした。荒井(崇博)さんが決勝に乗ったし、せっかくなら応援に行こうかなって。

ーーまさか、補充を走るとは思いませんでした。

 オレもですよ。補充待機の連絡があってオレは5番手だったんです。さすがにそこまで声はかからんと思って準決の10Rまでみて晩酌を始めたら、そのあとに連絡がきました。

ーー準決12Rは古性優作選手が失格し、郡司浩平選手と深谷知広選手が落車棄権と波乱の内容でした。

 完全に油断していて、最後の方はまったくレースをみていなかったんです。そうしたら小倉の番組から電話が鳴りました。

ーー晩酌中に。

 ちょうどビールから日本酒に切り替えて… とか気分よく盛り上がりかけていたんですよ。そこから慌てて荷造りです。飲んでいるからクルマでは行けないし新幹線で向かいました。

ーー小倉には当日、入れるものなのですか。

 22時前に家を出て、23時30分には競輪場に着きました。そうしたら、いきなりいたのが荒井さん(笑)。

競輪祭決勝を走った荒井崇博(撮影:北山宏一)

ーー荒井選手は決勝に乗りました。

 準決の晩ですから、めっちゃ興奮しているんですよ(笑)。「おお、来たか」って迎えてくれたのですが、なぜか宿舎の部屋が荒井さんと同室だったんです。

ーー部屋割りは、通常なら同県の選手と一緒になるはずですよね。

 (松岡)貴久が落車で帰ったからそこへ入るのが自然だけど、荒井さんが「落車(した選手)のあとは(縁起的に)きついだろ」と言ってくれたので好意に甘えることにしました。

ーー荒井選手も、良き話し相手ができてリラックスできたのでは。

 (井上)昌己が分宿だったから、荒井さんと(山崎)賢人と2人のところに入ったかたちですね。夜な夜な、ああだこうだと雑談していました。

ーー周りの選手の反応はどんなものなのですか。

 これが、普段あまり話をしない他地区の選手とかがフランクに声を掛けてくれるんです。

ーーどういうことですか。

 たぶん、補充で来ている時点で敵とみなしていないから(笑)。みんな笑顔で迎えてくれるんですよ。それに競輪祭ともなると1週間近く同じメンバーで缶詰でしょ。だから、新たなメンバーが入ってくると新鮮味があるのでしょう。

ーーレースは健闘むなしく8着でした。

 それでも賞金が29トンとかあったんです。GIの破壊力はすごいなって。そんなので喜ぶようになってしまっている自分がいました。来年は出場できるように精進します。

伊藤旭、緒方将樹、東矢圭吾と

ーー競輪祭のあとはどのような感じで過ごしていたのですか。

 終わってすぐに熊本で九州の地区プロがあったんです。スプリントに出場して一応、優勝してきました。

ーー去年は橋本宇宙選手に負けて予選敗退でしたが、今年は優勝ですか。

 優勝は5年ぶりだったと聞きました。去年は(東矢)圭吾が優勝しましたが、残りの3年はぜんぶ荒井さん(笑)。

ーー今年の決勝は誰と対戦したのでしょうか。

 それこそ、圭吾ですよ。去年のチャンピオンに昔の名前が挑戦する構図です。

ーーそこで優勝したのですから、中川選手もまだまだ戦えますね。

 いや、今回はハンデ戦みたいなもので。圭吾はスプリント準決のあとにチームスプリントにも出て400バンクを3走していました。その間、オレは決勝に備えて休息をとっていたから余裕があったんです。

ーーそんなことが…。若手を相手に巧妙ですね。

 いやいや、別にオレが根回しをして圭吾にチースプを走らせたとかじゃないですよ。でも、決勝は思い切り圭吾の心を折りにいってやりました。

ーーそこまでして後輩に勝ちたかったと。

 おかげさまで優勝できたし、表彰式は副賞の米俵を担いでやろうと思いましたが、撤収されていたので副賞の焼酎で記念撮影しました。 

敬愛する荒井崇博と

ーー打ち上げなど食事会は盛り上がったのではないですか。

 競輪祭の打ち上げをしていなかったので、地区プロの集合日の前日に熊本でしました。

ーーどのようなメンバーが。

 (中本)匠栄を除いた熊本勢と(伊藤)颯馬と合志(正臣)さん、そして荒井さん。

ーーなかなかの豪華メンバーです。

 みんな大騒ぎで荒井さんも気分よく飲まれていましたよ。シャンパンを入れたり、トイレットペーパーを巻いてTMレボリューションを歌ったり(笑)。

ーーそれは衝撃です。写真は無いのですか。

 ありますけど、門外不出でしょう。そんな写真が表に流出したら荒井さんの値打ちが下がる。皆さん想像にとどめて、その姿を思い起こしながらお酒を飲まれるのがいいと思います。

伊藤旭の結婚式に出席(写真提供:松岡辰泰)

ーー先月のコラムで伊藤旭選手の結婚式がある、とのお話がありましたがいかがでしたか。

 (松本)秀之介のときのように、幸せのおすそ分けを頂いてきました。また、長老テーブルで(西島)貢司さん、時松(正)さん、菊陽グループの米丸(俊成)さん、タツ兄(田川辰二)ってラインナップでした。

ーー門出の場ですし、いい雰囲気だったでしょうね。

 そうそう。やおら脱ぎだすやつとか、コスプレを着て騒ぐやつ、ゲロ吐くやつとか様々で新婦側が若干、引き気味でした(笑)。まさに競輪選手の結婚式あるあるで、暴走する若手が多かったですね。

ーーまた、ゲロですか。

 余興が盛り上がっていましたよ。熊本の若手たちが「さくらんぼ」の替え歌をパンツ一丁で歌いながら変なダンスを踊っていました。たしか、小山峻汰が先頭だったと思います。

ーー勢いがありますね。

 そうしたら、熊本勢の暴走に触発された青柳(靖起)が、ウワっとなっていきなり脱ぎだして、座っていたイスを持ってステージに乱入したんです。

ーー青柳選手、強烈ですね。以前、荒井選手の500勝パーティでも暴れていませんでしたか。

 もう、式場が騒然(笑)。踊っていた熊本勢も何が起きたんだかわからないって表情で青柳を見ていて。本人は平然とパンツ一丁で椅子に上がって気持ちよく踊って、お立ち台みたいになっていました。

ーー伊藤選手は果たして、どんな思いだったのでしょうか。

 秀之介のときもそうだったけど、結婚式っていいですよね。いい空間にいられたというか旭と奥さんも本当に幸せそうで、いい瞬間に立ち会えてよかったです。

ーー青柳選手も存在感を残しました。

 もう夜は青柳にお任せですね。この間のミッドでも先行してもらったし、スプリントの予選では思い切り倒してやったし最近は世話になりっぱなし。結局、西九州勢の話題で締める、っていうこのコラムの王道パターンで終わりましょう。

(撮影:北山宏一)

ーー質問が届いておりますのでお答えください。

Q、妹の諒子さんに第二子が産まれましたが、誠一郎伯父さんの事を怖がっていませんか?(岐阜県/60代以上/男性)

 2人目は男の子なのですが、愛称がオー君っていうんです。だから、尊敬の念を込めて「王会長」と呼ばせてもらっています。赤子に向かって「王会長、王会長」って問いかけるもんだから、当然あっちは泣きますよね。相変わらず怖がられています。

Q、毎回楽しく読ませていただいています(笑)今度、某アイドルのドームLIVEに行きます! 誰か推しはいますか?(荒〇さん以外でw) (熊本県/30代/女性)

 これはもう、我が愛する娘ですよ。飲み屋のお姉さんとかじゃなく、本当の娘ですよ(笑)。相変わらず、課金無制限。好きなものをどうぞって感じです。

Q、北津留翼選手のおもしろエピソードとかあれば教えてください!(大阪府/20代/男性)

 翼の話でパッと浮かぶのはやっぱりマクドナルド好きってところで。マックの全メニューを一度にぜんぶ食ったとか、店舗によってハンバーガーの味の違いがわかるとか、なかなか常人には理解できない深さがあります。オレらでいうと、ビールの銘柄がわかるってぐらいの感覚なんでしょうね。

Q、いつも楽しく拝読しています! 辛い時やしんどい時、どのようにして乗り越えていますか? またおすすめの気分転換方法や気の持ち方などがあれば教えてください!このコラムが月イチの楽しみです。今後も楽しみにしています! (誠一郎さんのグッズ欲しいのですがどこで手に入れることが出来ますか?)(愛媛県/20代/男性)

 これはもう逃げますね。仕事を休んで整えるって大事だと思うんです。若い頃、競輪がストレスで帯状疱疹になって、そこから甲状腺の機能が落ちてホルモンバランスを崩して倒れたことがありました。そんなときはアニメやゲームの世界に逃げて、何もかも忘れましたから。

Q、GIに補充で走るときはどういう心境で臨みますか? 勝ち上がりが懸かっていないとはいえ、FI開催より緊張感はありますか? (神奈川県/20代/男性)

 知らない電話番号からかかってきて、“携帯電話と身分証明書は預かるけど1泊2日で30トン近くの仕事がある”とか紹介を受けることってめったに無いから新鮮でした。小旅行気分で行きましたから。でもレースになればちゃんと入ったし、ピリッとしましたよ。

Q、このコラムでもおなじみの荒井さんが競輪祭で今年2回目のビッグレース優出という活躍ぶりでしたが、荒井さんが活躍すると中川さんも刺激を受けるものですか? (福岡県/40代/男性)

 これはもうすごいとしか言えません。自分より年上の人がまだGIの上位で結果を挙げているのだから尊敬でしかないですよ。それでも、いじってしまう? 愛情の裏返しに決まっているじゃないですか。

Q、競輪祭決勝後の荒井さんのインタビューが話題になっていましたが、なぜ荒井さんはあんなにインタビューが嫌いなのでしょうか? (埼玉県/30代/男性)

 おっしゃる通り、たしかに荒井さんはインタビュー嫌いですよ。ただ、援護をするわけじゃないけど、レースのあとにすぐ敗因を振り返るのって、負けた人はみんなイヤだと思いますよ。勝負の世界だし、ましてやGIの決勝ですから。仮にもし優勝していたら、逆に誰かが止めるまでしゃべり続けているでしょう。それもトイレットペーパーを巻きながら(笑)。

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中川誠一郎

Seiichiro Nakagawa

中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。

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