アプリ限定 2024/12/13 (金) 18:00 32
競輪ファンにとって年末の風物詩である「KEIRINグランプリ」。今年は2021年以来の静岡競輪場を舞台に12月30日に行われる。そこでnetkeirin編集部は、スポーツ紙の敏腕記者3名を集め、恒例の座談会を開催。後編は、グランプリのレース予想を大激論(文中敬称略)。(取材日:12月6日)
【KEIRINグランプリ2024出場選手】
①郡司浩平(34歳・神奈川=99期)
②平原康多(42歳・埼玉=87期)
③北井佑季(34歳・神奈川=119期)
④古性優作(33歳・大阪=100期)
⑤脇本雄太(35歳・福井=94期)
⑥眞杉匠(25歳・栃木=113期)
⑦清水裕友(30歳・山口=105期)
⑧新山響平(31歳・青森=107期)
⑨岩本俊介(40歳・千葉=94期)
※数字は車番ではありません
デイリースポーツ 松本直記者(以下松本) 後編ではグランプリの予想をしていきましょう。
日刊スポーツ 松井律記者(以下松井) 車番については、今回の静岡は選考順位というのがあって。GIを2回獲っている古性優作、次はGIを1回優勝した選手たちの賞金順で決まる。だから脇本雄太、平原康多、郡司浩平...みたいな選考順位なんです。で、その順番に希望の車番が聞かれるんですよ。だから、古性が1番車を希望したら1番車。
東京スポーツ 前田睦生記者(以下前田) 選考順位順の車番になりそうですね。
松本 今の競輪は、やっぱり車番が大事ですからね。
松井 だから、古性の1番車はほぼ確実かなって思う。単騎勢は外枠になるよね。
松本 そうですね。清水裕友と新山響平は賞金7位と8位なので。
前田 並びに関しては、サプライズはなさそうですね。
松井 ないでしょ。清水が新山に付くこともないだろうし。岩本俊介は神奈川の3番手を回るだろうし。
松本 今年1年間の戦いぶりを見たら、岩本が別でやるというのはないでしょうね。
前田 岩本は今年の序盤戦、伊東のGIIIとかは、南関東の力で勝ちましたしね。
松本 南関地区のラインの力で賞金を積み重ねたっていう今年の戦いぶりがあるから、南関別線はないですよね。 近畿の脇本と古性も普通に脇本が前で戦うのかな。
前田 この前ちょこっと古性に、ワッキーとの前後的なことを聞いたけど、やっぱり基本はワッキーが前らしい。古性は脇本のすごさを知り抜いているから、ここで「俺が前」とか言わない関係なんだと思います。
松本 あの二人はもう出来上がってるもんね。逆の並びになったのは数回しかないです。
松井 どっちが前でも総合力は割と変わらないよね。脇本が前だったらもちろん力があるし、古性が前だったらしっかり位置は取れるし。ただ、ワッキーが番手になると持ち味が出なくなるからね。
松本 さっそくですが、前田君の本命は清水裕友。
前田 北井が先行したいのは明らかだし。眞杉が中団で何もしなかったら、ほぼ郡司の優勝じゃないですか。だけどそれは眞杉が性格的にさせない。で、眞杉のワンアクションがあることによってワッキーもそこに連動して動きが生まれると...。
松本 ほうほう。
前田 そこで新山の大捲り...と思いかけたのですが。とにかく私は、競輪祭の最終日に見た清水の顔とセリフが忘れられなくて。「俺、このまま終わるかもしれません」ぐらいのことを言ってて。でも、そんなはずねえよな、と。
松本 終わるタマじゃないよね。
前田 展開を考えると新山なんだけど。
松井 ボヤいた清水は強い。
前田 清水裕友という人間の在り方を考えると、展開が向く新山を清水の人生が上回るという。こんな予想でいいですか!?
松井 新山がワンアクション起こしたところに清水が付いていったっていいしね。清水とか北井佑季が勝つ条件は新山の単騎ガマシだと思うよ。そこに清水が付いていく、もしくは1回先行態勢に入った北井がすっぽりはまる。それならこの2人の優勝はあるんじゃないかな。
松本 北井を眞杉がすんなり逃がすことはしないから。
松井 そこに新山のアクションが起きるなり、清水の先捲りで、はい一撃と。
松本 単騎の清水ってすごく魅力ある選手だと思うんですよね。
松井 新山も単騎はすごかったじゃん。
松本 じゃあ僕の予想も言っていいですか。僕は新山の一発は全然あると思ってるんですよ。
前田 うんうん。
松本 突っ張り先行だったり引いてもすぐ巻き返したり、ラインができてこそ新山なんだけど、もともとトップスピードが高い選手。だから今回に関しては、単騎戦だから捲りでいいんですよ。
前田 そうですね。
松本 位置取りをしないから9番手になっちゃう可能性もあるんだけど、脇本よりは前にいるんじゃないのかな。1年間、ラインのために貢献してきた新山がフリーに走れます。
前田 今年は北日本が一人になってしまったし。
松本 これまでのグランプリは、4車の先頭だったり、新山はラインのために戦ってきました。今回、一人で走れることがプラスに作用するんじゃないかな。展開的にも、もし古性が1番車になったらワッキーが好きな位置から始められるけど、ワッキーはやっぱり引けるところまで引くと思うんですよね。で、そこからの勝負になると、北井がまず先行態勢に入る。眞杉は何もしない選手じゃないので、叩くなり郡司のところに降りるなり、何かアクション起こすはず。今年の眞杉って、単調なレースをしてないじゃないですか。
松井 後半になると突っ張り先行もちょいちょいやったしね。
松本 4月の川崎記念で意識し合った北井と眞杉は、グランプリの大舞台でもう1回マッチアップするんだろうし。グランプリで先行争いってなかなかないですけど、二人がもつれ合うような展開になれば、じゃあ誰が捲る? と。清水と新山の比較だと、モガける距離が長いのは新山。
松井 そうだね。
松本 だから新山が一発決めるシチュエーションは揃ってると思うんです。実際、11月の四日市記念から競輪祭にかけての新山を見て、流れは来てるな、と。競輪ファンも「新山頑張れ」という感じになっていて、それも追い風になってるんじゃないのかな。
北井の先行、ゴチャゴチャさせる眞杉がいる、清水と比べてモガける距離が長い。ワッキーは自分のレースをするってなると、新山がいい位置から捲れば押し切れるんじゃないかな。新山の師匠は坂本勉さんなんですけど、坂本さんが初めてオールスター競輪を制したのは静岡なんです。107期の新山も、卒業記念レースを静岡で走っている。だから、静岡に縁もあるかなと。なので、今年はもうメンバーが決まった時点で、僕は新山から買いたいと思っていました。
松井 なるほど。
松本 おそらく最終ホームでの位置は、6、7番手...悪いと9番手という展開にもなりうるけど、とにかく一番避けて欲しいのは内に詰まること。内で包まれて終わることだけはやめて欲しいので、とにかく外を踏んでもらいたい。
松井 なかなか優勝できなかった新山だけど、ここは本当に狙っていいレースだからね。
松本 ラインのために1年間頑張ってきて、四日市記念は、S班になって初めての優勝だったわけでしょ。新山には、来年の競輪界の顔になってほしいな。最近の競輪界の突っ張り先行ブームなんかも作ったわけだし、彼に期待したい部分は大きいです。
前田 松井さんはどうでしょう?
松井 僕の本命はやっぱり王道の古性だよね。ダブルグランドスラムっていう、普通では出てこないような壮大な夢を持っている。だけど実際、達成しちゃいそうじゃない。
前田 「古性ならやるかもね」って思わせる存在ですね。
松井 今回はワッキーが最後にグランプリ出場を決めて、頼もしい味方ができた。ただ展開は、自分も二人と同じように考えている。北井が前にいて逃げる。で、残りの自力選手の中では一番位置取りのいい眞杉が前中団。そこに単騎勢が続いて、ワッキーが後方。新山はもしかしたら9番手もありうる。眞杉-平原が前中団、真ん中が清水、脇本-古性、最後尾に新山みたいな感じかなと思ってるんだよね。
前田 松井さんはこの間、改修後の静岡競輪場に取材に行きましたよね。
松井 ミッドナイトの取材に行ったんだけど、風がすごくて、ホームの向かい風が強い。スタンドがなくなった分、風が吹き抜けるというか。バンクも軽くない。ホームの向かい風って先行有利なんだけど、ホームから2回その向かい風を食らったら、絶対止まっちゃう。ということは、1コーナーガマシだったり、最後みんながバタバタになるところを、うまく風のないコースを突き抜けられる人が強いだろうと。じゃあ、北井が逃げて、郡司と岩本が続く。その外に眞杉と平原が襲いかかる。みんな外踏むタイプなんだよね。脇本も当然その外を行くじゃない。で最後に、外から中を切り込んで突き抜けるっていう、静岡で一番伸びるだろうっていうコースがあるんだけど、そこを突けるのは古性しかいないんじゃないかな。
松本 なるほど。今年のグランプリは追い込み選手はいないです。
松井 そうなんだよね。じゃあその内〜中、中〜内っていういいコースを突けるのは...。平原はワンチャンあるかもしれない。そのコースが見えるのは、平原か古性だろうと。だけど平原は落車3連発があって、グランプリまでにどこまで戻せるか。眞杉との脚力差も感じているだろうし「自分が勝ってどうにかいいところ突っ込もう」ではなくて、まずは眞杉の後ろにしっかり付いていくことを第一目標にしてると思うんだよね。
前田 そうなると、やっぱり余裕があってコースを突けるのは古性。
松井 僕はやっぱり古性が一番来る確率が高いのかなと。
松本 もちろん、そのコースを見つけて突っ込んで来るのも古性の勝ち方だけど、脇本が力の違いで捲り切っちゃったときの差しっていうのもありますよね。
松井 あとは北井が色気を出したときに、ワッキーのジャンガマシだってあるだろうし、やっぱ単騎勢に邪魔されて8、9番手になっちゃうぐらいだったら、ワッキーは緩んでたら行っちゃうと思うんだよ。そうなればなったで、古性には絶好の展開だしね。
松本 脇本がカマすなり捲り切って古性が差すっていうのももちろんあるし、ワッキー不発でも対応できるところが古性の強みですよね。2021年、静岡でのグランプリは古性が勝ちましたからね。
松井 あのときは単騎だったね。
前田 村上義弘さんの2012年京王閣グランプリのときの4番車を選んで、同じようなレースで勝つという誰にも真似できない芸当でした。
松本 今度は脇本との連係で、グランプリも含めたダブルグランドスラムへの前進に期待したいですね。
松井 グランプリを獲ると、古性の今年の獲得賞金は3億8000万円になるのかな。古性がまた年間最高賞金の記録を更新できるんだよね。
前田 すごいですよね。古性はお金にはあまり興味はないんでしょうけど。
松井 4億超えは実現できなかったけど。
松本 もし競輪祭の決勝に乗って、3着とかだったら...。
松井 あったかもしれないよね。
松本 4億円レーサーってすごいですよね。
松井 以前は2億ですごかったけど。
前田 今の古性なら全然あるなってことですよね。あとは松本さんくらいかな…。
松本 やめなさい(笑)!
松井 本当に今、油のり切ってるよね。GIで話を聞いても深いし、他の選手と違うところを見ている感じがはっきりわかる。考え方とかやっていることが、想像の上を行っている。
松本 はい。
松井 平原がコラムで古性のことを「タテ、ヨコ、ナナメ全てを制圧した」って言ってたけど、その通りだよね。
松本 レースについてもう少し話深掘りしましょうか。古性が内枠を引いて、やっぱり先行は北井になりますかね。グランプリは通常より1周多いけど、動き出しは残り2周半〜2周のあたりになると思うけど...。
松井 車番から見ても、近畿が前を取れる。平原が3番車(の想定)とすると、取れれば眞杉-平原が前中団。
前田 はい。
松本 その後ろに、北井-郡司-岩本。単騎勢が8番手と9番手。
前田 赤板から打鐘のところでは、北井はとにかく脇本を後方に置きたいというレースをしてくると思うんですよね。
松井 脇本が腹くくる前に、前に出たいよね。
松本 眞杉はどうしますかね。北井が色気を出したら、眞杉が叩くのはあると思いますか。
松井 うん。そこでさらに清水や新山が飛んできてくれれば、眞杉のチャンスだし。
松本 打鐘からホームにかけて腹をくくる、一旦先行辞さずっていうレースができたら、いい位置に入れそうですよね。北井待ちじゃなくて、眞杉は自分で展開を作れるじゃないですか。
松井 去年、眞杉は2つのタイトルを獲って、堂々とグランプリに初出場した。でも今年はGIIのみ。やっとグランプリに滑り込んだ感じ。胸を張ってというよりは、2年連続守ったけれども、今年の方が割と思い切ったレースをしそうな気がする。「緩んだら行っちゃうよ」っていう。
松本 前出て、あとはもう先行か飛びつきか、みたいな。北井は3人ラインだから、打鐘からホームの間は緩められないと思うんですよね。眞杉に叩かれちゃうし。そうなると、北井と眞杉は絡んじゃう、先行争いもあるんじゃないかな。
前田 あると思います。眞杉はすぐ意地になるから。
松本 普通のレース展開を考えると、そう思っちゃうんですよね。ワッキーはどうしても一撃に賭けたい。だから打鐘からホームにかけて、ポイントがあるとするならば、北井と眞杉の動きかなって思います。
松井 バック線まで郡司が絡まれずに北井の番手で引きつけられたら郡司にチャンスなんだろうね。
松本 だから眞杉は大事に行った方がいい。自分も動くんだけど、その後、北井のライン3人を出しちゃって。やっぱりグランプリだから、ヨコの動きよりもタテ。脚をちょっとでも温存したいと思ってヨコの動きをしなかったときには、郡司がサラ脚で北井の番手を回ってくるわけですよ。
松井 そうだね。郡司の番手捲りは、眞杉は越えられてないんだよね。郡司がバンマク打って、古性も眞杉も越えられなかったレースがあったじゃない。郡司のバンマクを越えられるのはワッキー。
前田 ワッキーは本当にケタ違い。
松本 で、眞杉なり清水なり新山なりがアクションを起こして南関ラインに並行していくと、 後ろで脚をためている脇本にとっては「しめしめ」なんですよね。
松井 ただ、ワッキーにとって嫌なのは、清水や眞杉が先捲りで自分の進路を塞いでくる、もしくは張りながら出てくること。綺麗に捲れないで大外を回されてバック踏まされたら、もうワッキーはないパターンになっちゃうんだよね。諸刃の剣だからね、ワッキーは。
松本 あと、ひとつ南関ラインに落とし穴があるとすれば、岩本俊介の3番手なんですよね。狙われる位置。みんな北井の先行ってわかっているじゃないですか。郡司のところにはちょっと行きづらいな、重たいなって思ったら、じゃあ岩本をさばいておくか、と。
前田 眞杉や清水にしたら、いちばん取りやすい位置ではあるかもしれない。
松本 決め打ちというよりは、合ったところで勝負なんだろうけど、でも、郡司とヨコやる、 岩本とヨコやるってなったら、やっぱり岩本のところが狙われやすい位置になっちゃうのかな。岩本はヨコでなくタテ脚で売ってる選手だから。
前田 そこが南関ラインのウイークポイントかもしれませんね。
松本 番手捲りしても後ろに岩本がいないっていう展開も十分ありますよね。郡司も岩本が後ろならいいんだけど、清水や眞杉がいたりしたら、番手捲りしてもちょっとキツいですよね。
松井 後ろがラインじゃなければ、郡司が張りながら出ていったら容赦なくしゃくられるからね。
前田 では3人の共通見解として、北井が主導権を取る、と。
松井 で、眞杉が前々にいるだろうと。そこまでは一緒だね。ただ北井は、郡司より年上じゃない。もちろんまだ挑戦者の気持ちはあるにせよ、「そう何度もチャンスはないぞ」とも思ってるんじゃないかな。だから、ただ単に引っ張るだけのレースになるのかなっていう。北井だって色気は絶対あるはず。GIで勝ちたいって言うようになったしね。
松本 考えようによっては先行一車みたいな感じじゃないですか。自分が引っ張って逃げてもいいし、緩んで眞杉がカマして来てくれれば。3番手はいないし、北井だってヨコはできるから、眞杉が来たときに、平原をドカして番手取りに行くレースだってできますもんね。
松井 そうだね。北井はその奥の手は持ってはいるよね。
松本 北井が腹くくってね、打鐘から結構強めに踏んでいくとか。ちょっと引っ張り気味にレースをするとか。
前田 キーマンですね。
松本 レースを作る人でもありますしね。
松井 そこでもつれたら、もう来るぞ、ワッキーが。
松本 ワッキーはもつれ待ちかなって感じはしますけど、眞杉なり清水なりの。
松井 たださ、最近のワッキーって、車番がいいからって前取るとは限らないじゃん。中団だったり後ろだったりっていうレースもするから、そのパターンをまたちょっと考えておかないといけないかもね。
前田 誰も出なければ前、ですが基本的にはどこでもいい。
松本 そうすると、近畿が1、2番車じゃなかったとしても、3番車には平原がいるわけじゃないですか。近畿の次に前を取れる可能性が高いのは関東ですよね。それに、新山はいくら突っぱり先行が代名詞だとしても、単騎での突っ張りはないと思うんですよね。関東が前受けしたときに、ちょっと何かアクションするのかなっていうのと、意外と南関勢が前を取って、ワッキーが位置にこだわらなかったら。車番いいのに後ろ攻め!? みたいな。
松井 ありえるよね、ワッキーなら。でもフタされて上に行かれての8番手なら、1回自分が切りに行ってダメの8番手よりはいいんじゃない。ただ下げるだけだから。
前田 とにかく、3人の展開予想としては、北井の主導権、眞杉がゴチャゴチャさせる。 そこまではなんとなく見えるところかな、と思いますね。
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。