2024/11/19 (火) 12:00 9
11月中旬の都内某所、netkeirin編集部は前橋競輪のレース中継番組でキャスターを務めるケリイン女子部・二宮歩美さんと同番組解説者として出演する“闘う競輪記者”こと町田洋一記者のお二人へ年末企画のインタビューを実施していた。『車券IQ向上委員会(仮)』と題して、車券戦術のアイデアをお尋ねしていたのだが、競輪祭についても話を聞けたので本編公開前に先出しする。※本編は12月公開予定(取材構成:netkeirin編集部)
ーーきょうは年末企画のインタビューでしたが、競輪祭用にも話を聞いてもよろしいでしょうか。
二宮歩美(以下:ニノ) もちろん!今わたしの興味はど真ん中で競輪祭ですもの!
町田洋一(以下:町田) むしろ「車券IQ向上」っていうなら、この競輪祭を前に話したいこと・伝えたいことはある。
ーーそれではまず、今年の競輪祭のみどころを教えてください。
ニノ ここまで4人の選手がグランプリを決めているので、現状は賞金ランキングで5人の選手が出場権を争うことになりますよね。競輪祭って一番シビアなGIな気がするんです。すべてがここで決まってしまう。だから「ここでグランプリを決めるぞ」っていう選手たちの心境とか佇まいが一番の注目ポイントですね。今年はどんなドラマがあるんだろうなって。
町田 (佐藤)慎太郎先生は準優勝とか決勝3位がなくてはキツい位置だけど、まだチャンスはある。賞金争いはシリーズ中にまだまだ混沌とするかもしれないね。
ニノ 町田さんの思うみどころは?
町田 オレは「どんな勝ち方」で優勝者が決まるのかに興味がある。決勝レースの決まり手。
ニノ なにそれ、どゆこと?
町田 どの選手が決勝に進むかわからないけど、逃げて押し切る選手が優勝するのか、ラインの絆で二段ロケットなのか、位置取り厳しい技巧派がコースを縫っていくのか、単騎で脚をタメて一発なのか。メンバー次第ってのは言うまでもないけど、勝者の決まり方で、ここから先の競輪に影響があるんじゃないかなって思うわけ。
ニノ レース傾向っていうこと?
町田 そう。もちろんGI戦線と記念と7車立ては一緒くたに論じることはできないし、7車立てでもS級上位戦なのかチャレンジ戦なのかで違う。でもGI戦線が作るトレンドってあるのよ。ここ最近の“スピード競輪”って言葉だって、もうGI戦線だけに適用する言葉でもないでしょう。そういう意味でこの競輪祭の決勝の決まり手とか勝ち方って気になるんだよな。
ニノ 町田さんがちゃんと記者さんで良かったです(笑)。
町田 なんだよそれ。長年競輪一筋の記者だよ。
ーーお二人は前橋競輪の中継を担当していますが、その前橋と同じく小倉バンクは屋内バンクです。何かドーム特有の特徴はあるでしょうか?
ニノ 当り前ですけど天候の影響がない分、選手がコンディションに左右されにくいって特徴はあるんじゃないでしょうか。選手によってコーナーの傾斜の得意不得意とかはあると聞きますけど。特に3コーナーの上り傾斜で「捲りが決まりにくい」みたいな話はありますね。小倉はみなし直線が56.9メートルなんですが、2センターから外を伸びて来る選手もいますよ。
町田 やっぱり初心者向けイベントや競輪普及を頑張ってるだけあってニノの情報は正確だね。
ニノ ヘヘヘ。普段屋内バンクで練習しているナショナルチームの選手たちも走りやすいとかも特徴のひとつですかね。今回もパリ五輪代表の太田海也選手に中野慎詞選手、小原佑太選手、世界選手権で金メダルの山崎賢人選手、窪木一茂選手の走りは楽しみですね。
町田 ナショナルチーム組はこの競輪祭で重要なカギを握っていると思う。それと、バンクの特徴を把握しておくのは間違いではないけど、「疑問視しておいた方がいい」と警鐘は鳴らしたい。それこそ“車券IQ向上ネタ”として。
ニノ それはなぜでしょうか?
町田 ひとことで言えばバンクの特徴なんて“もはや関係ない”って選手が増えているから。特に最高峰のGI戦は。脚力やスピードでバンクのクセなど微塵も影響を受けない走りができるってわけ。ニノが言ったように天候の影響は受けにくいバンクだから、五輪イヤーのナショナル組が実力通りに走れるわけじゃんさ。そうしたら3角は捲りが利きにくいとかは車券推理において重要視しない方が良いものになる。
ニノ たしかに。
町田 あとそれって自力選手だけの話ではなくて自在屋も追い込み屋もGI上位陣はとっくに対応している感じがある。自分の磨いてきた技を出す場面が少なくなっても、環境に対応しているというか。取材してレース見てをずっとやっているから、レーススタイルの変化はわかっているつもり。だから「選手とバンクの相性」や「シリーズ中の調子」を見極める方に注力すべきだと思うんだよね。
ーー進化するGIのレースにおいて、今までのセオリーを妄信し過ぎない方が良いことはわかりました。お二人はこの選手を狙いたいと具体的に決めているような選手はいるのでしょうか?
町田 今話した通りナショナルやナショナルの後ろの選手なんかは注目してしまうけど、具体的に誰っていうのはないかな。狙う選手より狙わない番組を決めている(笑)。位置にこだわりのない捲り選手が走る番組は買わないってね。選手が言う所のバンク相性じゃないんだけど、車券相性がとにかく悪いんだよね。そういうのは手を出さないに限る。勝負するレースを見定めるのも車券IQ向上には必要だと思う。むしろそれがすべてかも。勝てる自信のあるレースに全力勝負ってこと。そこらへんは高い授業料を払って人生を懸けて学んでいるので(笑)。
ニノ わたしは町田さんの話を聞く前も聞いた上でも深谷選手ですね。さっきも話しましたけど、競輪祭のヒリヒリするグランプリ争いの中で絶対に注目したい選手なので。今年はグランプリが深谷選手の地元静岡ですし、南関勢は郡司選手や北井選手の出場が決まっている背景もある。地区が地区を引き上げる流れもあるんじゃないかなって。あとは窓場選手。通年追いかけていて取材もできた選手だから、最後まで見届けたい気持ちです。応援含めて絶対買いますね。
町田 出たな応援車券とか推し車券みたいなやつ。ギャンブルは遊びじゃないし、人生をかけて勝負するものであって、その思考はオレにはない。
ニノ 別にいいじゃないですか。推し選手を作って応援車券を買って競輪を楽しむ。そこから自分の関わり方を自由に決めていくってのもありでしょう。「まずは好きな選手を探そう」って競輪をはじめたばかりの方に呼びかけると投票もワイワイ面白いんですよ。
町田 でもギャンブルっていうのは(以下、町田記者のギャンブル論が展開されるが割愛)
ニノ 別に否定することないでしょう。わたしが言いたいのは(以下、激しい応酬のため割愛)
ーー二宮さんには初心者さんを含めて幅広い方々に、町田さんには車券玄人の皆さまに響く情報が発信できるようにお二人に本企画をオファーしています。ここでギャンブル論を交わしてもめないでください。お二人は日常会話の中にも小競り合いが多くてヒヤヒヤしています。
ニノ わかりました。役割分担ですね。競輪の熟練度も違うし、考え方も違いますもんね。
町田 でもオレさ、アイドルの人が「誕生日だから〜」とか言ってバースデー車券を(以下略)
ニノ マッチー、まだやるの? もうやらないよね?
町田 やめとく。
ーーそれでは競輪祭における車券IQ向上を目指して、何かお二人からアドバイスをいただけないでしょうか?
町田 全部の話が繋がるんだけど、3連単で勝負する人は競輪格言の『3着は流せ』を意識して欲しいですね。人にそう言っておいて自分は厚張りしたくってつい絞って勝負しちゃうけど(笑)。でも本当に展開不問でかっ飛んでくる選手が多いし、3着とは言わず2着も広く考えてもいいくらいのレース傾向が目立つ。裏格言の『全の1点切りが来る』というのは信じていいと思うので。
ニノ 「全」を買おうとして「さすがにこの選手はないか」って一人の選手を避けたら、その選手が突っ込んでくる現象。本当にありますよね(笑)。
町田 「お金がある人が勝てる」みたいな買い目点数を増やすアドバイスは嫌なんだけどね。でも事実、展開を予想してドンピシャでその通りになっても3着が抜けるって場面は間違いなく増えている気がするんだよね。ニノはGI用にというか何か考えあるの?
ニノ わたしも3連単を買ってしまうんですけど、無理せずに3連複を見るのも手だと思っています。自分の感覚で「オッズこれくらいかな?」って予測しておいてフタを開けて見れば想像よりもつく時なんかは買いのスイッチが入るんですが、配当次第で券種は検討したいですね。
町田 ニノの情報を求めている初心者さんなんかは余計に3連単に固執して欲しくないね。オレも2車単を主戦場に勝負していた時代もあったし、今もオッズを見ながら検討することもある。
ニノ そうですよね。3連単がオイシイのは言うまでもないけど、ケースバイケースで考えないといけないし、波乱決着を予想するときほど、あえて手広くカバーできる券種もいいのかも。
ーー少しだけお話を聞くつもりが、ばっちり“車券IQ向上”に役立つお話が聞けました。
ニノ ちょっとまとめておきましょうか。
町田 さすが司会進行。車券に関することだけ整理しておこう。
ニノ バンクの特徴と選手のスタイルを妄信し過ぎない、ナショナルチーム組が鍵を握るので注視、勝負レースをしっかりと見定める、3連単の3着は流すつもりで、オッズを見ながら券種を検討する。みたいな感じかしらポイントは。
町田 そうだね。3着をケチって1点、2点切ればその選手が来るから。高い授業料を払って身に染みているから(笑)、この記事を読んでくれる人には損して欲しくない。無理にとは言わないが頭の片隅には置いて欲しい格言だね『全の1点切りが来る』は。そんなレース多そうだよ今回。
ニノ あと「のめり込まない」を追加しておかないと(笑)。
町田 それはGIとか競輪祭に限った話じゃないだろ(笑)。ここに人生をかけてシャレでは済まされない痛みを味わった生き証人がいるって話。そこを追求すると先祖代々受け継いだ土地を切り売りした話に発展しちゃうからやめよう(苦笑)。
ニノ そうですね! 綺麗にまとまったところで笑って終わりたいですもの。町田さんが大勝ちした話で終わります? こないだの…
町田 いや、それもやめておこう。それはそれで知られたい話でもないから(笑)。
ーー町田記者がSNSのプロフィールで書いていたり、番組で話していたりする「先祖代々受け継いだ土地を切り売りするくらいの勝負」って、あれ比喩ですよね? まさか本当なのですか?
ニノ 逆に比喩だと思ってたんですか? 町田さんは勝つ時も負ける時も本気で豪快ですよ。人生賭けてるから。その勝負姿勢を隣で見ていると心のブレーキがすごく効きます(笑)。ちょっと気持ちを知りたくなる時があるんですけど、いややめておこうって。
町田 編集部に写真を送るよ。警鐘半分、笑い話半分で記事に使ってください。土地を切り売りするために建物をぶっ壊して更地にした時の写真があります。建物をぶっ壊す時に家財道具を運び出したんだけど、仏壇がすごく重くてびっくりした。
ニノ 物理的な重さに加えてご両親に対する後ろめたさも拍車をかけたのでしょうね。そりゃ重いはずです。
町田 ふざけんなよ。なんて言い草だ。物理的に重いんだよ。仏壇の話なんてしなきゃよかった。
ニノ この記事の締めの言葉は決まりましたね。最後は町田さん、締めちゃってください。
町田 12月に僕とニノが車券IQ向上の記事を出すので、どうぞお楽しみに!
ニノ PRも大切だけど求められてる締めの言葉は違いますよね。
町田 おとうさん、おかあさん、いろいろすみませんでした。ここにお詫びします。
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。