アプリ限定 2024/11/16 (土) 12:00 7
いよいよ19日、GI戦線のラストを飾る競輪祭が開幕する。このシリーズでグランプリの出場選手が決まり、競輪界は一気に締めくくりの12月に向けて“年末”の色を濃くしていく。今回は今年ここまでの激闘を振り返るべく、選手の声を直接取材し続け、2024年の激闘譜を“現場目線”で知る競輪記者たちの「記憶に残る一戦」についてお届けする。(企画・構成 netkeirin編集部)
毎日の様に現場で取材をし、選手と世間話を含めて話し、朝のモーニング、デイ、ナイター、ミッドと死ぬ程、車券を打っている日々。だけど、編集部から“今年の激闘譜”のお題を戴いたが、どのレースがベストか急には思い出せない。時系列もバラバラで、高松記念の決勝で慎太郎先生と東龍之介が競ったのが、今年なのか、あるいは去年なのか、それも調べないとハッキリしない。アオケイの長谷川編集長様とも話したが、デスク作業で、どのレースをピックアップすれば良いのか正直難しい。
この手のものは、大衆居酒屋でホッピーでも飲みながら、わいわいガヤガヤ騒ぎながらの方が、面白い企画が出てくる。基本、自分が取材に行っていないレースだと、想像になり、選手のニュアンスと違う可能性もあるので、自分が行った現場で考えた。例えば、小田原記念の決勝の“南関7車結束”のレースも書きたいが、残念ながら、現場にいる事はできなかった。今年も、どう考えても古性優作で始まり、古性優作で終わりそうな雰囲気。選手の地殻変動もないので、この時代は当分続く。お約束的になってしまうが、親王牌の決勝を取り上げる。
決勝並び
⑨寺崎浩平-⑤脇本雄太-①古性優作
③新山響平-⑦渡部幸訓
②郡司浩平-④小原太樹
⑥河端朋之(単騎)
⑧佐々木悠葵(単騎)
一番人気は当然、寺崎のロケット作戦に乗るワッキーと古性。今は車番競輪で、突っ張りが主流。外枠は誘導のペースも早く、誘導の早期追い抜きのペナルティーが重たいから、7車でも9車でも同じ現象が起きている。あとは、競輪はドラマ仕立てになっているから、伏線もある。このレースでは古性が一番車だから、近畿の突っ張りは容易いと思うが、そうでもない。
2日目のローズカップで近畿は同じ並びだったが、眞杉匠の超絶テクニックで、突っ張りに失敗している。レース直後に、古性優作から突っ張りのテクニックを身振り手振りで寺崎浩平がアドバイスを受けているのが印象的だったので、この写真を掲載する。
コロナ禍の前は、我々も検車場に入れたから、こういうリアルな写真も撮れたが、それが難しくなっている。個人的にも、人間臭い競輪の魅力を伝える写真だと思うし、ファンの間でも評価が高かった。
その古性のアドバイスが功を奏して、寺崎は突っ張りに成功。ただ、思った以上に新山の巻き返しが早かった。その新山は叩けないとみるや、ワッキーの内に降りて併走。これも、過去の流れがあり、新山が青森記念の決勝などで、眞杉匠にやられているレースだ。やられているから、相手が嫌がる事を一番分かっている。
ここはワッキーが根性を見せて凌ぐが、次の矢の郡司浩平が、すかさず飛んできた。さすがに、これは対処できず、内に差してしまった。この時、古性は、アンコになったりしていて、普通なら飛んでいるケース。ここで脚を削られていない、古性の技術と脚力は天才的と言える。
その後は郡司の捲りに古性がスイッチ。記者席が3コーナーの上にあるので、真上から見ていて、脚を溜めていた佐々木悠葵の捲り一発が決まったと思った。
ただ、古性と郡司の2段ブロックで、大魚を逃してしまう。郡司の空いた内を古性が突き抜けたが、これはフロックではないだろう。自らに流れを引き寄せ、あり得ない様な脚力と、瞬時の判断は誰にも真似ができない。S級トップ選手の誰もが、「古性は異次元!」と口にする。
ワッキーの後ろは優勝に近い様で、実は最も遠い位置。古性にすれば、若手の番手で優勝、自力での優勝、ワッキーの番手で優勝と色々なパターンがあるが、理想はワッキーとのゴール前勝負のタイトル奪取だろう。これまで聞いた事がない「ダブルグランドスラム」は僕の競輪界の今年の流行語大賞だ!
現代競輪はダッシュ戦で単調なレースが多い。マーク選手が技術を発揮できない場だ。だけど、こうした泥仕合で、ビッグレースの決勝で全員が力を出し切るレースがあると、競輪界もあと30年は大丈夫だと確信できる。
着順 | 車番 | 選手名 |
---|---|---|
優勝 | ① | 古性優作 |
2着 | ④ | 小原太樹 |
3着 | ⑥ | 河端朋之 |
4着 | ⑧ | 佐々木悠葵 |
5着 | ② | 郡司浩平 |
6着 | ⑦ | 渡部幸訓 |
7着 | ⑤ | 脇本雄太 |
8着 | ③ | 新山響平 |
9着 | ⑨ | 寺崎浩平 |
netkeirin取材スタッフ
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netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。