2021/08/01 (日) 18:00 8
高校の自転車ロード競技を描き、シリーズ累計発行部数が2500万部を超える大ヒット漫画『弱虫ペダル』。作者で自らも自転車レースを楽しまれている渡辺航先生にオンライン取材。前編では東京五輪でメダルの期待がかかる自転車トラック競技の見どころや注目選手ついてうかがいました。(取材・構成=netkeirin編集部)
【作品紹介】
主人公の小野田坂道は運動は苦手、アニメを愛する高校生。聖地・秋葉原への交通費を浮かすため、往復90kmの道のりをママチャリ移動。アニメ研究部に所属し、友達を作ることを夢見ていたが、あることがきっかけで自転車競技部へ入部。様々な出会いを通してレーサーの才能を開花させていく。
ーー『弱虫ペダル』はロードレースが舞台の漫画です。同じ自転車競技でもトラック競技はどのような印象をお持ちですか?
ロードレースは屋外で長時間に渡って行われることから、雨だったり、路面が滑ったり、時には電車の踏切が締まっているなど、運に左右されるケースも多く、不確定要素が大きい。そこがおもしろさであり、難しさでもあります。逆にトラックはそうした不確定要素を極力省き、選手のフィジカルと自転車だけで争う競技という印象です。
ーートラック競技は「ケイリン」「スプリント」「オムニアム」「マディソン」が行われます。注目されている種目はありますか?
2つあって、まずは2人1組のチームで走るマディソンです。選手交代時、チームメイトの手と自分の手を組み合わせ、「それいけーっ!」みたいな感じでチームメイトの加速を促す行動があるんです。これは自転車競技における、たすき渡しの具現化じゃないかと。見ている方も力が入ると思います。
トラック競技は伊豆ベロドロームという限定的な空間で開催されますよね。中継ではロードのように一部の集団しか写らないということは無いですから、決定的瞬間を見逃すことは少ない。日本では野球、サッカー、テニスなど全体像を掴める箱庭スポーツは人気がありますし、ハマれば楽しんでもらえると思います。
ーー気になる選手はいらっしゃいますか?
中学生の時は科学部に所属し、高校から自転車に乗った脇本雄太選手は、まさに『弱虫ペダル』の主人公である小野田坂道くんを彷彿とさせますよね。
橋本英也選手はロードレースにも出場されているので気になります。ロードとトラックって競技性が異なると思いますし、求められるスキルも違うと思うんです。橋本選手が世界とどれくらい対等に戦えるか楽しみです。
女子では梶原悠未選手。彼女とはちょっとしたエピソードがありまして、僕が持っている「弱虫ペダルサイクリングチーム」という自転車競技チームの練習拠点が茨城県の筑波山なんです。チームメンバーの唐見実世子選手と梶原選手が仲が良いこともあって、練習中たまたま見かけたんです。
平地を走るようなTTバイクに乗って、会話をしながら斜度20%の坂道を軽々と登る姿に驚きましたね。アスリートとしてのポテンシャルに感動しましたし、世界選手権優勝者だけに与えられる「アルカンシエル」を着用していますので、目が離せない存在です。
ーー今お話しで挙げられた梶原選手は高校入学後から自転車競技をスタートさせています。
高校から自転車に乗るのは遅くはなくて、自転車の本場ヨーロッパでは、中学生頃までは陸上やバスケットなど他のスポーツをプレーした方が良いと言われています。自転車って足裏からのインフォメーションが非常に重要なんです。ペダルに力を伝えるため、他のスポーツで身体を作って、高校生ぐらいから本格的に自転車に乗り始める子は伸びシロが大きい。
そして、高校ではやみくもに距離を乗るのではなく、強度重視。それも陸上など他の競技を並行しながらが、スタンダートになってきています。高校生から自転車に乗るというのは理想的なステップなんです。
netkeirin取材スタッフ
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