2024/10/16 (水) 12:00 34
弥彦競輪場で10月17〜20日に大阪・関西万博協賛「第33回寬仁親王牌 世界選手権記念トーナメント(GI)」が開催される。長く暑かった夏もようやく終わり、暮れへと向かっていく。寬仁親王牌から競輪祭へ、この時間は緊張感しかない。
眞杉匠(25歳・栃木=113期)が7月松戸「サマーナイトフェスティバル」、9月宇都宮「共同通信社杯競輪」とGIIを立て続けに制した。グランプリ出場のための賞金ランキングでは6位となり、差額を考えればある程度有利な位置にいる。だが、だが…としか思えない。
この男の闘争本能は、宇都宮餃子の熱さを大幅に上回る。5月いわき平日本選手権(ダービー)を制した平原康多(42歳・埼玉=87期)が決めている静岡グランプリの舞台。「GIを勝って出る」としか考えていないだろう。容易に近づけば、火傷する。
忘れ物を取りに来た。使い古されたようで、色褪せないフレーズだ。犬伏湧也(29歳・徳島=119期)にとって昨年大会は“取るタイミング”だった。その機を逸してからは信じられない不振に陥った。ようやく、状態面も雰囲気も取り戻してきた。
「しょーもない」
決勝の後、小倉竜二(48歳・徳島=77期)がこう吐き捨ててから1年。取る戦いに、真っすぐ挑む。あの時、「グランプリに犬伏がいてほしい」と誰もが思っていた。ファンにまたその感情を湧き起こさせる。
今年のグランプリは静岡での開催。深谷知広(35歳・静岡=96期)の顔が思い浮かぶ。「深谷がいてほしい」「深谷がいなければ」の声が上がるわけだが、今回は静かに応援したい。南関の意志、を見守りたい。
地獄を見た。押しも押されもしないイケメンレーサーとして、また熱い先行で心を打つ新山響平(30歳・青森=107期)のトレードマークは笑顔だ。もちろん、いつでも新山の笑顔を見ていたい。
しかし、地獄を見た。9月地元の青森記念(みちのく記念善知鳥杯争奪戦)決勝は眞杉のヨコ攻撃により、優勝を手にすることはできなかった。S班になって2年、優勝がない身。決勝は北日本結束でチャンスだった。それを、打ち砕かれた。
S班としての戦いぶりは変わらないが、もう一つの波に乗れない。鬼になった新山が、弥彦の森閑とする空気を、目がくらむような灼熱の空気に変えるかもしれない。
窓場千加頼(33歳・京都=100期)も重要な一戦になる。2月取手「ウィナーズカップ(GII)」の決勝から、8月平塚「オールスター(GI)」決勝の戦いがある。今の勢いで行くしかない。
神様がすぐ隣にいて、命を懸けた選手たちの戦いを見守る場所。熾烈を極め、壮絶としかいいようのない走りがある。
今年、不振続きだったり、はたまた一気に頭角を現してきたり、まだまだ最後のチャンスに手を伸ばそうと、108人がしのぎを削る。燃え滾る弥彦競輪場に咲く花は、何色か。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。