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前田睦生の感情移入

【オールスター競輪回顧】サトミナ、チカヨリの熱い夏、そして完璧だった、はず…シンタロウの夏ーー

アプリ限定 2024/08/20 (火) 12:00 61

サトミナも苦しい戦いだった

サトミナの熱い夏

 熱かった。平塚競輪場の大阪・関西万博協賛ナイターGI「第67回オールスター競輪」は8月13〜18日の日程で、6日間の激闘を終えた。8月13〜15日には「女子オールスター競輪」が行われ、佐藤水菜(25歳・神奈川=114期)の不屈の優勝があった。

 実力を考えれば、パリ五輪からの過酷な日程を考えても、勝てる、勝たないといけない、というプレッシャーの中、サトミナは輝いた。すべてにおいて苦しかったはず。

 ガムシャラにはねのけるのではなく、レースの中で、とにかく冷静に立ち回っていた。見える。サトミナの世界観は、ガールズケイリンの選手すべてが目指すべき地点。それを、証明した。ナショナルチームに所属していなければ、あっせんという日程の制限があるガールズケイリンの世界だが、そこにいる全員がプロ。埋めないといけない。

 厳しいのは承知だが、サトミナが示したものを、ガールズケイリンは追いかけないといけない。追いつかないといけない。男子とはルールも違うのは承知だが、戦うほかに、道はない。

チカヨリの熱い夏

チカヨリはここがスタート地点

 窓場千加頼(32歳・京都=100期)がGI初の決勝進出で、準優勝。優勝した古性優作(33歳・大阪=100期)と近畿ワンツーの結果を、力で導いた。古性に関しては、ファン投票1位での優勝。1999年の神山雄一郎(56歳・栃木=61期)以来の偉業だが、驚かない。“ふさわしい”の言葉しかない。

 100期の中では、やはり千加頼が注目を集めていた。在校1位は中山敬太郎(35歳・熊本=100期)で卒記チャンプは阿部力也(36歳=宮城-=100期)。古性もBMXの日本王者からの転身、として見逃せなかったが、当時から村上義弘(引退=73期)の後継者として、チカヨリ、だった。

 窓場千加頼。穏やかで優しくて、人懐っこい。あふれる才能は誰もが認めるものだったが、永遠の戦国時代である競輪界においては、脆さしかなかった。沈んだ。

 しかし、その才能が、それを許さなかった。父・窓場加乃敏(引退=59期)が引退して、まさに一家の長。窓場家のエースは、鎧をまとい、先人に立つ決意を固めた。チカヨリは、今の姿が普通。まだ、先がある。

シンタロウは何を思う

シンタロウは何を思う

 ルールや技術、対応、競輪において様々な変遷はたどってきたわけだが、最終バック番手の選手が勝つ、勝ちに近いは古今東西の道理。それだけ、自転車の原理がある。佐藤慎太郎(47歳・福島=78期)はその場所にいて、勝てなかった。

 窓場のまくりをブロックした瞬間まで、完璧だった。完璧だった…はず。「肩もガッチリ入ったし」。完璧なブロックに見えた。が、足りなかった。

 結果として窓場が上回ったわけだが、シンタロウは何を思う。「表彰台の真ん中は遠くない。もっと練習する」。才能開花の窓場と、鬼も逃げ出すほどの叩き上げといえるシンタロウ。『屈服』の2文字などない。それも無論、新山響平(30歳・青森=107期)にとっても、だ

 窓場に負けて、古性が勝った。

これが普通。古性優作。

競輪は深いんだよ

 最終日の本場入場者は1万人を軽く超え、6日間の売り上げも爆裂だった。平塚が準備したものは、エッフェル塔を上回っていた。

 松井宏佑(31歳・神奈川=113期)や眞杉匠(25歳・栃木=113期)の悔しさは、相模川からセーヌ川にまで続くもの。これほどまでの思い、が平塚に結集、充満していた。誰もが、何かを感じていた。

「競輪は深いんだよ」

 シンタロウの言葉がある。人生は実は短くて、誰にとっても残された時間しかない。その時間を競輪に費やすことが、いつか入る棺桶の重みを、その重さを教えてくれるシリーズだった。

多くのファンが、そこにいた。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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