2020/12/23 (水) 12:00 6
いよいよグランプリが近づいてきました。22日の記者会見では並びも発表されましたので、皆さんの予想に少しでもお役に立てるように、今週は早めにボクもコラムを公開したいと思います。
自分がグランプリを優勝したのは、2回目の出場となった1991年でした。グランプリは演出などの盛り上げ方や、ファンの皆さんの数や熱気も、他のレースとはまるで違っています。しかも、一発勝負のレースとなるので、とても緊張するのですが、前回の出場時よりも落ち着いて走れたことが、勝利につながったと思います。
競輪選手にとって、グランプリはその年のチャンピオンであり、そして、その年のほぼ賞金王を確定させるレースでもあります。それだけに、優勝したときの達成感は並大抵のものではなかったです。
レースまでの調整はたっぷりと取れるだけに、風邪などの病気にならないのは当たり前ですが、その期間内で最高のパフォーマンスを出すことだけに集中しました。また、メンバーは一年間の戦いを通して実力を知り尽くしているだけに、この人が先行したら捲れる、捲れない…などと想像しながら、日々展開を考えてました。
今回のラインもそれぞれの選手が、展開を考え尽くしたなかで形成されたものだと思います。自分が本命視しているのは、脇本選手の後ろにつけた平原選手です。もし、自分が平原選手の立場なら、このメンバーで最も長く先行できる脇本選手の後ろにつけると思いますし、その位置取りが優勝に最も近いと見ています。
昨年のグランプリでは前が清水選手、後ろが松浦選手だった中国勢ですが、今回はその並びが逆となりました。2人は競輪選手としてのタイプ、そして捲り、追い込みなど戦法も一緒なのですが、同じ戦法の選手が並んだ際には、力が上の選手が先行するのが鉄則となっています。そう考えるとこの並びは、松浦選手が清水選手よりも上に立った証しといえるでしょう。
他のラインは新田選手-佐藤選手-守沢選手の北日本ライン、そして郡司選手-和田選手の南関東ラインとなりました。四分戦となったレースのポイントは2つで、ひとつは脇本-平原で先行した際に、その3番手に松浦選手がつけているのか、スピードがあって、この平塚バンクに向いていそうな郡司選手がつけているのか。
もうひとつはその展開となった時に、7番手に位置しているであろう新田選手が、脇本選手の先行を捲れるのかも、ポイントとなります。
グランプリは誰もが勝ちたいレースであり、それが仕掛けの遅さとしても現れることがあります。その展開になったときには、脇本選手の後ろでレースを進められる平原選手が、さらに優勝に近づくのではないかと思います。
それだけに、脇本選手が少しでも流すようならば、新田選手は一気に仕掛けてくるはず。もしかしたら中団争いに加わってくるのではということも考えられますし、そのあたりの駆け引きも面白そうです。まとめとなりますが、本命は平原選手で、対抗は脇本選手。連下は松浦選手で、穴は郡司選手です。
コロナ禍のなかで行われた2020年の競輪界は、最も賞金が上積みできるはずの日本選手権競輪といったレースが中止となっただけでなく、その後も無観客での開催や、7車立てのレースなど、さまざまな出来事がありました。
その状況下でグランプリのメンバーとして、勝ち上がってきた9名は素晴らしい選手ばかりです。出走する選手たちには何度も味わえないであろう雰囲気、そして感動を楽しみながら、悔いのないレースをしてもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。