2021/06/20 (日) 12:00 4
こんにちは、ヤマコウです。「第72回高松宮記念杯競輪(GI)」も決勝を迎えました。
準決勝、どのレースも白熱して楽しんで頂けたと思います。調子がイマイチに見えた清水裕友や松浦悠士の走りは流石でした。
松浦は、3角で誰もが「飛んだ!」と思ったはず。それでもゾンビのように蘇って2着に食い込みました。同じ自転車を乗っていた立場からすると、とても信じられません。
そして清水裕友。彼の走りも素晴らしかった。準決は山崎賢人の3番手を誰が取るのか? と言うメンバー構成でした。位置取りでは1番車の古性優作が一枚上なので、清水がどう打開するか注目していましたが見事1着で決勝入り。
勝因は「先行する勇気」だったと思います。清水本人も振り返っていましたが「あの距離(残り600メートル)から叩きに来る選手はいないと思った」ことが勝機を掴みました。
山崎の後ろは古性と山田庸平が絡み、清水が番手にはまったのは「先行してもいい」という気持ちでした。逆に古性は大事に行きすぎて失敗したと思います。
そして12R、佐藤慎太郎が「これぞライン戦」と思わせてくれるレースをしてくれました。番手発進ばかりのライン戦の中で、各々がきっちり仕事をして小松崎大地と決勝入りを果たしました。3番手の永澤剛は残念な結果でしたが…
ラインの概念についてはまた別の機会に書こうと思います。
決勝のメンバー、ライン構成は以下の通り。
①稲川翔(大阪・90期)
②松浦悠士(広島・98期)ー⑦清水裕友(山口・105期)
④山崎賢人(長崎・111期)
⑤吉田拓矢(茨城・107期)ー⑧宿口陽一(埼玉・91期)
⑥小松崎大地(福島・99期)ー③佐藤慎太郎(福島・78期)ー⑨守澤太志(秋田・96期)
①稲川が④山崎の後ろを選択したら、山崎の3番手を誰が取るのかがメインテーマになったと思いますが、稲川は「単騎で走る」ことにしました。
これで、流れは一気に【②松浦ー⑦清水】に傾いたと思います
松浦は京王閣ダービーを清水の先行に乗って優勝しました。その直後のGIで、松浦も清水にチャンスがある走るをしたいが、ダービー王として受けて立たなければいけません。
競輪の受けて立つとは前受けのことです。
競輪用語に【前受け】【後ろ攻め】という言葉があります。これは、言葉通り攻める方が後ろで、受ける方が前です。相撲で言うなら横綱相撲です。
横綱相撲とは「格下に先手を取らせておもむろに反撃し、余裕をもって退ける相撲」です。格下が横綱相撲で勝てるはずありません。格下の選手が強い選手を相手に受けて立つことはそういう意味なのです。
少し話は逸れましたが、ダービー王の松浦は受けて立つ立場となりました。
1番車の稲川が付く意味は、先行態勢に入る④山崎を叩くレースになる所でした。しかし、稲川が単騎になったことで、②松浦の主導権取りを邪魔される可能性がグッと低くなりました。
まず後ろ攻めの⑤吉田がレースを動かします。
S.②⑦、①、⑥③⑨、④、⑤⑧
そして⑥小松崎が打鐘前に先頭に立ち、②松浦はジッと反撃の機会をうかがいます。
②⑦ ①
打鐘.⑥③⑨ ⑤⑧ ④
⑥小松崎もこのタイミングで出られるとラインが全滅するので、全力で併せに行くでしょう。調子が良く、仕掛け損じが少ない小松崎ですが、ダービー王の松浦を併せるのは、ちょっと難しいと思います。逆に、併せた時が穴目になると思います。
②松浦が一気に主導権を取ると…
H.②⑦ ① ④
⑥③⑨ ⑤⑧
←⑤⑧
B.②⑦ ① ③⑨ ④
⑥
番手の⑦清水と①稲川のマッチレース
1=7ー3954
先ほど触れたように、⑥小松崎が②松浦を併せると混戦になるので⑤吉田拓矢や④山崎賢人の出番が来るでしょう。
5ー17ー139
①稲川は④山崎の後ろを走っても十分チャンスがあったと思います。それでも単騎を選択したことが吉と出るのか凶と出るのか…?
発走は16時35分です。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。