2024/08/04 (日) 12:00 24
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
松戸競輪「開設74周年記念・燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯(GIII)」の決勝メンバーが決まりました。
⑧新村穣(神奈川・119期)ー⑤深谷知広(静岡・96期)ー①岩本俊介(千葉・94期)ー⑦和田健太郎(千葉・87期)
⑨取鳥雄吾(岡山・107期)ー②清水裕友(山口・105期)ー⑥月森亮輔(岡山・101期)
③平原康多(埼玉・87期)ー④阿部力也(宮城・100期)
南関4車、中国3車、関東・北日本2車のライン構成になりました。レースの中心は南関勢ですね。このメンバーで自力が一番強い⑤深谷の前を、主導権だけは絶対取りたい⑧新村が走るので圧倒的有利です。
7月に行われた岐阜FIで、新村と話す機会がありました。ハンドルポスト(フレームとハンドルを繋ぐ『くの字』の部品)が非常に短かったので興味が湧いたからです。単純にポストの部分を長くするとハンドルを握る位置が遠くなります。遠くなるってことはスピードの乗りは良くなりますが、素早いハンドル操作が難しくなります。それを調整するために自転車のホイールベースを短くしたり長くしたり、あるいはホイールベースの前半部分や後半部分の長さを変えたり、ハンドルの高さを調整したりといろんなところを触って好ポジションを探ります。
今の流行りはとにかくトップスピードを高めたいので長めの選手が多いですね。ところが彼は全く逆のセッティングだったので「それだけポストが短いってことは、どこをどうしたい、っていうのがあるの?」と聞きました。すると「とにかくどうなるのか試したい」と言います。「練習ではどうだった?」と聞くと「全くしっくり来なかった」と真面目に答えます。
自転車の進みが悪くてどこかを変えたい、あるいはもっと進むようにしたい、あるいは戦法の変化でセッティングを変えたい話はたくさん聞きますが、今の流行りを逆張りして短いポストを付けたことに「試したいから」の理由に探究心の深さと自転車好きの要素を感じました。師匠の小原太樹(神奈川・95期)からは「とにかく自分で考えろ」と指導されているようです。
そして、ここからが本題ですが、川口聖二(岐阜・103期)が横にいてチャチャを入れてくるので話が前に進みません。時には新村が蚊帳の外のシーンもありました。普通なら「そろそろ…」みたいな気配を出すのですが彼はそんな気配一切出すことなく、かといって絡んでくるわけでもなくずっと聞いていました。
そこまで生真面目な選手の⑧新村なら⑤深谷の前で先行しか考えていないでしょう。問題は自力で上回る⑨取鳥のカマシにどれだけ耐えられるかですね。南関勢も中国勢も理想は前受けですね。枠が有利な南関勢を前受けで考えます。
S.⑧⑤①⑦ ⑨②⑥ ③④
③平原が後攻めになるのが肝ですね。南関勢が一度突っ張れば⑨取鳥が③平原に閉じ込められるかもしれない。それを⑨取鳥が嫌うなら後ろまで引いて巻き返す。この判断はセンスが問われますね。
③④
H.⑧⑤①⑦ ⑨②⑥
この展開になれば⑤深谷が有利です。
・本線
5=1ー72(南関勢が先手を取って⑤深谷番手まくり)
2ー5ー67(①岩本が捌かれ中国勢が割り込む)
スタートで南関勢が失敗すると②清水が展開有利になります。初手が注目です。
(スピードチャンネル専属解説者)
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。