2024/07/28 (日) 16:30 62
netkeirinをご覧の皆さん、こんにちは。伏見俊昭です。
今回はユーザーの方からのご質問といよいよ始まる五輪、そして前回のコラムの反響についてお話ししたいと思います。
うれしいことにこのコラムを「読んだよ、面白かったよ」と選手仲間だけでなく、関係者からもお声掛けいただきます。特に前回の『首のヘルニアについて』のコラムは反響が大きかったです。PRP療法のおかげで、今も上を向いてもしびれが出ない、良い状態が続いています。長年、違和感があったので血流が悪かったり、左手の筋力というか、使い勝手はそう簡単には元通りにはなりませんが、ここ数場所はしびれがなくて、ストレスなく走れています。
競輪選手って自分の身体の状態のことを、バカ正直に言ったりはしないです。「腰が痛い」「ひざが痛い」っていうと弱みを見せる格好にもなるし、格闘家だったらそこを狙われちゃいますよ(笑)。だから今まで首のヘルニアについては公表してこなかった。それで前回のコラムを読んでくれた方が「伏見さんも苦労してたんですね」とか「首にPRP療法って効くんですか?」って言ってくれました。それだけ自分のことを気にしてもらってるんだなぁ…って実感しました。本当に有り難いです。
後半部分の厳しすぎる罰則のほうは特に何も言われてないですね。判定に対しては大きな不服があるわけじゃないけど厳しいときもあるし。ファン目線なら「そんな罰則ぬるいよ」って言われるかもしれないし…線引きは難しいですね。S級S班や若手選手はそういうの言いづらいと思うので、ボクがそろそろ発信してもいい年齢なのかなと思っています。誰かが言わなくちゃいけないし、ボク自身今までやってきたという自負もありますから。
前回も書きましたが、やっぱり誘導員早期追い抜きの罰則は厳しいですね。最近では山崎(芳仁)君の息子の山崎歩夢くんがチャンレンジのデビュー戦でやっちゃたんですよね…。7月の立川で芳仁君の弟の司くんと一緒だったので話を聞いたら「別線の自力選手しか見てなくて、内側の誘導員のことまで気にかけられなかった」って言ってたと教えてくれました。おやじ(芳仁)にも怒られてたそうです(笑)。そりゃ、怒りますよね。ここから4ヶ月あっせん停止は厳しいですね…。上が決めたことだから覆ることはないけど、開き直って練習するしかないですね。
今回はユーザーの方から『落車、失格のときの賞金はどうなるの?』というご質問がありましたのでお答えします。
競輪は1着から9着まで全員に着順に応じた賞金が支給されます。落車した選手は末着、9車立てなら9着、7車立てなら7着の8割の賞金です。もちろん、再乗して入着順があればその賞金が出ます。賞金以外の手当ですと、例えば「出走手当」なら発走機についていれば出ます。そのほか、「日当やナイター手当」「ミッドナイト手当」「雨敢手当」なども支給されます。
そして落車した選手には共済会から見舞金も出ます。また、その落車の影響でその後、競走に参加できなくなると休んだ日数に応じて休養給付金もあるので、収入が即ゼロになることもありません。全額ではないけど入院費、手術費、通院費なども負担してくれます。落車で負傷をすると公傷制度というものもあります。こちらはお金ではなくて、級班の保障です。1期の最低出走本数に達してない場合、現在の級班を来々期、維持することができます。
…と、説明はしてみましたが、実は詳細までは把握しきれてないです(笑)。
同県の鈴木誠君が昨年6月の大垣GIII3日目に落車して大ケガを負いました。手術も成功して、リハビリも順調で練習も再開していたので復帰も近いなと思っていたら、無理してしまったせいか、骨のくっつきが良くなくて再手術に。1年経った今も彼は復帰できていません。そういうとき「公傷ってどれだけ使えるんだっけ」「1年だけじゃなかったかな?」と仲間内で話してもみんな曖昧。年に一度行われる支部総会で共済会の手引きやいろいろな資料をもらえるんですが、めんどくさいんで読んでないんですよね(笑)。熟読している選手には申し訳ないけど、読んでない選手がほとんどじゃないですかね。当事者にならないと他人事だと思って読もうとしなくて。自分には関係ないからって深く考えないんですよ。
ちなみに公傷制度は落車失格の場合は適用されません。失格ってしちゃうとほんと大変なことばっかりです。
ついにパリ五輪が開幕します。自転車競技は今回も素晴らしい選手がそろってメダル獲得の期待も大きいですね。一番、メダルに近いのはやっぱりお家芸のケイリンかな。チームスプリントも世界の強豪と遜色ないくらいのタイムを出しているので、楽しみ。自分たちがナショナルチームにいたころとは、トレーニング理論とかいろんなものがどんどん変わっています。あの最新のカーボンのバイク…乗ってみたいなあと思ったりします。
よく「五輪とグランプリ、どっちが緊張しますか?」「どう違いますか?」って聞かれることがあります。極端にいえば、グランプリは自分の戦いで負けても自分のせいだし、また来年1年間、頑張ればいいと思えます。でも五輪は4年に一回だし、一生のうちに何度出られるかもわからない。さらに日本代表として日の丸を背負っていて、日本中の応援もあって重みが全然違いましたね。グランプリで勝ったときももちろんうれしかったけど、五輪でメダルを獲得したときは別格。あのメダルは命の次に大事なもの、それだけの価値があるって思っています。お金では買えないですから。自分でいうのもなんですが偉業を達成できましたね。あのチームスプリントはタイムトライアルで最低でも銀メダルが確定してからの1、2位決定戦だったので、メダル確定瞬間からはアドレナリン出まくりでした。“自分がこの世で一番幸せ”、“こんなに幸せでいいのか”って自分で自分を疑うくらいでしたね。
競輪ファンの方の中には自転車競技の楽しみ方がわからないっていう方もいらっしゃいます。今回も競輪選手の中でもスピードナンバー1、2、3が出場するのでその選手たちがどんな走りをするか? どれだけのスピードを出すか? あたりを見てほしいです。彼らは五輪終了後にはすぐオールスター競輪にも出場する予定です。今度はその選手たちが「競輪」でどういうパフォーマンスをするか、その参考にしてもらうのもいいですね。
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伏見俊昭
フシミトシアキ
福島県出身。1995年4月にデビュー。 デビューした翌年にA級9連勝し、1年でトップクラスのS級1班へ昇格を果たした。 2001年にふるさとダービー(GII)優勝を皮切りに、オールスター競輪・KEIRINグランプリ01‘を優勝し年間賞金王に輝く。2007年にもKEIRINグランプリ07‘を優勝し、2度目の賞金王に輝くなど、競輪業界を代表する選手として活躍し続けている。 自転車競技ではナショナルチームのメンバーとして、アジア選手権・世界選手権で数々のタイトルを獲得し、2004年アテネオリンピック「チームスプリント」で銀メダルを獲得。2008年北京オリンピックも自転車競技「ケイリン」代表として出場。今でもアテネオリンピックの奇跡は競輪の歴史に燦然と名を刻んでいる。