2024/05/31 (金) 12:00 16
前橋競輪場で令和6年能登半島地震復興支援競輪の大阪・関西万博協賛「開設74周年記念 三山王冠争奪戦(GIII)」が6月1〜4日の日程で開催される。前橋ではGIの寬仁親王牌が開催されることが多いため、開設記念の開催は少ない。いわゆる“地元記念”を勝つチャンスは群馬の選手には多くない。
競輪は地元を立てる文化があるので、そこで“立てられる”選手かどうか、が重要だ。選手としての格といえる。その格のある選手になることが、その先にあるGI優勝のチャンスに直結する。地元記念を制することができた時、それは大きな一歩になる。
今回、その意味で一番大事なシリーズになるのが小林泰正(29歳・群馬=113期)だ。5月5日のいわき平ダービー(日本選手権競輪)の決勝の9人に入った。GI優勝を目指す戦いの中での地元記念。期待感と責任感は相当なものになる。
泰正の良さは地脚だけではない。その時その時を考え、競輪ではどうしたらいいか、を見据えられるところにもある(空回りもするが…)。自分で考え、主張していく。人生の基本かもしれないが、それを貫いていくことは難しくもある。
折れることなく挑み続けられる根性も必要。今回は出走はないが師匠で叔父の小林潤二(51歳・群馬=75期)はかつて「ローラーに乗ってろ」と先輩から指示を受け、ローラーに乗っていた。先輩はその指示をしたことを忘れたようで、ずっと乗っていても「降りろ」と言いに来なかったそうだ。
一日中ローラーに乗っていたところ、帰ってきて「なんだお前ずっと乗ってたのか」と…。そんな愚直さもまた競輪には必要。泰正の体に流れている血は、やはり執拗なまでに流れ続ける。その流れの中での地元記念で、揃った関東勢の中で主役でありうることを、見せつけたい。
新田祐大(38歳・福島=90期)が2月岐阜競輪の「全日本選抜競輪(GI)」での先頭誘導員早期追い抜きの失格ペナルティから復帰する。高知の全プロ競技大会の1キロメートルタイムトライアルを走り、その元気な姿は明らか。
何度も書いているが、過酷なペナルティである。特に新田のファンからすれば、その走りを見られないという罰はきつい。そんな時間をファンに過ごさせてしまったからこそ、新田のこれからは今まで以上の責任を負う。
トレーニングは十分のはず。グランドスラムを達成した地で、新田らしい躍動をファンに届ける。今回は、4日間、両脚が爆発する。佐藤慎太郎(47歳・福島=90期)とのタッグもまた興味津々。世界と戦い続けた深谷知広(34歳・静岡=96期)とのバトルも、今回の見どころの一つになる。
来期のS級を決められていない片折亮太(36歳・埼玉=92期)と高橋昇平(34歳・埼玉=99期)は、S級昇格を決めている安彦統賀(25歳・埼玉=121期)に任せての戦いになりそう。埼玉結束で果実をもぎ取れるか。
近畿の2人、安藤直希(26歳・京都=117期)と末広快理(25歳・兵庫=121期)も来期はA級。並ぶのか、単騎になるのか…が気になるところで、その意識や走りを見て、これからについても感じ取るものが生まれる。
チャンスは少ない短走路。シリーズにおいても、3着以内でS級へ特別昇級というレインボーファイナルにしても、激しい戦いになりそうだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。