2021/05/27 (木) 18:00 13
全国300万人の慎太郎ファン、そして多くのnetkeirin読者の皆さん、オレのコラムを読んでくれて光栄だよ。連載4回目の今回は「京王閣ダービー」と「函館記念」を振り返りながら、最近の心境なども書こうと思う。
オレの京王閣ダービーは決勝3着で幕切れとなった。帰って何度もVTRを見たけど、優勝した松浦がとにかく素晴らしかった。内からオレ、外から郡司が来ているあの状況で、まず外張ってオレの前に誰もいない状態を作り、もろに風を浴びさせる。最後にはグイッと肘を引っかける。
あの決勝を冷静に分析すると松浦が断トツだった。前を任せた郡司も凄くて、後ろで「たいしたもんだな」と思っていた。あの微差、微差で勝てないのは、今までやってきたことの差が出たということ。今の自分の実力だと受け止めている。あのメンバーの中で、あそこまでの際どい勝負ができたことは良かったのかもしれない。でも、ただただ悔しいって気持ちが大きかった。
さて、話は変わって函館記念。初日は高橋晋也と守澤太志と一緒だった。守澤は自分と同じSSだし、格が一緒で守澤の方が点数を持っているから「番手回っていいよ」と声をかけた。オレは守澤を信頼しているから、いつでも後ろを回る準備はできている。守澤から『いいです、回れません』という返事を受け、あの並びになった。だけど、周りからは『どうせ慎太郎が譲らなかったんだろう』と見えたかもしれない。
オレの中で北日本はひとつの県という感じでずっとやってきているから、守澤との前後は固定せず、そのときそのときで臨機応変に決めていく。ラインの中でもめたりするのは無駄な体力を使うことになるしね。昔いろいろあったし(笑)。平原だったり郡司だったり岩本、松浦もそうだけど、超一流と呼ばれる選手は地区とか関係なく全力で仕掛けてくれる。これは本当にありがたいよね。『この人ちゃんと仕事してるな、競輪してるな』と思ってもらえるように日頃から頑張らないといけない。その積み重ねが競輪選手にとって大事なんじゃないかな。ラインとしての仕事もせずに点数だけ持っていても、前も頑張ってくれないだろうし、後を固める選手も納得できないよね。
今開催のノブは連日「後ろが地元勢だから!」という気持ちのこもった素晴らしいレースをしてくれた。昔ながらの人情溢れる競輪が見られて感激した。だからこそあの準決勝は何としてもノブを3着に残すのがオレの仕事。何とかしたかった…。ノブに申し訳なかったし、悔しかった。
決勝は不利な位置から2着という結果だった。あの厳しい展開で2着、最後まで諦めないという姿勢は見せられたんじゃないかな。並びに関してはオレが前でもよかったけど、普通に考えて守澤の方が動けるし、任せるのが自然だった。
函館4日間を振り返ると、ダービーが終わってすぐにしては悪くなかったし、だんだん元の状態に戻りつつあるという感覚も得た。
これからの時代は自力選手ばかりになって追い込み選手はだんだんいなくなっていくはず…。だけど、オレは「こういう戦法も過去にあったんだぞ」ってことを魅せたいと思っている。そういう走りを追い求めていく。
日々、「自分の限界はどこなのかな」と自問自答を繰り返しながらやっている。選手によっては「GIを獲るって気持ちがなくなればそこが限界」と線引きするかもしれないし、「年収が3000万から2000万に下がったら解説者の道へ」なんて考えるかもしれない(笑)。オレはこの先どうなっていくんだろうって、オレ自身楽しみにしている。
最近、妻が本をプレゼントしてくれたんだけど、キングカズの『やめないよ』って本だったんだよね。オレがインタビューで「選手やめて解説者になる」って言っていたのを見て心配したのかもしれないし、知らず知らずのうちにやめたいオーラが出ていたのかもしれない。
『競輪しているアナタが一番格好いいわよ』って言われているような気がして、まだ頑張んなきゃなって、グっと気持ちが引き締まった。とりあえず今言えることは、オレはまだ解説者にはならない、競輪一本でやっていくということ。
これを書いているのが、前橋ナイターGIIIが終了したところなんだけど、最終日10Rで山崎と成田と友和が連係していた。山崎と成田と友和と言えば、タイトルをたらい回しにするんじゃないかと思えるくらい個々の力が高かった。
山崎と友和がタイトルたらい回し作戦に打って出ていれば、今の松浦と清水の関係性以上になっていたのかもしれない。当時オレは皆がタイトルを獲る姿を羨ましく感じていたし、自分ももっと強くなってタイトル争いに加わりたいと思った。
今回の番組を見て当時のもどかしい気持ちや悔しかった事なんかを一気に思い出して、勝手にモチベーションを上げてる。今後また当時のように「自分達の中の誰かがタイトルを獲る、優勝争いをするのが当たり前」のような雰囲気が、北日本の中に生まれてくることを切に願う。
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界の第一線で活躍し続けている。2019年、立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現で常にファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。麻雀とラーメンをこよなく愛する筋肉界隈のナイスミドルであり、本人の決め台詞「限界?気のせいだよ!」の言葉の意味そのままに自身の志した競輪道を突き進む。
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