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「競輪という大河ドラマを全12話で描くには…」リンカイ!アニメPが語る制作の裏側と苦悩 登場キャラクターは「現実の選手からも影響を受けてます」/プロデューサー・鵜飼恵輔氏インタビュー

2024/04/25 (木) 15:00 5

4月9日から放送が始まった、女子競輪を題材としたアニメ『リンカイ!』。同作の企画・プロデュースを務める鵜飼恵輔氏にインタビューした。競輪を題材にすると決めたきっかけや、競輪の魅力をアニメでどのように表現していくかなど、制作の裏側に迫る (企画・編集:netkeirin伊藤千裕 撮影:飯岡拓也)。

鵜飼恵輔氏(撮影:飯岡拓也)

 ゲームの企画・原作・プロデュースを経て、アニメの領域まで活動の幅を広げてきた鵜飼恵輔氏。興行収入15億円を超え、応援上映も話題となった映画『プロメア』の仕掛け人でもある。そんな鵜飼氏が競輪を題材にアニメを作ろうと思ったきっかけはいったいなんだったのか。

***

ーー女子競輪が題材のアニメ『リンカイ!』はどのように始まったのでしょうか。

 はじめは漠然と、何か新しいアニメの企画をやりたいと考えていました。しかし僕は雇われのサラリーマンの身ですから、ただやりたいという気持ちだけではやらせてもらえません。そこで、アニメファンの需要を満たしつつ、会社の需要も満たせる題材がないか探していたんです。

 そんな時にMIXIが競輪事業に力を入れ始め、チャリロトさんやネットドリーマーズさんがグループ企業になりました。元々スポーツ全般の観戦が好きで、特にデータを駆使して楽しむような競技が好きだったので、競輪とは相性抜群。仕事を理由にスポーツに関われるなんてラッキー! と、リサーチを始めました。

 それまで競輪は男子のGIを見るぐらいでそれほど詳しくはなかったのですが、調べていくうちに、レース自体の面白さはもちろんですが、バックグラウンド……選手の人柄や選手同士の関係性、そこに至るまでのストーリーが頭に入っていると格段に面白くなると気がつきました。これまでの経験から、アニメファンの方々は、自分も含め、この“バックグラウンド”、設定と物語・ストーリーを楽しむ方たちだと思っていたので「これは刺さるぞ!」と確信しました。

ーー選手同士の関係性なら、“ライン”のある男子競輪の方が題材として向いているように思います。男子競輪を扱うことも考えましたか。

 先の“サラリーマン”発言に通ずるのですが、やはりプロジェクトには、予算や期間に縛りがあります。作る側の立場の人間としては、それを逃げ道にしてはいけないのですが、アニメの1クールである12話で、男子競輪ならではのラインの魅力を、競輪を知らない方に伝わるように描き切るのは難しい、ラインの概念をはじめ、競走の細かいルールを説明した上でさらに競輪に興味を持ってもらえるような内容にするには12話では足りないと判断しました。

 もちろん女子競輪が簡単というわけではありませんが、個々の能力と駆け引きを中心にしてレースが成り立つため、“説明”が少なくて済むのは大きかった。競輪業界でも、初心者へのアプローチとして、ガールズケイリンが位置づけられていると思います。専門家たちがそうしているのだから、その流れに従うのが正しいと思い、女子競輪をアニメの題材に選ぶことにしました。

(撮影:飯岡拓也)

 ワッキー(脇本雄太選手)のような圧倒的な脚があれば後ろからドンとかましたらいいですけど、そうではない僕はそういう戦法を取るわけにもいかないので(笑)。ポジションをちゃんと主張して、こう来たらこうする……と戦略を立ててやっていくしかないですからね。競艇を描いた偉大な名作『モンキーターン』のように、4クール1年で作る予算があればぜひ男子競輪のアニメにも挑戦してみたいですね! その場合、『ギャンブルレーサー」や『Odds」といった、これまた偉大なマンガに負けないものを作らないといけないので、それはそれで厳しい戦いになりそうですが(笑)。

◆競輪選手の“多様性”は他の題材にない魅力

ーー鵜飼さんは、競輪のどんなところに魅力を感じましたか。

 競輪は、season75ぐらい続いている大河ドラマだと思っています。1年間のレースのプログラムがあって、その結果でKEIRINグランプリに出走する選手が決まり、その年の王者が決まる。そしてまた、次の年に向けてプログラムが組まれ、新人がデビューし、代謝になる選手もいる……歴史のように永遠に続いていく。1年の間に選手同士の力関係やライン構成などが変化して、レースの勝敗が積み重なりストーリーが紡がれていく……そこが競輪の魅力だと思います。

 もう一つは、色々な目標や夢、目指すものをもった選手たちが、同じ舞台で戦っているというところですね。スポーツ選手といえば、オリンピックで金メダルを獲る、のように頂点を目指すというイメージがありますが、競輪選手の目的や価値観にはそれだけではない多様性があります。もちろんレースを走るときは1着を目指していると思いますが、ビッグレース出場や勝利を狙う選手がいれば、現役を長く続けるために頑張る選手、賭けてくれるファンに恩返したいという思いを一番大切にしている選手もいる……それぞれに価値観があって、観る側は選手たちの様々な想いに寄り添って楽しめるというのは、競輪の魅力だと思います。

(撮影:飯岡拓也)

 メジャーリーガーの大谷翔平選手のように、若い頃から夢を決めてまっすぐそれに向けて努力する人は、やっぱり眩しくてカッコいい。でも、大谷選手のような生き方を誰もが出来るわけじゃない、そうではない生き方も同じように肯定されるべきだと思うんです。多くの人はそれぞれの舞台で、それぞれ全力を尽くして生きている。競輪ではこういった価値観がまさに体現されている。多様性が重視されるこの時代にこそ相応しい題材なんじゃないかなと思います。様々な年齢で、様々な個性、能力を持った選手たちが、自分の力だけで戦うというのは、アニメや漫画、フィクションの世界でもなかなかないものだと思います。

◆競輪は“原作が強すぎる”

ーーアニメ『リンカイ!』には、先ほどお話しいただいた競輪の魅力がたっぷり詰め込まれていることと思います。中でも「これは競輪ファンが唸るぞ!」と確信している内容はありますか。

 既に熱心な競輪ファンのみなさんからたくさんの反響をいただいております。そんなみなさんからいただいた“濃い”要望に、応えられているか、期待半分、不安半分というところです。

 極論、今放送している養成所での物語は、別の公営競技や学生の部活を題材にしても、描こうと思えば描けるものだと思います。ですが、せっかく「競輪」を題材にしているのだから、“競輪でなければ描けない”ことを描かなければやる意味がないと思ってます! ですので、ぜひ最終話まで見届けていただけたら嬉しいです。本当にお願いします!

ーー放送前からチェックしている競輪ファンの方がたくさんいらっしゃったんですね。アニメに対しては、どんな声が多かったでしょうか。

 みなさんすごく優しいんです。“競輪を知ってもらういい機会だから”と、きっとツッコみたいところも多々あると思うんですが、あえて言わないでいてくれている、多少のことは目をつぶってくださっているのを感じます。ガールズケイリンのレースのような優しい声援が多くてとてもありがたいです。

 とはいえ、それに甘えてばかりではダメなんですが(汗)。みなさんの優しさを裏切る形には絶対にしたくないので、競輪ファンの方にも納得いただけるものをお届けできるよう頑張ります!

ーーまだ放送が始まったばかりではありますが、今後鵜飼さんが『リンカイ!』を通して叶えたい企画や構想などを教えてください。

 アニメ『リンカイ!』には、物語のメインとなるキャラたち以外にもたくさんのキ ャラクターが登場します。それらのキャラクターたちも文字としての“設定”だけが作られたわけでなく、僕や白根さん(シリーズ構成)の頭の中にはちゃんと競輪選手を目指した背景、ドラマ、ライバル関係などがあるので……それをどこかでお見せしたいですね。例えば、広島・防府・玉野のキャラクターは仲良し3人組なんですが、どうやって知り合って、どういう風に仲良くなって……などなど。

 作る側の人間としては、全12話で全てを描き切るのがもちろん理想なんですが、現実的にはそうもいかず、取捨選択して一番伝えたいところだけに絞って描いています。今回はなくなく諦めた内容も山のようにあるので、どこかで描く機会があればいいなと思っています。

ーー広島・防府・玉野のキャラクターの関係性……競輪ファンの方なら、なんとなく予想がついていそうですが、やはり現実の選手からの影響は受けているのでしょうか。

 競輪って本当に“原作が強すぎる”。制作中もシナリオライター陣とよく話題になったんですが、リサーチすればすれるほど、現実の選手のストーリーが面白すぎるんです。実際の選手に負けないキャラクターや物語を作ろうと頑張ったつもりですが、やはり“原作の強さ”はスゴいと痛感しています。

『リンカイ!』のキャラクターたちも、実際のいろいろな選手、ガールズだけでなく、男子選手からも、意識的だったり無意識だったりの影響を受けて出来上がっていて、Xでの反響を見ていると、そういうところに気づいてもらえるのはすごく嬉しいですね。

 もし『リンカイ!』のキャラクターをきっかけとして競輪に興味を持った方がいたら、実際の競輪選手の情報にも触れて見てみてほしいです。きっと“推し”選手が見つかると思います。そしてぜひ、実際のレースを競輪場に見に行って欲しいです!

(撮影:飯岡拓也)

アニメ『リンカイ!』

■放送情報
TOKYO MX 4月9日(火)より 毎週火曜日23:30〜
(TOKYO MX リピート放送 毎週金曜日18:30〜)
BSフジ 4月9日(火)より 毎週火曜日24:30〜
SPEEDチャンネル 5月4日(土)より 毎週土曜日11:30〜

■配信日時
U-NEXT 4月9日(火)より 毎週火曜日23:30〜
アニメ放題 4月9日(火)より 毎週火曜日23:30〜
4月13日(土)より 毎週土曜日00:00〜
ABEMA
dアニメストア
DMM TV
FOD
Hulu
J:COM STREAM見放題
Lemino
milplus見放題パックプライム
Prime Video
TELASA
バンダイチャンネル
ニコニコチャンネル

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netkeirin編集部

女子競輪を題材とし全国の競輪場のキャラクターを制作し、競輪界を盛り上げていくことを目的に始動したリンカイ!Project。漫画化・アニメ化などのメディアミックスを通して盛り上がる『リンカイ!』のnetkeirinスペシャルコンテンツをまとめました。

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