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【高木佑真インタビュー】脱スランプのきっかけは高木隆弘氏「練習が充実、毎日楽しい!」養成所時代から現在まで振り返る【リンカイ!コラボインタビューvol.1】

2024/05/29 (水) 12:00 25

アニメ『リンカイ!』に出演する声優の日向未南が、アニメに登場するキャラクターと境遇が似ている方へインタビューするコラボ企画。第1弾は116期の高木佑真選手。才能溢れる同期たちと切磋琢磨し、在所成績6位で卒業。デビュー後1年半ごろからスランプに陥るも、ガールズグランプリ女王・高木真備さんの師匠でもある高木隆弘氏に師事して……。競輪選手を目指そうと思ったきっかけから、養成所での生活、スランプを抜け出せない苦しみなど、様々な心境を伺いました。こちらの記事の内容は、日向未南さんによる漫画版も公開されます(企画・構成:netkeirin編集部 聞き手:日向未南 撮影:飯岡拓也)。

ーー学生時代はバスケやサッカーに打ち込んでいた高木選手が競輪選手を目指したきっかけを教えてください。

 高校3年生の夏休みぐらいまで進路が決まっていなくて。そんなとき競輪記者をしている父の職場の社長の息子さんから「ガールズケイリン興味ない?」と声をかけられました。両親がロードレーサーにハマっていて、わたしも一緒にクロスバイクに乗っているという話の流れだったと思います。

 そこで初めてガールズケイリンの存在を知りました。レースの動画を見てかっこいい! と思い、平塚競輪場へ行きました。観客席とバンクの距離が近くて、すごい迫力で圧巻されて。先頭で風を切って勝った奥井迪選手に「自分の力だけでこんなスピードが出せるんだ」と感動し、私もやってみたいと思いました。

 元々大好きなスポーツに関わる仕事がしたいと思っていたんですが、それだけでご飯を食べていけるのは、一握りの上位選手だけの印象です。でも、ガールズケイリンならできると教えてもらって。競技だけでご飯を食べていけるというのはすごく魅力的で、大きな決め手になりました。

 私がガールズケイリンをやりたいと思った時には、その年の願書の締切は過ぎていて。面倒を見ていただいた方の勧めもあり、残りの高校生活をエンジョイして、卒業後から本格的に練習を始めることにしました。高校を卒業した3月から9月の試験まで半年間、自転車漬けの毎日でした。

ーー自転車漬けの日々を送り、その年の試験で合格して養成所に入学しました。試験に向けた練習と養成所生活と、どちらがしんどかったですか。

 養成所に入るまでは、試験の合格ラインまで単純にタイムを縮めればよかったんです。タイムが縮んでいれば、練習の成果を実感できました。でも、養成所には同期がいて、競走で負けたくないという気持ちが湧いてくる。競走になると、走り方次第では大差になっちゃったりするので。タイムが良いからといって勝てるわけじゃないし、悔しさを練習にぶつけてもなかなか結果も出ず……競走は自分の実力がそのまま結果に反映されるわけじゃないっていうのがしんどかったですね。

兄がデザインを手がけたジャージ。右下には愛犬マロンの写真が入っている。

 周りから負けず嫌いだねってすごく言われます。自分ではあまり出していないつもりだけど、実践の場でスイッチが入るのかもしれないです。

ーーそんな負けず嫌いな高木選手が特に意識していた同期は誰でしたか?

 T教場(滝澤正光校長選抜クラス)で一緒に練習していた南円佳です。適正組でポテンシャルが高くて、校長先生がすごく期待しているのがわかっていたから、円佳には負けたくない! と思って練習していました。

 私は奥井さんのレースを見て選手を目指したこともあり、奥井さんのような先行選手に憧れていました。持久走が得意だったし、養成所のタイムトライアルで短距離は全然だめでも長い距離では1番が取れたので、長い距離踏めるじゃん、と思って。

 在校成績は6番目だったんですが、成績上位者の壁はとても高いと感じていました。誰よりも自転車に乗ろうと自主練とかもしていたけど、それでも乗り越えられなくて。だから、まずは先行で決勝に乗ることを目標にしていました。

 トーナメントで優勝するのは捲りがうまい子たちだったけれど、それでも先行を貫けたのは、円佳の存在があったからだと思っています。同じ戦法の円佳がいたから、一切迷いがなく自分のモチベーションを保てました。

 卒業記念レースは先行で決勝に乗れて、残り1周半から円佳との踏み合いになりました。最終的に突っ張られちゃったのですが、自分が出せるものは出し切れたと思います。

ーー高木選手がデビューされた当時はルーキーシリーズがなく、いきなり先輩選手との対決でしたね。

 同期でも越えられない壁があったから、トップレベルの方はもっと上の方なんだろうなと覚悟はしていました。

 実際にレースをしてみると、捲りや追い込み選手がたくさんいて。強い選手は大体捲りとかキレがすごくて。車間切られるだけで前が遠くに感じたり、後見して(選手と)目が合ってひるんじゃったり、合わせられてしまいそうで仕掛けられなかったり……3コーナーまで残ることすら難しい競走ばかりでした。養成所の時はルールが厳しくて、みんなが精一杯走る泥臭いレースだったから勝てることもあったけれど、あの時みたいにただ頑張ればいいわけじゃないんだって思いました。

 ただ、競走は楽しみでもあったんです。自分がやってきたことがどれだけ通用するのか、先輩たちとの力の差を知る意味でも。グランプリを獲っている方と走らせていただけるなんて、いい経験させてもらえるなって。もしかしたらいきなり大物を倒せる! みたいな事態もあるかもしれないし。風を切って逃げ切ってやろうって思いながら走ってました。

ーープロデビュー後の選手生活は順調でしたか、それとも苦戦しましたか?

 デビューして1年半ごろから、先行してもバックが取れないレースが続いた時期がありました。自分が勝てる戦法は先行だと思っていたけど、やりたい戦法にこだわって勝ちを諦めているんじゃないか。自分が勝つために走っているのかどうかわからなくなっちゃって。

 養成所の頃は“賭けの対象”じゃないから自分のペースで力をつけていけばいいですけど、プロになったらお客さんが賭けてくれるからそういうわけにはいかない。ガールズケイリンのお客さんって本気で応援してくれる方がすごく多いので、「自分は逃げ切れる」って本気で思えないことが申し訳なかった。

 それで、ちょっと自在に転向したんです。でも「最後だけ、直線で伸びる競走をして1着を獲って、喜んでくれる人はいるのかな」って思ったり、自在で大きな着を取ったときに「やっぱり自力でいけばよかった」と強く感じたりして、また自力に戻りました。それから調子が上がってきて、練習もうまくいって、自信がついたのか成績も良くなり、2年目に完全優勝できました。

◆高木隆弘選手との出会い

ーー2023年から、ガールズグランプリを優勝した元選手の高木真備さんと同じ、高木隆弘選手に師事するようになったと聞いています。どういった経緯で練習を見てもらうことになったんですか。

 ホームバンクの川崎競輪場が補修工事で使えなくなって平塚競輪場にお邪魔すると、そこに高木さんがいらっしゃいました。高木さんは以前から、開催が一緒になった時にアドバイスをくださっていたんです。

 その頃は、ルーティンのように毎日練習をこなすだけになっていました。成績が上がっていれば自分を信じて練習を続けられるけど、このままでいいのか悩んでいて。自分の中で何か変えたい、いろんなことをやっていきたいと思っていた時に、高木さんから声を掛けてくださり、二つ返事でお願いしてバイクを引っ張ってもらいました。その後、「明日も来るからやるか」と聞いてくださって、今に至ります。

 高木さんのメニューは練習量が多く根性論なタイプと知っていたのですが、わたしはそういうやり方に食らいついていくのが得意だから相性がいいのかなと思っていました。実際に練習を見ていただくようになり、日に日に成長していると実感しています!

ーー成長を実感できるのは嬉しいですね。

 高木さんのアドバイスはすごく的確なんです!

 これまではレースの敗因を気持ちの弱さだと片づけていました。でも高木さんは気持ちの問題だけじゃないと、「良いタイミングで仕掛けられなかったのはそれまでに脚を使ってしまっていたからで、無駄な脚を使わないようにするには……」みたいに、わかりやすく教えてくれます。

 それまではトップスピードが足りないとか、スピードの持久力が足りないとか、大まかな原因はわかるけど、何を変えたら良くなっていくのかまで考えられてなかった。でも、高木さんに師事するようになって解像度があがりました。次の課題が具体的に見えてくるから練習も充実して、毎日がすごく楽しくなりました。

 高木さんは私に「ビッグレース獲れるよ」って言うんですよ。ちょっと頑張れば絶対獲れるからって。デビューしたての時はグランプリ絶対獲る! って本気で思ってたんですけど、途中から「自分なんかがグランプリなんて言えないな」と思っちゃって。でも、論理的な高木さんがこうやって言ってくださるから、自分も信じられる。一緒に練習していただいてなおさら強く思えるようになりました。

ーーこれからの高木選手の成長が楽しみです!

 今は自転車に乗るときに出てしまうクセを矯正しています。レースで伸びが悪いなと思った時は、大体このクセが出てしまっているんです。原因はわかっているから、身体が追い付いてくるよう慣れていくだけ。早くステップアップした姿を見せられるように頑張ります!

●Credit
取材協力:リンカイ!Project
撮影:飯岡拓也
Hair & Make-up:堀川千佳
Direction:netkeirin 伊藤千裕

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