2024/04/19 (金) 18:00 42
全国300万人の慎太郎ファン、netkeirin読者のみなさん、はじまりの季節をいかがお過ごしでしょうか、佐藤慎太郎です。今回のコラムは川崎記念、高知記念を振り返りつつ、地元いわき平で開催するGI・日本選手権競輪への意気込みなどを書いていく。
まずは川崎記念を振り返る。シリーズを通して、徐々に状態を上げている実感があった。すでに前回のコラムでも上向きの調子を伝えていたが、引き続き体のデキも上昇基調で、戦える感覚を持って走れている。やっぱり気候が陽気だと感じがいい。
だが、冷静に周りを見渡してみると、自分よりもさらに仕上がっている選手もいたと思うし、何より自力選手たちがまたひとつ上のランクに進化を遂げているように感じた。タイムもすごいタイムが出ているし、スパートを仕掛けるタイミングも早く、もがき切る距離は長い。
嘉永泰斗や北井佑季の走りを見て、本当に競輪が進化していることを感じた。ただ、そんな流れに身を置きながらも、オレ自身も戦い方に糸口を見つけていて、決勝へ勝ち上がる中で手応えを感じることができた。今の時代の競輪に順応すべく、手探りの試行錯誤を続けてきたが、色々なことが噛み合ってきていると思う。
しかし、決勝。言葉での表現は少々難しいが、「オレは自分の力を過小評価したのかもしれない」という場面があった。進化する自力選手、変わるレーススタイルに対して「ブロックの在り方」が変わるのは当然だが、最終3コーナーで嘉永が来た時に、止めに行く動作にも入れているし、角度も良く当たっていけたのだが“佐藤慎太郎らしいブロック”は繰り出せなかった。もっと大きなブロックができたら結果は変わっていたかもしれない。
タテ勝負の競輪に意識を置いている分、止めるための間合いを取るのが難しかったわけだが、変わる競輪、進化する競輪の中で、自分が培ってきた“ヨコ”の動きを信じ切れていなかったのかもしれない。川崎記念の決勝を走り終えてレースを分析してみて、それが唯一の反省点。
レースのスピードが上がり、航続距離が伸びればブロックの間合いや方法論も変わっていく。手探りだが一戦一戦にヒントがある。タテが基本のレースの中にも、自分が培ってきたブロックを信じるべきシーンもあるのだと学んだ。
そんな発見をした直後に高知記念へ参戦してきたわけだが、川崎での気づきを実践するような場面はなく、決勝は完全にタテ勝負だったね。ああなると初手の位置から重要になる。勝負所ではもう少し前のポジションにいることができれば、勝負になっていたようにも思う。脚的には状態も良く、最後まで踏み切ることはできた。
シリーズ全体を振り返れば、選手それぞれがレースを見極めながら対策を練っている雰囲気があった。『退避線から2周突っ張るレース』が確立されて1年くらいの状況の中、みんながみんな対策を講じるべく躍起になっているのだから、まだまだ競輪は変化していきそうだ。
また、オレにとって収穫もあって、川崎と高知では響平と連係する機会も多く、実戦を通じた意思疎通も積めたし、連係力をアップデートしていけてる実感がある。「昔のレースはこうだった」なんて口にしている余裕も、ましてや懐かしがってるヒマもなく、変化し続ける競輪に順応して勝機を見出さなくてはならない。
「前を取って誰も出させずに誰にも差させず勝ち切る走り」というのは先行選手の理想の姿だと思うし、すべてを1人で支配してしまう強さがある。とてもかっこいいし、先行選手はみんなそこを目指していく流れになり、追い込み選手にとっては厳しいレースも生まれる。
だからこそ、できる限りの対策を積み上げたいと思う。1年前に新しい追い込み屋にならなくてはと痛感してから、ずっと試行錯誤してきたが、「もう通用しなくなってるな」という気持ちよりも「まだいける」という気持ちの方が勝っている。川崎、高知と走り終えて、地元のGIを迎えるにあたり、この気持ちを感じていることを大事にしたい。
いよいよ地元開催の日本選手権競輪がはじまる。ダービーと言えば自分の弱さを痛感した昨年の決勝3着もあるし、地元と言えば今年の記念競輪での“屈辱のハコ4”だってある。それらを振り返れば気持ちが入らないはずもなく、ストイックにトレーニングをやり、最高に仕上げてシリーズに入るつもりだ。ダービーまでの一瞬一瞬を懸命に過ごし、現場に向かう。狙うは頂点ひとつ。
ただし、現場に入ったら楽しもう! と考えている。今は「楽しみたい欲求」が本当に強い。次に地元でのGI戦がいつあるのか。しかも最高峰の日本選手権競輪が。自分がS級S班で出場できるいわき平の日本選手権競輪が。そんな最高の舞台が次にいつあるかはわからない。だから本気で楽しみたい。「47歳、地元S級S班として日本選手権競輪に出場しています」と誇っている姿を地元のお客さんたちに見てもらいたい。
この書き方だと「バチバチに獲りに行くのか、ただ楽しみたいのか、どっちなんだよ慎太郎」と思われるかな。完全に両方なんだよ。「限界?気のせいだよ!」と「いや、さすがに限界だろ…」の押し問答をもう何年も絶えずやってきている。それらをすべて超えてきた自負もある。オレは両方の気持ちを持って“ここにいることが素晴らしい”と自分に対して誇りを感じながら地元に立つ。両方の気持ちを最高のバランスで。
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。