2024/04/07 (日) 12:00 36
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
川崎競輪「桜花賞・海老澤清杯(GIII)」、決勝メンバーが出そろいました。ライン構成は以下の通りです。
①郡司浩平(神奈川・99期)ー⑥佐々木眞也(神奈川・117期)
②嘉永泰斗(熊本・113期)ー⑧松岡貴久(熊本・90期)
③新山響平(青森・107期)ー⑨佐藤慎太郎(福島・78期)
⑤松本貴治(愛媛・111期)
⑦古性優作(大阪・100期)ー④山田久徳(京都・93期)
北井佑季(神奈川・119期)や眞杉匠(栃木・113期)らの脱落は残念ですが、レベルの高い争いが見られそうです。
地元5連覇が懸かる①郡司は、準決勝で北井と連係するものの、息が合わず連結を外してしまいました。郡司は、初日特選のことがあるので(北井は新山と先行争いをするかと思いきや捲って1着)、突っ張る、または引くかの判断が難しかったのだと思います。「あ、突っ張った…」と思ったら、大槻寛徳(宮城・85期)に入られてしまったのでしょう。追い上げるにもスピードが上がってしまい、その機会を失い、後味悪い1着になりました。
番手を回る時の郡司は、北井や松井宏佑(神奈川・113期)の成長もあり役目が変わってきました。以前は、格下の選手が格上の選手を引っ張る構図だったのが、両者の格も上がり共に勝ち上がる存在になってきたからです。
これは、郡司に限らずライン戦の主役を担う選手は越えなければならない壁です。前を走る選手が強ければ強いほど狙われる位置でもあるし、弱者が強者の前を回るラインとは意味が変わります。次のステップとして、さらに強固なヨコの捌きが必要なステージに入ったと言えるでしょう。決勝戦は自力なので、自分が優勝を狙う走りをすれば良いと思います。
しかし、⑦古性との位置争いをどう考えているかですね。1番優勝に近い位置は、③新山の3番手です。ですが、ここは今節動きが良くない⑦古性も「組み立てでカバーする」とコメントしていて、バッティングする可能性があります。優勝を義務付けられた郡司にとっては並走になりたくないところですね。前受けはリスクがある(突っ張らない限り打鐘で8番手になる)のでしたくない。
前中団だと新山の3番手は取りづらいと考えると、連日ホームカマシで結果が出ている②嘉永が前、前中団が⑦古性、後中団が①郡司、後攻めが③新山だと考えました。
S.②⑧ ⑦④ ①⑥ ③⑨ ⑤
ここから③新山の動きに合わせて①郡司が前に出る。③新山が先行して3、4番手から後ろの動きに合わせて仕掛けるのがベストですね。前中団を取ると⑦古性は③新山ラインの後ろは取りづらくなります。
←②⑧
H.③⑨ ⑤ ①⑥ ⑦④
←②⑧
←①⑥ ⑦④
B.③⑨ ⑤
1ー567ー5679
穴目は③新山だと思います。どの選手も③新山の先行を基準に作戦を組み立てるからです。近況の③新山は、初手の位置取りを考えて乱れたリズムを、もう一度原点に返って突っ張り先行で流れを引き寄せようと思える走りをしています。①郡司や⑦古性らが中団を取り合う構図になると、③新山優勝の可能性が出てくると思います。
3ー9517ー9517
地元優勝が懸かる①郡司はどのように組み立てるでしょう。頭をフルに使って位置取りを考え⑦古性との位置取りも辞さずと考えるのか、それとも展開を運に任せて脚力に賭けるレースをするのか。直前の武雄協賛記念競輪を、山田庸平が後者の理論で優勝しているだけに難しい選択になりそうです。(スピードチャンネル専属解説者)
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。