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【今年デビュー126期】競輪一族“4代目”高木萌那「プロになったらグランドスラムめざすだけ」/卒業記念インタビュー

アプリ限定 2024/03/15 (金) 18:00 16

今年デビューする第125回生(男子)と第126回生(女子)の卒業式が8日、伊豆市の日本競輪選手養成所で行われた。その卒業式前日、忙しいスケジュールの合間を縫って4名の候補生たちが取材に応じてくれた。3月12日〜15日の4日連続で公開する。卒業記念インタビューシリーズのラストを飾るのは高木萌那。わずか3か月の自転車経験で入所し、ゴールデンキャップを獲得したスペシャル逸材だ。現役選手の高木和仁(福岡・78期)が父、元選手の工藤元司郎が祖父、競輪キャスターの工藤わこが叔母という競輪家系。萌那は4代目としてガールズケイリンに乗り込む。(取材・構成 netkeirin編集部)

卒業記念レースは3位で表彰台、写真右が高木萌那候補生 (写真提供:公財JKA)

勝者に心からの「ありがとうございました」を伝えに

ーー卒業記念の初戦は見事な逃げ切り勝ちでした。

萌那 オープニングレースに選んでいただいたことに感謝の気持ちがありました。126回生のスタートの意味もありましたし、成績上位者として圧倒的な力を見せて、インパクトのある走りを示したいと考えて臨みました。卒業記念レースの中で一番よく走れた1本だったと思います。

ーー決勝は3着となり表彰台に上りました。レースはずっと外を踏まされる厳しい展開になりましたね。

萌那 はい。私はあまり緊張しないタイプなんですが、決勝はめちゃくちゃ緊張してしまって、体がガチガチに硬くなってしまいました。レースは頭の中で組み立てていたんですけど、体が動かないまま入ってしまって。集大成とは呼べないレースになってしまいました。

ーーゴール後、優勝した仲澤春香候補生に何か声をかけていませんでしたか?

萌那 全力を出し尽くして戦えば「どっちが勝ってもおかしくない」って状況で決勝を迎えられたと思います。負けてしまいましたが、仲澤候補生が優勝したことに心から「おめでとうございます」って伝えたくて。それを言いに行きました。仲澤候補生からは「こちらこそありがとう、頑張ったね」って言われてポンポン、としてくれました。

ーー真剣勝負をした選手同士の絆ですね。感動的です。

萌那 そう言ってもらえて嬉しいです。でも、決勝はもっとできたこともあります。たくさんの“たられば”があります(苦笑)。早く地元に帰って強くなるために練習したいです(笑)。

ーーシリーズを振り返っていかがでしたか?

萌那 全体を通して振り返ると「楽しかった」という気持ちが一番です。お客さんの前でホンモノの競輪場で走る機会はあまりないので、とても良い経験になりました。

126回生の“絶対女王”仲澤春香候補生との真剣勝負はこれからも続く(写真提供:公財JKA)

「できて当たり前」のギャップは苦しかった

ーーわずか3か月の自転車経験で入所し、たくさんの成長があったのではないでしょうか。

萌那 もう言い始めたらキリがないです(笑)。未経験入所なので、たくさんのことを学びました。最初はブレーキがない自転車なんて乗ったことがなくて、クリップバンドも締められないような状態からのスタートでした。そんな状態でしたから、走行スキルはもちろん向上しました。でも精神面でも成長できたと感じているので、成長したのは「全部です」って感じです(笑)。

ーーメンタルの部分での成長はどのような時に感じましたか?

萌那 記録会本番で感じることがありました。第1回、第2回、第3回と成績も一発ずつ伸びていたので、そういうときに気持ちが強くなっているような気がしました。

ーー高木候補生は学生時代に野球で全国優勝しています。それほどチーム戦に精通していて「チーム競技と個人競技」といった競技性の違いに戸惑うことはありませんでしたか?

萌那 戸惑うことはありませんでした。野球は個の集まりで、お互いに仲間の足りない部分を補い合える良さがあります。ですが、裏を返すと足を引っ張ってしまうこともあります。その両面を知っているので、ガールズケイリンの(個人で)思うように思い切りできるという点には逆に良い面を感じました。

ーー自転車未経験ながらゴールデンキャップを獲得するなどポテンシャルを見せつけました。ご自身では『自転車は合っている』と感じましたか?

萌那 結構いい感じで対応できているな、とは思いました。あと、自分は負けず嫌いなのですが、そういう気質はレースで競うことに向いていると思います。

ーー養成所生活の中で印象に残った言葉はありますか?

萌那 競走訓練のときに主担当の教官から「お前何やっているんだ!」と一喝されたことがあるんですが、それが本当に自分のためになりました。周りから「先行してみてはどうか」とアドバイスをもらっていたのですが、迷ったり悩んだりしてしまった時期があって。それで先行することから逃げてしまって、短い距離ばかり踏んでいたんです。

ーー教官は心境を見抜いていたということでしょうか?

萌那 はい、図星でした。それに一喝された後に「高木には期待をしているからこそ言っている。早めに思い切り仕掛けていく経験を積んだ方が、デビュー後に通用しやすい」と、その一喝の背景にあるものを教えてくれたんです。

もっと頑張らないといけないと気持ちが変わりましたし、言葉が心に響きました。

ーー養成所生活の思い出を挙げるとしたら、どんなエピソードが思い浮かびますか?

萌那 競走訓練で心が揺さぶられてしまった時期がありました。競走はタイムが良くても勝てないことがあるし、戦法に結果が左右されることも多いです。競走をして、うまくいかないときはキツかったです。自分は競輪家系なので、「できて当たり前」と期待をかけてもらうことがあります。でもうまくいかない時ほど「自分の見られ方」とのギャップが大きくて苦しかったです。

父・高木和仁は現役の競輪選手、「選手の娘だからできるだろう」の目には悩んだと語った(撮影:北山宏一)

ーー高木候補生は競輪家系「4代目」ですから、周囲から特別視されやすいですよね。

萌那 自転車って普通に乗れるのが当り前じゃないですか? でも競技用の自転車って本当に扱うのが難しくて(笑)。事前養成期間でもまったくタイムが出なくて、本当にヤバいと思いました。正直、事前養成期間で1回挫折しそうになったくらいなんです。

ーーどうやって乗り越えたんですか?

萌那 技能の候補生が入ってきた時に一緒に練習することで色々と吸収することができて、タイムが伸びて行ったんです。それは大きかったと思います。

ーー他の候補生から吸収して自分の血肉に変えていったのですね。

萌那 はい。上手い人のやり方を見て、どうすればいいのか理解することができたと思います。それは挫折しないで済んだ要因のひとつです。

ーーそこからメキメキと頭角を現していくことになったと思いますが、ライバル的な存在とは出会いましたか?

萌那 いいえ。あまり人を基準にしないようにしているので、ライバルは誰それと考えません。自分がライバルという感じです。誰か特定のライバルを作ってしまうと負けた時に「相手の調子がよかったんだ」みたいに言い訳できてしまうと思うんです。自分の責任が薄くなってしまうというか。それにキツい練習をキツいとわかってやるのは自分だし、自分がライバルだと思っている方が壁を越えて行ける感覚になれるんです。

ーーギャップに苦しんだ話がありましたが、競輪家系にくわえて養成所でも好成績をおさめたので、デビュー時の注目度も高いと思います。そこにプレッシャーを感じますか?

萌那 何もできない状況からの「4代目」っていうのはすごいプレッシャーだったんですけど、今は少しずつ成績を残してきているので、デビュー時に注目していただけるなら、それはありがたいことだと思えそうです。デビュー後に力をつけて、そこでも成績を残していけたら、今まで感じたプレッシャーはプラスにも働くと思います。期待と不安なら今は期待の方が大きいです。

ーー期待と不安、数値割合はどれくらいでしょうか?

萌那 期待が8で不安が2です。イイ感じだと思います(笑)。

ーー帰郷してお父さんに卒業の報告をするとき、胸を張って報告できそうですね。

萌那 最初から全部父にみてもらっていたので、ちゃんと報告できそうです。父と一緒にもがけるぐらいにはなったと思うので、次は父をぶっちぎるぐらいの脚をつけていこうと思って頑張ります(笑)。

目標は久留米の先輩・小林優香

小林優香(撮影:北山宏一)

ーー高木候補生の一番の強みはどのような部分になりますか?

萌那 トップスピードに入ってからの持続力です。トップスピードからの“タレ幅”が少ないので、そこを強みにしていけたらいいなと思っています。教官にも「シッティングに入ってからの加速は類を見ないレベルだぞ、自信を持っていい」と言われているので、そこは意識して自信を持って走りたいです。

ーーデビューするまでは久留米を拠点に練習をするのでしょうか?

萌那 久留米で練習します。練習グループには小林優香さんがいます。優香さんには養成所にいる間もアドバイスをもらったりしていたんです。プロの一流選手が候補生の自分に声をかけてくれて、そのことだけでモチベーションがあがりました。感謝していますし、久留米で練習をしてデビューに備えたいです。

ーー強化したいポイントはありますか?

萌那 瞬発的なダッシュ力です。「今のガールズケイリンはダッシュがないとやっていけない」と言われているので、そこを重点的に強化していきたいです。男子選手についていけたら絶対に女子に通用すると思うので、その意識でやっていけたらと思います。

ーー目標にしている選手はいますか? やはり小林優香選手ですか?

萌那 はい。もともと優香さんの名前は競輪をやる前から知っていて。「優香さん一強」みたいな時代があったと思うんですけど、当時の動画を拝見しても、先行で他を圧倒するような走りには「すごい!」の一言しか出てこなくて。今も捲りや追い込みでも力を発揮されていますし、いずれいつか優香さんみたいになれたらいいなと思います。

グランドスラムを達成したい! 126回生で独占したい!

目覚ましい勢いで進化しているガールズケイリンのステージが待っている(撮影:北山宏一)

ーー高木候補生はデビュー後にどんな目標を達成したいですか?

萌那 ガールズグランプリの優勝はひとつ思ってるんですけど、一番の目標はグランドスラムを達成することです。

ーーグランドスラムですか。とても大きな目標ですね。

萌那 はい。プロになれるのだから挑戦できる資格がある以上は一番大きな目標を掲げたいです。強くなりたいと思うのはプロならみんなそうだと思います。大きな目標を掲げて、そこに向かって突っ走ることがファンのみなさんに対して、自分ができることだと思います。

ーー126回生は過去最多のゴールデンキャップを獲得するなどポテンシャルの高さに注目が集まっています。デビューを待っているファンに向けてメッセージをお願いします。

萌那 126回生はとても個性が強い人が揃っています。それに第2回記録会の400mでも養成所記録をみんなで更新することができました。全体的に競走バリエーションも豊富で誰がどう動いてもおかしくないような感じで面白いと思います。全員が全員負けず嫌いですし、みんなかわいいです!「126回生は期待値が高い」と言ってくれるみなさんの期待に、みんな絶対に応えられると思うので、ぜひ温かい声援をいただけたらなと思います。

ーー高木候補生の“126期愛”が炸裂しているメッセージですね。

萌那 「この環境いいなあ」って思いながら生活していました。みんながみんな「強くなる」という気持ちで時間を使っていて、とにかく会話のレベルが高かったと思います。候補生同士でレースを見て思ったことを注意し合ったり。「あのレースのあの走りは考えがあったの?」みたいなことを言い合えました。お風呂の時間でさえ、常に自分を高めようとする姿勢がありました。レース中はとてもシビアな関係でしたけど、レースが終わったらとても仲が良かったんです。この1年で126回生の絆を深めました!

ーー素敵ですね。

萌那 これは勝手に個人的に思ってることなんですけど、フレッシュクイーンだとかオールガールズだとか、126回生みんなで独占できるぐらいになりたいです!

競輪一家の4代目・高木萌那「挑戦する資格がある以上はグランドスラムを目指したい」

 競輪一族の血筋に逆らうことなくガールズケイリンの道を志した高木萌那。物怖じしない受け答えは歯切れがよく、とにかく自信に満ちていた。かと思えば、一転してギャップに対する苦悩を語ったり、レースの反省を口にしたり、思ったことをすべて真っ向から正直に表現する選手だった。

 自分のことではなく126回生全体のことを話す声は弾んでいて、「期待してもらいたいです!」ときっぱり。いつか本当に高木萌那の特別競輪全制覇が見られるのだろうか。記事を書きながらも、ワクワクドキドキが止まらない。

■卒業記念インタビュー公開スケジュール
・3月12日(火)18時00分 中石湊
・3月13日(水)18時00分 山崎歩夢
・3月14日(木)18時00分 森田一郎
・3月15日(金)18時00分 高木萌那

■125回生「ルーキーシリーズ」スケジュール
・5月3日〜5日 富山競輪
・5月10日〜12日 平塚競輪(ナイター開催)
・5月24日〜26日 函館競輪(ナイター開催)
・5月31日〜6月2日 松山競輪(ナイター開催)

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