アプリ限定 2024/02/13 (火) 12:00 128
岐阜競輪場で開催された「第39回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)」の最終日(2月12日)の8R、S級 特選で、赤板で抑えに来た三谷竜生(36歳・奈良=101期)を前受けから突っ張った新田祐大(38歳・福島=90期)が、先頭誘導員早期追い抜きで失格(2位入線)となった。
新田は2011年の「高松宮記念杯競輪(GI)」の初日特選(東日本)と2016年の京王閣競輪のKEIRINグランプリでもこの失格をしており、3回目だ。前2回の時は現行のルールや罰則とは違う。
高松宮記念杯の時は、北日本4人と関東4人、南関の海老根恵太(46歳・千葉=86期)が1人という構成で、先手を取った方が有利という前橋競輪場の特性もあり、新田と平原康多(39歳・埼玉=87期)がともに「絶対に先手を」と譲らない構えだったため、新田と平原の2人が残り3周の前に先頭誘導員を追い抜いてしまった。両者のラインに対する責任感のあまり…だった。
この時、2人は失格になったとはいえ、先頭の選手だけに責任を負わせるのは…と何ともいえない雰囲気が検車場であり、また全国に満ちていたことを思い出す。新田はその後、グランプリでも後方からの打開を図り、早くに誘導を切ってしまった…。
新田としてはやるべきことに対して没頭する性格が、どうしてもギリギリのところを越えてしまうようだ。頑張ろうとする思いが、強過ぎる…。ルールなので、失格したことに対しては擁護することはできない。
だが、この失格に関しては、何度か書いてきたもので、罰則の苛烈さだけはどうにかならないかと思う。長期間にわたるあっせん停止がある。この失格を「やらなければいい」と言えばわかりやすくとも、そのリスクと戦わなければ勝負にならない現実がある。競輪選手は勝負において、すべてをかけているので、ある程度勝負権がなくなっても…で走ることはできない。
ファンサイドとして、外から見ていれば「抜かないようにすればいいだろう」と思うかもしれないが、風を中心としたバンクコンディションもあれば、他のラインが来る距離感、速度など、どのレースも一定ではない。勝負をかけている状態で、非常に流動性の高い状態で400バンクでいえば残り2周のタイミングの駆け引きに挑まないといけない。
誘導ペースが上がること、また7車立ての時には二分戦で対策が少ないこと、など残り2周で勝負しないといけないケースが生まれやすい。現行のルールの状態では、早期追い抜きのリスクと戦うことからは逃れられない。
この失格は、なくなりづらいのが現状と思う。
選手間でよく挙がる声は「ラインの先頭の選手だけが責任を負うのでは、バランスがおかしい」というものだ。後ろの選手も一緒になって先頭誘導員を追い抜くと失格だが、レースの流れ上、そのケースは起こりづらい(マークする選手のリスクは低い)。
モヤモヤが残り、空気は重くなる。
競輪は失敗と成功の連続。失敗しても、選手たちは走ることで取り返すことができる。この罰則はその機会すら奪うものでもあり、とにかく罰則の形を変えられないかと思う。
誰にでも失敗はある。競輪界全体が前向きな場所であってほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。