2024/02/11 (日) 12:00 21
先日、ある取材現場で、最終日に向け鬼気迫る思いを持って挑もうとしている選手がいた。初日、2日目の成績を考えると、最終日はある程度いい成績を残さないといけない。代謝の問題が迫っているので、目に見えた“目安”の数字も見えてくる。2日間を取り戻すのには必要な着がある。
最低限、その着を取らないと…と表情を引き締めていたもので、無論「かなうなら1着を〜〜」と、戦う意志は明らかだった。レース自体も攻めて、打開の限りを図っていたものだ。
選手はわかりやすい数字をもって、競走得点の、代謝に関わる点数についてを話すこともあるだけだが、前提として、勝利であり、それがかなわないなら少しでも上の着を目指しているのは変わりない。
陸上の選手が「メダルを目標」と言い切れない力の時に「8位が目標」というケースがあるが、そんな感じだ。入賞を目指す、と。これは明らかに「ピッタリ8位を狙う!」という発言ではない。
ミッドナイト競輪の車番が競走得点順になってから、しばらく経つ。もう完全に定着したといってもいい。賛否はあるが、この制度になってからのコメントでよく言われるのが「車番以上の着順を目指す」というものだ。
例えば3番車に入った場合、3着以内に入ることはある意味で責任であり、その上で勝利を目指す立場になる。一番競走得点の低い7番車の時には、劣勢なのは間違いない…。一つでも上の着を…が現実的な目標になる。勝利を目指すのは当然としても、現実的に自分ができる何かと向き合うのは、事実としてある。
男子の競輪の場合はラインもあるので、そこまでひっ迫感はないが、ガールズケイリンではかかるプレッシャーは大きい。しかも内枠に強い選手が固まっていては、外枠の選手たちは打開する策も少なくなる。「1個でも上の着」を取れることに、価値がある。そことの戦いもある。
当方の競輪の取材期間もそう短いものではなくなり、これはこうだろう、と「ファンの人たちもわかっている」と認識してきたものがある。選手コメントは、言外に意識しているもの、また行間を読んで心理を推察するもの、と思っている。いや、思ってきた…。
だが、時代が変わり、書き方については考えないといけない。新規ファンが増えてきた現在だ。新しく競輪を見始めた人、初心者の人たちが増えてきている現状を踏まえ、「競輪ファンならわかるだろう」の考えを捨て、競輪について全く知らない人のことも意識して書いていかないといけないのだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。