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前田睦生の感情移入

【全日本選抜競輪】「ブーイングでした」今年絶頂・清水裕友の強制的“ヒール”の戦いに注目!

2024/02/08 (木) 12:00 46

清水裕友は名俳優の道を歩み出している

ヒロトが舞台に上がると…

 清水裕友(29歳・山口=105期)がS班に返り咲いた今年、記念優勝2回、準優勝1回とぶっ飛ばしている。赤いパンツが似合うヤツ…。おそらくレース以外の時も赤いものを召しているに違いない。そんなヒロトに大注目の今年最初のGIが始まる。

 岐阜競輪の令和6年能登半島地震復興支援競輪「第39回全日本選抜競輪(GI)」が2月9〜12日に行われる。ヒロトのGI優勝は2020年2月豊橋の同大会の1度だけ。久しぶりにここで、と機運は高まる。今回は、ヒロトが…と誰もが視線を向ける。しかし今年のヒロトは、4年務めたS班の時とは何か立ち位置が変わっている。

 ヒロトが変わったのではなく、競輪の物語の中において、勝手に“ヒール”みたいな立ち回りになっている。悪さをしているわけではない。汚いレースをしているわけでもない。

 ただ、大宮記念(東日本発祥倉茂記念杯)で地元埼玉勢、川崎、静岡の両記念では南関勢という地元地区に対する“悪役”として走る形になった(車券の人気、といった視点で)。そしてその役割を、『結果で』走りで果たしたので、異様にその役が似合うのがバレてしまった。ヒロトはヒールに一番大事ものを持っている。

ヒールの絶対条件とは

ヒロト「悪役でもいけます!」

 ヒールがヒールであるために、必要なものは何か。
 それは「強い」ことだ。今年に入ってヒロトが取り戻した強さが、シリーズの中でヒール感を与えるのに寄り添い過ぎている。また、静岡記念(たちあおい賞争奪戦)の決勝で「ゴール後はどうでしたか」の問いかけに「ブーイングでした」とあまりにもお洒落な回答で返したのも、良かった。

 ヒロト自身は何も変わっていなくとも、今の役割の演じ方はとにかく面白いので、ヒロトは「よーわからんスけど」と言いそうだが、このまま楽しませてほしい。

 もちろん今回は“正統派ヒーロー”として山口拳矢(28歳・岐阜=117期)がいて、静岡で膝を屈した深谷知広(34歳・静岡=96期)、郡司浩平(33歳・神奈川=99期)らの南関勢、復活を待たれる平原康多(41歳・埼玉=87期)にケガから立ち直れるかの眞杉匠(24歳・栃木=113期)といった関東勢も、今年の主役の座を奪いにいく。

 新山響平(30歳・青森=107期)も健気なで王道の戦いっぷりから、北のヒーローとして存在感を見せたい。各地区にヒーロー感のあるスターたちが競演するのが、GIということ。やっぱり誰かにヒール役をやってもらった方がいい。

 ヒロト、頑張って! 中四国地区の時はヒールじゃないから!

人生は残酷で、人間はそれぞれ違う

武藤龍生は“若頭”顔

 ヤクザ映画によく出ていた川谷拓三という役者が好きで、この人は“とにかく物語の冒頭でイキがって即、殺されそうなヤツ顔”だったため、「なんじゃワレ!」と叫びながらすぐに出番を終えることが仕事だった。ルッキズムという言葉が強く言われるようになり、正しい使われ方をしてその思想が生きるのならいいが、最近は「この顔は」といった瞬間に罰せられる空気感が怖い。

 近い将来、公の放送や映画、ドラマなどはすべて同じ顔に規制、加工されるのではないかと思うほどだ。その時は、川谷拓三が出ている映画を見返すことにしようと思う。

 話が逸れているわけではない。競輪は戦っている(ある意味で演じている、が適用される)選手と、それを見ている観客が作り上げている。こう走ってほしい、こう演じてほしい、と様々な観客がいろんな考え方でレースを見る。2段駆けのように賛否両論で正解のでないものがあるように、そんな話題全体を楽しむのが競輪だ。

 ただ単に全員が笑顔で「やった〜」という結末はない。やりたいこともあれば、果たすべき役割もある。その中で自分なりに、生き抜いていくしかない。人生は、基本的に常に厳しい。

気になる選手ばかり

古性優作は貫禄が極まってきた

 脇本雄太(34歳・福井=94期)には元気に走る姿をまた楽しみにしたい。古性優作(32歳・大阪=100期)との前後も気になる。これだけアクシデント続きなので、2人一緒の時にどんな話をするのか…。

 KEIRINグランプリ覇者の松浦悠士(33歳・広島=98期)に今年、走ることで自分を見つけようとしている佐藤慎太郎(47歳・福島=78期)もひたすら気になる存在だ。犬伏湧也(28歳・徳島=119期)は昨年3回のGI決勝進出。今年は、獲るのみだ。

 そして嘉永泰斗(25歳・熊本=113期)。いわき平記念(いわき金杯争奪戦)決勝の前に披露した覚悟を発揮する時が来た。ただ、大恩のある北津留翼(38歳・福岡=90期)と一緒に決勝に乗ったら…。

最高のヒーロー顔は坂井洋


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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