2023/12/21 (木) 12:00 12
3歳の頃に競輪と出会い、その感動が忘れられずに父親の商売だった競輪予想屋の道を継いだしんちゃん。歯科技工士、佐川急便の配達員を経て、今京王閣と立川競輪で穴予想屋として輝く。
今回はそんなしんちゃんの競輪に対する熱い想いや過去の失敗談、そしてなぜ穴予想にこだわるのか深掘りする。(取材・構成:netkeirin編集部)
ーー気さくで優しい笑顔で出迎えてくれたしんちゃん。まずは競輪との出会いについて伺った。
しんちゃん 私が初めて競輪と出会ったのは3歳の頃に、親父と親父の友人に連れてきてもらった後楽園競輪場。肩車されながら、初めて見たカラフルな選手たちの走りや美しい芝は、本当にキラキラ輝いていて心を奪われました。
幼少期は野球少年だったのですが、中学生くらいの頃に、昔見たあの選手たちのかっこいい姿が忘れられずに、競輪選手になりたかったんです。ただ…当時は競輪のイメージも芳しくなかったもので、親の反対もあり夢を諦めざる得なかったんです。
ーースポーツ少年だったしんちゃんが、どうして競輪予想屋になったのだろうか。
しんちゃん 歯科衛生士、その後佐川急便のセールスドライバーをやっていましたが、サラリーマンに行き詰まってしまった時期がありました。親父が競輪予想屋をやっていたのですが、結婚前の女房に「親父の商売継ぎたい」って気持ちを打ち明けたら、反対されなかったんです。パートナーの理解があったおかげで、念願だったこの世界の仕事へ飛び込むことができました。
ーー長い間競輪を見てきたしんちゃんに、昔と比べて競輪はどう変わったのか尋ねた。
しんちゃん 変わりましたよね。上がりタイムだって1秒以上違うんじゃないですか。今はスピードの時代でスリルがある。昔はあんな競輪じゃないもんな。清水(裕友)と松浦(悠士)なんて、前後入れ替えて回ったりして。(競輪のレース)形態が変わったので、予想の仕方も変わっちゃいましたね。動ける選手中心に、この選手点数低いけど結構走っているなとか、そういうところに注目しちゃいますね。
ーーズバリしんちゃんにとって予想屋の魅力はなんなのだろうか。
しんちゃん この商売は当たってなんぼ。昔は、当たるとご祝儀をもらって。それを木の板に画鋲で留めきれないぐらいもらったことがありましたね。やっぱりあの感覚がやみつきというか、忘れられないですよね。
ーー穴予想を30年貫いているしんちゃんだが、今の予想スタイルは、いつ頃確立されたのだろうか。
しんちゃん もともと親父が“穴”予想でやっていたので、当初からその影響です。『本命なんて新聞見て買えばいい』なんて、親父はよく講釈を垂れていました(笑)。穴予想は難しいですけど、難しいから配当が良いのであって、やっぱり穴を獲ったときの快感は何事にもかえがたいものがあります。
ーー穴予想のポイントはなんだろうか。
しんちゃん 選手ひとりひとりの動きをインプットすること。それで昔の記憶の糸を手繰り寄せ、総合的に判断し、最後は“勘”で決める。この“ひらめき”みたいなものを大事にしています。もちろん外れる時もあるけれど、穴を当てる時はこのパターンですね。
ーー30年間予想屋として活躍してきたしんちゃんの今でも忘れられない予想を聞いてみた。
しんちゃん 2013年、志智俊夫が優勝した京王閣記念です。九州勢の二段駆けに村上義弘、武田豊樹、山崎芳仁がまくりを打ち合って、最後に脚をためていた志智が鋭く追い込んで。それはもう気持ち良かったです。それで3連単7-3-2で116,350円。会心でしたね。
ーーでは、逆に失敗した予想はあるのだろうか。
しんちゃん 笑い話になっちゃうけど、大宮で3車並んでいて、当日に番手選手の欠場が出たんですよね。僕3番手の選手を狙っていて、その選手が番手回れるようになってしまって、売れちゃうんじゃないかと思って、予想を変えちゃったんですよ。そうしたら、そのまま入って結構いい配当になっちゃったんですよ。「このままでよかったじゃん」ってお客さんに言われちゃってさ(笑)。あれは、一番の失敗ですね。
ーーしんちゃんはなぜそこまで、穴予想にこだわるのだろうか。
しんちゃん 穴予想はとにかく夢なんですよ。夢を買います。ただ申し訳ないんですが、穴予想は外れることが多い。でも1回当たると病みつきになるというか。僕の予想を買ってくれた人は、予想買っていないとまた当たってしまうんじゃないか…って心配になって、ついつい買ってしまうそうです(笑)。入ったときが大きいから。やっぱり穴予想の魅力はそういうところなんじゃないかって思います。
ーー2023年のKEIRINグランプリは立川で開催される。立川の場立ちでもあるしんちゃんに楽しみ方を教えてもらった。
しんちゃん 前回は2019年ですか。久しぶりに開催される感覚がありますね。コロナ禍があって、お客さんが入らなくなっていた時期が長かったから、今回KEIRINグランプリで戻ってきて欲しいね。
立川競輪は、迫力があるのは4コーナー。一番スピードが乗っているところだし、 ゴール前もいいんですけど、僕はあの4コーナーが好きですね。あの迫力はぜひ生で見て欲しいな。
ーーもし競輪選手になるとしたら、誰になりたいか投げかけてみた。
しんちゃん その時代その時代で変わりましたね、やっぱり吉岡稔真。そのあとはヤマコウ。グランプリ獲った時に「またフェラーリ買います」って言っていてカッコよかった。今はやっぱり古性優作かな。俊敏で、捲りが強烈だし、横だってできるし。
昔はね、追い込み選手が花形だった時代があるんですけど、近代競輪は逃げ・捲りの選手が中心なので、今は逃げー逃げで普通に並ぶんですよ。それだけ逃げる選手、機動型が増えたってことですよね。逃げ逃げで並びますっていうの多いって感じますね。
ーー予想屋とは違うしんちゃんの素顔を知りたく、自分自身のご褒美について尋ねてみた。
しんちゃん 強いて言えば車ですね。800万円出すと新車でクラウン買えますけど、それだったらもう1つ上のクラスの、中古車を買っちゃうんですよ。見栄っ張りだから。今欲しいのはレクサスの「LC500h」の中古。新車なんか買えないもん(笑)。車はとにかく好きです。
ーー最後にnetkeirinユーザーにメッセージをもらった。
しんちゃん 今後ともいい穴予想をお客さんに提供し続けていきたいので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
長年穴予想で夢を追い続けている姿は、真のギャンブラーと言っても過言ではない。競輪への愛情とともに、夢への情熱を燃やし続けるしんちゃんは今後も輝き続ける。
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。