アプリ限定 2023/11/28 (火) 12:00 96
12月30日に立川競輪場で開催される「KEIRINグランプリ2023」のメンバーが決まった。
その9人。山口拳矢(27歳・岐阜=117期)が日本選手権競輪(ダービー)を、眞杉匠(24歳。栃木=113期)がオールスター競輪と競輪祭を制し、待望の若手世代が名を連ねる。
上位陣の踏ん張りが近年のトピックだったわけだが、ようやく突き破った。時代を変えていく若い力は事実だけを示す。無論、このままの勢いでグランプリを制し、急加速…。ありうる。立ちはだかる面々も強烈で、ゾクゾクワクワク…。
何よりも、並びどうするの…も気になるところである。
競輪ファンにとって、競輪祭決勝終了後からグランプリまでの約1ヶ月は至福の妄想タイム。少し、浸ってみよう。
東スポの記者として、「日本一早いグランプリ予想」というものを担当している。競輪祭の最終日は、常に目の焦点が合わないような1日になる。今年は現場ではなく、会社にいて予想を行う。「どうすっかな…」。一度は「決勝終わって9人揃ってから考えよう」と投げ出した。
すると撮影・編集の担当者から「どうなりそう?」と問い合わせ。ある程度の下地を作っておかないといけないわけだ。「ちょっと考えてきます」。喫煙コーナーにふらふらと。一口で結論は出たため、全体を考えて1分ないくらい。
写真部へ向かう。決勝が終わって、どんなメンバーになっても狙いは決まった。想定の並びやレース展開を考えても…それしかない。
ただ、幻の取材風景が浮かんでくる。
決勝の前の段階で、松井宏佑(31歳・神奈川=113期)が優勝の時が浮かんできた。深谷知広(33歳・静岡=96期)が決勝とは逆で番手だろう。『狙い』は変わらない。だが、新山響平(30歳・青森=107期)がおらず、眞杉が1人いるシチュエーション。
佐藤慎太郎(48歳・福島=78期)だ。「南関の後ろですか?眞杉の番手ですか?」。ぎゃ〜、聞きたい!
コメントを決めるなら、前夜祭では出せず、前検日まで悩む…まであるぞ…。ああ、松井が優勝だと…。煙草もアルコールもいらない、不老長寿の成分といわれている「ケイリンキニナール」が脳を満たす。
幻の取材は発生しなかったわけだが、まだある。脇本雄太(34歳・福井=94期)と古性優作(32歳・大阪-100期)。前後は?
“ワッキーが前”の確率を51%と思っている。まだすべての並びは判明していない。単騎が3人の時、どうか…。脇本ー古性の並びだと、単騎の3人は完全に敵であり、障害物。後方やむなしの展開が見える。
古性が前で立ち回れば、単騎の3人を早期に攻略し、位置を取れる。
えっ、これなら古性が前…も面白い。「前で戦って脇本さんとワンツーを」と古性が口にするかもしれない。妄想はだんじりのカオスに飛び込む。
いや、でもワッキーが万全に仕上げれば、他の7人はそもそも関係なくね…。へしこを噛んでも柔らかい、越前ガニなら甲羅ごといくよ、がワッキーのスタイルだ。悩ましい…。
松浦悠士(33歳・広島=98期)と清水裕友(29歳・山口=105期)の前後も決定的に決めるものはない。
いや、私は終わっていた。頑張っているつもりでも、頑張れていない。「まだ、後厄だったから」を言い訳にするつもりだが、最低の失念をした。予想の際に「拳矢は眞杉に付くのか」を取り上げただけで、いっぱしの競輪記者みたいな顔をしていた。
何年やってんの?
予想のYouTubeのコメントやSNSに「親父さんが世話になったから…」。ハッ!!
ハッ!!
お前、マエダだろ。
トリックが単純な推理小説はつまらなく、とりあえず京極夏彦をてろてろ読んで…。でもやっぱり一番好きなのは江戸川乱歩で、最高傑作は「芋虫」。世界最高の作品は「芋虫」。
山口幸二(引退=62期)さんが平塚で2回目のグランプリ優勝を果たした時、また、その他の多くのレース。「父が世話になった」は山口拳矢だ。深谷が、幸二さんの息子さんに前を任せて…。
本当に情けない。この話をできなかった私は太宰治風に言えば「グッドバイ」(「人間失格」はとうの昔に通り過ぎております)。反省と悔いに襲われる現在だ。斜陽どころではない。
終わってるよ、キミ。……。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。