2023/11/20 (月) 12:00 54
競輪発祥の地・小倉競輪場で11月21〜26日の日程で「第65回競輪祭(GI)」と、21〜23日の3日間に「第1回競輪祭女子王座戦(GI)」が行われる。年末のKEIRINグランプリの出場をかけた最後の闘い。毎年、重い空気感に包まれる。
“鉄冷え”と呼ばれたこともある北九州の空気がある。気候の変化で近年はおだやかな空気に包まれることも多いが、小倉の冬は寒い。11月には九州とは思えない、薄暗い空が包むこともある。
そんな競輪発祥の地で行われる最後の戦いは、常に厳しく、声も出ない緊張感がある。とりわけ最後の切符を巡る争いは、見ているだけでもつらいものがある。そこで戦う選手たち。出場叶った選手の周りは色彩を強め、こぼれてしまった選手の周りからは色がなくなる。
その濃淡に、喉が渇く。
2011年のグランプリを制すことになる山口幸二さんは、その前年、前々年と次点に泣いていた。いつだったか、決勝に乗れず、先のレースを終えた幸二さんに「決勝はどちらで見ますか?」と聞くと「部屋で見ます」と答えた。小倉では当時、最後の最後を検車場でみんなと見る選手もいたが…。
決勝が終わった後、目を真っ赤にした幸二さんがいた。
2018年の時は清水裕友(29歳・山口=105期)が話題をさらった。決勝で3着に届き、大逆転のグランプリ出場。清水本人がレース前に細かく確認していなかったため、本当かどうか、分からないという状況。「本当に?本当に?」ーー。
当時は柔道部員時代を思わせるポッチャリ感があったため「公式の場に出るんやから、痩せます!」と宣言したことを思い出す。敢闘門の前のスペースで、輝いていた。
2019年のガールズグランプリトライアルでは爆笑の光景もあった。トパーズとアメジストの2つの決勝がある中、奥井迪(41歳・東京=106期)は先の方の決勝で7着。しかし後の決勝の結果により、かろうじて出場が決まった。
7着だったため奥井は「あきらめていた」。
報道陣からグランプリ出場と伝えられても「また〜」とすぐには信じず、グダグダしていたが、しばらくして「えっ、本当なんですね!なにそれ、ワハハ!」と涙をにじませた。
しばらく爆笑していたが、いや、信じないっておかしいだろ!(笑)
今年からGI「競輪祭女子王座戦」として開かれるシリーズ。緊迫感だけ迫る。佐藤水菜(24歳・神奈川=114期)がやはり抜けて強く、児玉碧衣(28歳・福岡=108期)も進化を続ける。2人が軸になるが、最後の切符、への戦いは熾烈を極める。
グランプリの次点、は究極の場所だ。強いから、そこにいられるわけだが、その年で一番悔しい思いをする選手になる。小林莉子(30歳・東京=102期)。最年少のガールズ1期生として華やかなストーリーを演じつつ、苦悶の次点に何度も泣いてきた。
今年また、際どい位置にいる。出場に関しては実質的に優勝あるのみ、の場所にいるわけだが、最後にどこにいることになるのかーー。
グランプリを控えながらも、ある意味で一年が終わる日。2023年、今年もまた…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。