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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

【太田りゆのレース回顧】アジア大会とオールガールズクラシック、2つの大舞台を走り終えて

2023/10/29 (日) 18:00 20

 netkeirinをご覧のみなさん、今月もこんにちは太田りゆです(◍´꒳`◍)/

 前回のコラムから「アジア大会」、「オールガールズクラシック(松戸GI)」を走ってきました。今回は競技と競輪の2つの大きなレースを振り返っていきたいと思います。

アジア大会、オールガールズクラシックと重要なレースが続いた(写真提供:チャリ・ロト)

過去イチのキツさ! 1日8本の全力スプリント

 開催は4年に1度、オリンピックのアジア版である「アジア大会(中国・杭州)」に日本代表として出場しました。私はスプリントで銅メダルを獲得しました。自分が望んでいた結果ではなく、もっと良い色のメダルが欲しかったのが本音です。

 今回のスプリントのレースプログラムは通常の国際試合とは異なるもので、ひとことで言えば「物凄くハード」でした。スプリントは2本先取ルールなのですが、勝負がもつれると3本走り決着をつける種目になります。私は本番当日、3人の選手と勝負しました。

 1人目は2本ストレート勝ちできたのですが、2人目で予選1位の選手と対戦することに。ここで3本走ることになってしまいました。このダメージはできれば避けておきたかったダメージです…。そして3人目も勝負もつれて3本勝負に…。恐れていた事態に直面してしまいました。1日になんと8本の全力スプリントをすることに。これは過去イチのダメージ(※)でしたね。

(※編集部注)本数のみのカウントなら太田選手は1日8本以上は過去に経験済み。今回のアジア大会は1本走行後すぐローラーに乗り、またすぐに1本走るといった状況も生じた。靴を脱ぎクールダウンする時間もない状態での1日8本ということ。

個のチカラと駆け引きが勝敗を分けるスプリント、1走1走のダメージも計算に入れて走らなくてはならない難しい種目(写真:公財JKA提供)

望んだ色ではない、でも価値のあるメダル獲得

 ラスト1本は「勝てば銅メダル、負ければメダルなし」の大一番です。でも足が痛過ぎて、辛過ぎてキツ過ぎて! たくさんのカメラが撮影しているにも関わらず、四つん這いになっちゃいました…。太ももには激痛が走り、膝から下は力がまったく入らない状態になります。

「もう銅メダルいらないから走りたくない」とコーチに相談寸前のメンタルに陥りました。日本代表選手なのにこんなことを思っていたなんて書けば、たくさんの人に怒られてしまうかもしれないけれど…。そのくらい思考が回らない状態になってしまいました。

 でも大一番。勝ってメダルが欲しい。ふと対戦相手を見ると相手も本当に辛そうでした。「キツいのは私だけじゃない! 対戦相手も同じなはず!」とか、「何のために毎日苦しい練習をしてきているの、こういう時に勝ち切るためにやってきたんじゃん」とか、「ここで負けたら3本目にもつれ込んでいつも勝てない今までの私と一緒じゃん!そんなん嫌だ!」とか。いろいろ考えました。本当にいろんなことを思って「みんな応援してくれてるじゃん!」って急に我に返りました。「絶対勝つ!絶対だ!」と最後の1本を踏ん張り切ることができました。

力を振り絞り表彰台を目指した(写真:公財JKA提供)

 想像を絶するような足の痛みだったけど、自分を乗り越えて勝ち取った銅メダル。納得などできないけど、それでも私にとって大きな価値のあるメダルになりました。アジア大会はオリンピックポイントを加算できる大会ではないし、出場選考にも関係ないレースです。でもこの経験はオリンピックに繋がる糧になったと思います。

「オリンピックに繋げていく」表彰台では前を向いていた(写真:公財JKA提供)

素晴らしいメンバーを相手にして嬉しい

 アジア大会のレースが終わった次の日の夜に帰国し、その翌朝に「オールガールズクラシック」の前検日に入りました。当然まだ足はパンパンの状態で、たくさんのインタビューを受けることになりました。私たち選手は車券を買ってもらう立場なので、「脚が痛い」とか「完全な状態ではない」ということをお客様に伝える必要があります。インタビューではそういったコメントになる場面も多かったと思います。

 でもレースまでに思った以上に回復することができて、予選1日目は積極策の逃げ切りで1着、2日目の準決勝はまくりでの1着。GIという素晴らしい舞台、対戦メンバーも素晴らしい中で、連日1着での勝ち上がり。

 その場では“強い選手”として立ち振る舞わないといけないと思い、感情を押し殺して普通にしてたんですけど、この2日間、本当はすごい嬉しかったんです⸜(◍´꒳`◍)⸝ 内容にも満足していたし、決勝が楽しみでした。

先頭位置から後続を目でけん制しての逃げを披露した初日、2日目準決勝では豪快捲り。戦法問わず“連日完封”の強さを見せた(写真提供:チャリ・ロト)

情けなくて恥ずかしい決勝の走り

 そんな良い流れで迎えた決勝戦。私は発走直前にオッズを見ました。これまでビッグレースにおける私のオッズって3桁や4桁なんて当り前なのに! 今回は2桁どころか、かなり人気になっていました。お客さんが期待してくれていることを本当に感じました。これがまた嬉しかった! それなのに…!

 決勝のレース、私は自分の力を何ひとつ発揮することもできませんでした。こんなにダメなレースは久しぶりで、本当に内容が酷い。自分で自分にガッカリする内容です。「力を出し切れずに悔しい」と言える状態にも届いていないものでしたし、お客さんが期待してくれた中で悔しいとかじゃなくて「情けなくて恥ずかしい」という気持ちでいっぱいでした。最近は大舞台でもミスがなく、勝ち負けできるレースをしていただけに、レース後は心の処理ができませんでした。

決勝ホームストレッチライン付近(太田は4番車・青)、「頭ではここじゃないとわかりながら体が反応してしまった」と仕掛けを悔やんだ(写真提供:チャリ・ロト)

 開催が終わり数日経ち、このオールガールズクラシック決勝で「今回こそ太田りゆが来る!獲る!」と思って応援してくれていた人たちのことを想像しています。毎回毎回心を込めて応援してくれるみんなのために、そして何よりも自分のために! 私はまだまだいろいろな面で強くならないといけないと思っています!

 望んだ色ではなかったメダル、内容も良くて無傷で勝ち上がったGI戦。この2つの大会で得た良いこと悪いことを必ず繋げていきたいと思っています。それでは今回はここまでにします(^O^)!

 今後の出場予定は11月15日〜18日までジャパントラックカップ(伊豆ベロドローム開催)、11月21日〜23日までの競輪祭女子王座戦(小倉競輪・GI)です。みなさん、ぜひ現地に応援に来てくださいね♡

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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

太田りゆ

Ota Riyu

埼玉県上尾市出身。112期生のガールズケイリン選手。2017年7月、高松競輪場でレースデビューし、初勝利を飾る。同開催では3連勝を果たし、デビュー場所で完全優勝という快挙を成し遂げる。また日本代表・自転車競技選手としても活躍しており、2019年にはワールドカップに出場し、ケイリン種目で銀メダルを獲得。2020年11月には全日本選手権女子スプリントで優勝。国内外のハイレベルな戦いに華麗なダッシュで挑み続けている。趣味はメイクとファッション、パワーの源はコカ・コーラ。

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