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【競輪新時代】24歳のニューヒーロー眞杉匠「一人でも多くの仲間をグランプリに」/インタビュー前編

アプリ限定 2023/09/06 (水) 15:00 49

関東にニューヒーロー誕生。8月西武園オールスターで眞杉匠選手(栃木)が初のGIタイトルを獲得し、初のKEIRINグランプリ出場権も関東一番乗りで獲得しました。今回はオールスター期間内の舞台裏から、ここまでの道のり、そして「先行日本一」へのこだわりなど、たっぷり語ってくれました。その独占インタビューの模様を2回に分けてお届けします。(聞き手=松井律・日刊スポーツ)

記事の最後には直筆サインのプレゼントもありますので、ぜひ最後までお楽しみください。

24歳の若さでオールスター競輪を優勝した眞杉匠(photo by Kenji Onose)

平原さんが後ろからサドルを掴んでいた!?

ーーオールスター優勝おめでとうございます。10日ほど経ちましたが、お祝いの声が後を絶たないんじゃないですか?(※取材日は9月2日)

眞杉 すごかったです。ものすごい量のラインが来ました。え、こんな人まで見ていてくれたんだとか、とにかく返信が大変でした。うれしい悲鳴ですね。

ーー普段から仲のいい練習グループは、さぞ大盛り上がりだったでしょう。

眞杉 それが、まだちゃんと会えていないんですよ。オールスター後すぐに吉田有希と朝倉智仁とジェットスキーをしに猪苗代湖に出かけてしまったし、その後には競輪選手養成所で違反訓練が待っていましたから。

ーーそれは楽しそうなメンバーですね。その吉田有希選手の頑張りも大きかったですし、今回のオールスターは関東のムードが良かったように映りました。

眞杉 まとまっていたと思います。特に吉田ブラザース(拓矢・有希)には、おんぶに抱っこでした。本当にラインのおかげで勝てました。

photo by Kenji Onose

ーーでは、オールスターの話を聞かせてください。今回は決して調子が良くないと言い続けていましたが、その真意は?

眞杉 良くなかったのは本当です。毎日セッティングをいじって、少しずつ良くはなっていったけど、特にシャイニングスター賞なんかは、平原(康多)さんが後ろからサドルをつかんで引っ張っているんじゃないか(笑)と思うぐらい重かったです。

衝撃を受けた日本選手権競輪の準決勝

ーーそこまでセッティングに迷走した理由は何ですか?

眞杉 平塚ダービーの準決で新山(響平)さんに突っ張られて、自分のレースが出来なかった。こんなにも強いのかとショックでした。それまで2年ぐらいほとんどセッティングをいじって来なかったけど、これはもう色々と変えていかないと無理だなと。それから新山さんのセッティングを真似してみたり、でも僕の走りには合わないなと思ったり、その後もずっと色々と試しています。5月からずっとそんな感じなんですよ。

ーーオールスターもまだセッティングは出ていない状態だったのですね。

眞杉 それまで研究してこなかったから、僕にはセッティングを出す技術がなかったんです(笑)。

ーーいじらなかったのは、それまでは乗り心地に不安がなかったからですか?

眞杉 悪くなるのが怖くていじって来なかった部分もあると思います。

ーー絶好調でも勝てないこともあるのに、そういう状態でGIを勝ってしまうんですから競輪は面白いですね。

眞杉 本当ですね。仕上がっていないのが分かっていたし、オリオン賞からシャイニングスター賞までは、不安な中で走っていました。

ーーシャイニングスター賞は、別線に脇本雄太選手、新山響平選手がいて、まるで「先行日本一決定戦」の様相でした。

眞杉 その二人の前では、自分なんてまだ全然です。あのメンバー構成で勝ちにいく走りをしたら、何やってんだと言われてしまうだろうし、自分はチャレンジャーだから、とにかく先行したかった。前を取って新山さんを突っ張りたかったんです。

photo by Kenji Onose

ーー平原選手がSを取って、その形になりました。ただ、アクシデントがあって力勝負にならなかったのは残念でした。

眞杉 後ろの状況は分からなかったんですけど、レース後に平原さんが「申し訳なかったな…」なんて感じで。空気は重かったですね。逆にあの審議はどう思いました?

ーー単独審議からのセーフだったので、平原選手が一人で戦犯扱いされてしまったなと。複数審議だったら、もっと大勢が納得のいく判定になったのかも…とは思いました。

眞杉 なるほど…。

オールスター期間中は体の重さが抜けなかった

ーー本調子ではないながらも自力で準決勝まで勝ち上がりました。準決の番組を見てどう思いましたか?

眞杉 まず、番手かぁ…と思いました。これまで橋本瑠偉、山田雄大の後ろしか回ったことがなかったし、ましてやGIの準決ですからね。でも、ユウキが強い気持ちで行くと言ってくれたので任せました。ただ、別線に山崎賢人さん、中野慎詞というダッシュマンがそろっていたし、うまく走らないと厳しいと思いました。

ーー吉田選手が大役を果たしましたね。

眞杉 ユウキがいいレースをしてくれました。中野が前受けだったので、これは全ツッパ(突っ張り先行)だなと。2角になると新田(祐大)さんが出て行ってしまうので、ユウキが新田さんにかぶっている間に踏ませてもらいました。番手を回って(決勝に)乗れなきゃ話にならないので。タイミング的にはベストでした。

ーーいよいよ決勝戦に進みました。コンディションは上がっていましたか?

眞杉 大会に入る前、大会中の指定練習、仕上げようと色々やったけど、どうしても体の重さは抜けませんでした。準決の後は夜11時までセッティングをいじっていました。離れてしまったり、踏んでもモコモコしてしまったらまずい。大丈夫かなと思いながら走りたくなかったので、やれることはやろうと。これで大丈夫と自分に言い聞かせて、最後はもう気持ちの問題でした。


ーー決勝戦、吉田拓矢選手の前回りは驚きでした。どういう経緯で決まったのですか?

眞杉 自分が一人でいる時に、タクヤさんから「俺が前をやるよ」と言ってきて。僕が前だろうと思っていたし、その言葉をきちんと理解できていませんでした。理解してからは慌てて、この舞台だし、4人で話して決めましょうと言って、平原さん、武藤龍生さんも交えて話しました。

ーー埼玉勢も異論はなかったでしょう?

眞杉 そうなんですけど、それでもまだ自分が番手は早いんじゃないかなと思いました。GI決勝もまだ3回目で、前のタクヤさんも後ろの平原さんもタイトルホルダー。相当に重要な位置だし、狙われてもおかしくないですからね。

新聞の本命印を見て湧き上がるものが

ーー決勝当日は人生最大の緊張感でしたか?

眞杉 いや、緊張の度合いで言ったら、地元の宇都宮記念(GIII)のが上だったかもしれません。あの時は自分が勝たなきゃいけないレースでしたから。今回は、自分がダメでも、後ろの平原さんが取ってくれればいいぐらいの気持ちでいました。

ーー不安な気持ちはなかったですか?

眞杉 新聞を見たら、自分が◎になっていた。GIの決勝で自分が本命なんだと湧き上がるものがありました。タクヤさんも頑張ってくれるんだし、取らなきゃいけないと気合いが入りました。

ーー作戦は突っ張り先行の一択でしたか?

眞杉 平原さんが1番車だったし、タクヤさんも前なら突っ張るからと言ってくれました。

ーー清水裕友選手や、犬伏湧也選手は脅威でしたか?

眞杉 清水さんは何年も連続でグランプリに乗っている選手。犬伏さんもすごいダッシュですから、どこから来るか分からない。気持ちに余裕はなかったです。

ーースタートは前が取れました。

眞杉 並び的には最高の形になりましたね。

ーー残り2周から吉田拓矢選手が全開でしたね。

眞杉 残り2周からの1周が22秒9。踏んでいて誰も来られないペースだと思っていました。もし来てもホームだろうと。

ーーそのホーム手前で清水選手の巻き返しがありました。

眞杉 誰か来たら行くと決めていたので、清水さんが車を外に持ち出した気配がして、すぐに踏みました。

ーー後ろで清水選手と平原選手が絡んでいる状況は分かっていましたか?

眞杉 赤板から僕は一切、後ろを見ていないんです。GIの決勝だし、かかっていても、それでもこの上を来るんじゃないかという思いはありました。脇目も振らず、がむしゃらに踏むしか出来ませんでした。

ーーどこで勝利を確信しましたか?

眞杉 ゴールするまでは、後ろが離れていることも分かっていなくて、ゴールしても、本当に俺?という感じでしたね。

ゴール後にはガッツポーズで喜びを表した(写真提供:チャリ・ロト)

ーーレースを終えての感想は?

眞杉 最初は素直にうれしかったです。審議ランプが灯っていたけど、後ろで何かあったのかなぐらいの感じでした。でも、タクヤさんが失格と分かって、申し訳ない気持ちが出てきました。

ーーそれだけが後味の悪さを残してしまいましたね。

眞杉 タクヤさんが戻ってきたら、これからは僕がしっかり恩返しをしていきます。まだGIも2つあるし、一人でも多く関東の仲間がグランプリに出られるように考えながら走りたいと思います。

ーー今大会、関東は1つになりましたか?

眞杉 うまくいかない時期もありましたけど、今回は1つになれたと思います。

ーー思い出のオールスターになりました。

眞杉 来年はドリームを走りたいですね(笑)。

photo by Kenji Onose


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