2023/08/25 (金) 12:30 34
元グランプリレーサーで競輪評論家の加藤慎平さんがビッグやグレードレースで推したい注目選手を紹介。競走データからは見えてこない選手の特徴を解説します。今回は「燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯(GIII)」に出場する森田優弥選手です。
今回紹介するのは、埼玉・113期の森田優弥選手。先日オールスターを優勝した眞杉匠選手と、同地区かつ同期の選手だ。
森田選手の強みを一言で表すなら、“総合力の高さ”に尽きる。自力型として地脚がありながら、位置取りやヨコの動きといった器用さも兼ね備えている。脚質も逃げから先行、捲りと幅広く、番手に回ることもできるのだ。
その自在性が存分に発揮されていたのが、前走のオールスター競輪(GI)だ。
1走目と2走目は、最終ホームで絶好位とも言える3番手をキープし、レースの主導権を握るパーフェクトな組み立てを見せた。打って変わって3走目と4走目では、相手関係が軽くなったことを鑑みて、逃げの先行勝負を仕掛けて2着に粘り込んだ。
着順こそ7・5・2・2着だったものの、レースセンスと自力を見せつけ、将来性を感じさせる走りを披露した。
25歳ながら、総合力で勝負する選手は珍しい。このまま順調にいけば、5年後には眞杉匠選手の番手を指定席としているはずだ。いわば脇本雄太選手の後ろにつく、古性優作選手のようなタイプになるだろう。
だがその反面、突出した能力を持ち合わせていないのも事実。トップスピード、スピードの持続力など、能力面ではSS級の選手に比べ数枚落ちる。
しかも、ご存知の方も多いと思うが、森田選手は失格が多い。正直、自力型の選手で、過去1年で5回も失格をくらった選手は初めて見た。
今年も3か月間にわたって斡旋停止を受けており、8月に復帰したばかりだ。良く言えば、それだけ闘争心が強く、ヨコの動きや位置取りも徹底している証拠とも言える。ここ1年間の教訓を生かして、感情のコントロールや、細かい動きでライバルを翻弄するテクニックを習得すれば、さらに上を目指せるはず。実力を考えれば、S2クラスに収まっているような選手ではないのだ。
そして26日からは、森田選手にとって地元地区の「燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯(GIII)」が始まる。森田選手は松戸バンクと好相性で、過去の成績では勝率66.6%。まだ記念の優勝がない森田選手だが、ここはチャンスだろう。
松戸バンクは1周333m、直線も38.2mと短く、カントが浅いため遠心力を活かした大胆な捲りも決まりづらい。つまり逃げや好位からレースを進められる選手が、圧倒的に有利となる。
そこで森田選手の器用さや、位置取りの巧さが活きるわけだ。流れとしては、まず赤板あたりで他のラインを前に出させて、そこから打鐘あたりまでに4番手以内を取り切り、先行捲りのような形に持ち込むのが理想的だ。相手関係を見ても、他地区の自在選手は少なく、関東勢も層が厚いので、思い通りにレースを運べる局面が多いだろう。
車券としては、森田選手を2着づけにして、本線の番手選手を1着にして買うのがオススメだ。ただ、平原康多選手など、格上の選手を番手につけた場合は、早めから仕掛けるケースも多いので、ゴール前でガス欠になってしまうパターンも考えられる。その場合は、森田選手を切るのも1つの手だろう。
車券としては頭で買いづらい森田選手だが、今開催は自在性を活かして、決勝まで上がってくるのが濃厚と見る。オールスターを制した眞杉選手に続き、存在感を示せるか楽しみだ。
森田優弥選手3行メモ |
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若手自力型にしてはヨコが強い(やり過ぎてしまうことも…) |
必勝の戦法は先行捲り |
現状の力だと車券は2着づけがベスト |
加藤慎平
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々なメディアでMC・解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。筋トレ、サウナ、ゲームなどに造詣が深い。
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