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【日本選手権競輪】成田和也「決勝に乗るたびに今回限りだと思っていた」/独占インタビュー前編

アプリ限定 2023/04/25 (火) 16:30 22

今回は日本選手権競輪特集として成田和也選手のインタビューをお届けします。度重なる怪我により低迷期を迎えるも、昨年2022年にはGIで4度の決勝進出。見事“完全復活”を遂げ、今年もなお好調を維持し続けている成田選手。インタビュー前編となる今回は「2022年を振りながら今年2023年はどうなのか?」を中心に話を聞きました。成田和也選手直筆サインのプレゼントもありますので、ぜひ最後までご覧ください。※プレゼントへの応募はnetkeirinアプリ(無料)のインストールが必要です(取材・構成 netkeirin編集部 篠塚久)

成田和也が飾らずに現状を語る

去年よりも“戦える感覚”ある

ーーはじめに2022年全体を振り返ってみていかがでしょうか?

成田 2022年は最初の大宮記念のことをよく覚えています。決勝2着でシリーズを終えた時、久々にグレードレースで結果を出せたな、と思いました。でもこういった舞台で優勝を狙って走れるのもこれで最後だろうな、と考えていました。その後の全日本選抜でも決勝に進みましたが、自分で自分の結果を信じられない感じで。2022年は大きなレースで何度も決勝へ勝ち上がることができましたが、そのたびに「うまく行くのも今回限りだろうな」と信じられない気持ちで1年を過ごしていました。

ーー昨年のGI開催では4度決勝へ進出しています。すべての開催で自信や手応えよりも「信じられない」といった心持ちだったのでしょうか?

成田 はい。すべての開催で良い結果もこれで最後だろうな、と思っていました。だから気負うこともなかったし、毎開催ごとに新鮮な気持ちでした。1年が終わり「今年はGIで4度も決勝進出できたのか?」という感覚がありましたね。

ーー2023年も勢いは止まらず。今年も昨年と同じく『うまく行くのも今回限りだろう』といった心境ですか?

成田 大きなことは言えませんが、それは全然違ってきています。全日本選抜を終えて、昨年と今年の自分を比較しやすかったのかもしれません。昨年は「どうにかついていくだけ」といった感覚でしたが、今年は「勝負できているな」といった“戦える感覚”がありました。

ーー今年はさらに調子を上げている感覚があるということでしょうか?

成田 そうですね。昨年1年を通して上位のレースを走り、それが上積みとなり今年に繋がっていると思います。ただ、良いことばかりでなく、課題を感じているのも正直なところです。調子の良し悪しの波が大きいので、いつでも良い状態で走れるように考えたいです。

苦境の中でもあきらめることはなかった

低迷期のことを話すときも表情ひとつ変えずに

ーー2021年に復調の気配が色濃くなり、2022年には完全復活と言えるご活躍。そこに至るまでは度重なる落車や骨折といったアクシデントに見舞われていました。怪我による低迷期は苦しかったと思います。

成田 最初に怪我をした時は、これを糧にもっと強くなってやろうと逆に勢いづいていました。でも復帰しては怪我、復帰しては怪我があまりにも連続するので、さすがに厳しいものがありました。怪我をすることよりも『復帰しても思うように走れないこと』に一番の苦しさを感じていました。

ーー心折れることもあったと思います。どのようにメンタル面をケアしたのでしょうか?

成田 いや、苦しかったのは事実ですが、モチベーションには影響はありませんでした。プロになった初期の頃から、今でもずっと「もっと強くなりたい」と考え続けていますが、苦しい時期でもその気持ちが失われることはありませんでした。

ーー逆境に屈しない強い気持ち、その原動力はどこから来ているのでしょうか?

成田 なんでしょう? これといって説明できることはありません。ただあきらめなかっただけ、という感じです。怪我の影響でお客さんの車券に貢献できなかったですし、欲しい結果も出ませんでした。それでも「まだまだ!まだまだ!」と挑戦するような気持ちは、まったく切れなかったですね。

ーーそんな中、賞金ランキング11位となり「完全復活」と称されるような昨年がありました。成績好調の要因はどこにあったのでしょうか? 弟子の酒井雄多選手との練習で良い刺激が入っているとニュースを見たことがあります。

成田 昨年を振り返ると、あきらめずにやり続けた“積み重ね”が実を結んだと思います。酒井との練習も上向くきっかけのひとつです。酒井も自分と一緒で、いつも「もっと強くなりたい」と考えているような選手です。自分がきつい時には酒井に引っ張ってもらいましたし、お互いを高め合うような練習ができたと思います。一緒に練習をすることで良い循環が生まれているので、酒井がいなかったらまた変わっていたのかな、とも思いますね。

弟子の酒井雄多と切磋琢磨(photo by Shimajoe)

すべての能力をもっと向上させる必要がある

ーータテ脚を磨くための練習にも取り組まれていますか?

成田 はい。自分はナショナルチームに所属していた影響から競技的な練習メニューを組んでいます。もともと自力を磨くような練習を好んでいるんですよね。でも酒井が「競輪っぽい練習」を好むので、脚を使って長い距離を踏む練習もやります。競技系と競輪系、目的の違う練習メニューがちょうどよく噛み合ってきている感覚はありますね。これから、もっともっと脚をつけたい。さらにスピードも向上させたいと考えています。

ーー「ナショナルチーム」という言葉が出てきましたが、最近のナショナルチームの活躍をご覧になっていかがですか?

成田 自分の頃は世界とスピード差があり、そこで対等に戦うために励んでいました。当時、『ナショナルの活動でスピードを高めれば日本の競輪を走ったとき、力だけで勝ち切れるレースもできるようになるはず』と考えていて。今の脇本や新田、深谷たちの走りを見ていると、それができているので「うらやましいなあ」と思っちゃいますね。今年のナショナルチームもスピードで世界に負けていません。すごいと思いながら「いいなあ、うらやましいなあ」と見ています(笑)。競技と競輪を両立する彼らは、自分が当時理想としていたような存在に近いです。賞賛する気持ちはありますが、競輪では対戦相手にもなるので、自分は自分でもっと強くならないといけないです。

ーー成田選手の強みはご自身の中でどんなところにありますか?

成田 自分には突出したものはないと自己分析しています。強みなんて思い浮かばないし、すべてを向上させる必要性を感じています。ヨコの技術・さばきも精度を上げて、戦術理解も深めたい。やることだらけです。ラインで戦うことが前提にあるので、ブロックの引き出しをもっと考えないといけないし、脚力のレベルももっと磨かなくてはと思います。

ーー成田選手はこのインタビュー中も「脚力をつけたい」と何度も言い続けています。脚力はレースにおいて必要不可欠なものですか?

成田 ここ最近の競輪はスピードのある選手が年々さらにスピードを上げてきている印象です。スピードだけでなく、先行選手がもがく距離もどんどん長くなっています。しっかりと追走して、追い込み選手として然るべき仕事をするためには、脚力を上げていかなければ苦しいと感じています。

脚力強化がすべての土台になる(photo by Shimajoe)

“その場しのぎ”は自分が混乱するだけ

ーーラインで戦うことが前提とおっしゃいましたが、成田選手にとってラインとは?

成田 やはり競輪はラインとラインの戦いです。先行選手が前で頑張っているのなら、後ろの選手が援護するのは当然であり、まずは自分達のラインで協力し合い、他のラインに勝つことを考えて走ります。他のラインに勝っても、最終局面が難しいのが競輪なのですが。まずはレースを走る上で、ラインのためにどんな仕事ができるのかを第一に考えます。

ーー昨年の競輪祭決勝、成田選手はグランプリ出場を懸けてレースに臨みました。北日本ラインの4番手を固めることになりましたが、あの場面は並びについての葛藤などは生まれないのですか?

成田 まったく葛藤なんてないです。北日本は地区でひとつにまとまることがあり、自分もそういった北日本ラインに助けられ、ともに戦ってきました。あの4車結束なら自分の中では自分が4番手だと判断して決めています。グランプリへの権利云々で並びを決めたり、振る舞いを決めたりするのは“その場しのぎ”だと思います。出場権利争いができていたのなら、それも北日本ラインがあったから。こういったことを忘れて自分の中にある道理・スジを通せないと、地区やラインのためにならないというよりも、自分自身が混乱するだけです。

優勝を決めた新山響平を讃え、握手を交わす成田和也(photo by Shimajoe)

ーー“その場しのぎ”の主張はせず、自分のスジを通すですか。

成田 はい。ライン構成が決まれば自ずとどこを回るか決まります。級班の格や序列といったものもありますし、「誰がどんな仕事をしてきたのか」の評価もあります。直近の調子だって判断材料です。それらを自分の中で照らし合わせて、並びを決めているし、競輪祭決勝は4番手の判断でした。

ーー格や序列といえば、S級S班の佐藤慎太郎選手、守澤太志選手に向ける意識などについて、可能であれば聞きたいです。

成田 よく聞かれますが答えにくいですね、この手の質問は(笑)。慎太郎さんや守澤に対して「打ち負かしたい」みたいな気持ちは皆無です。連係する北日本の仲間でもありますから。誰がどうのこうのと意識するのではなく、日々のレースでいかに自分の仕事をして、いかに自分を高めるかに意識を置いています。ライン対ラインの勝負の中で、しっかりと役割を全うしていれば評価されて認めてもらえます。その積み重ねの中で「一番いい位置を回ること」を目標に励むだけです。集中するのは他人ではなく、自分の走り。「打ち負かすぞ!」はない、「一番いい位置を回るぞ!」はある、という感じです。

“フェア”にこだわる勝負姿勢と自分を高めたい“欲求”の強さが見えた

ーー成田選手は我が道を極めていくことに集中しているのですね。

成田 そういうところはありますね。

ーーそれではここまでを前編とさせていただき、後編では日本選手権競輪についてのお話を聞かせてください。

成田 わかりました。

【休憩中の一コマ】

 取材日は年間好プレー大賞の授与式の撮影日だったため、東スポ・前田記者もインタビューに同席していた。前編のインタビューが終わり、成田選手を囲み、リラックスムードで談笑。

前田 競輪祭の4番手の話は成田さんらしいなって。ラインに向ける成田さんの思いが伝わりました。

成田 あの後、“いい人”みたいな感じで言われたこともあるんですよ。でも北日本は地区でまとまる流れもあるでしょう? その時に自分がどの位置を回るかなんて自分が一番わかるじゃないですか。全然いい人でもなんでもなくて。誰と連係しようが自分が4番手固めるよって話でもないわけで。

前田 成田さんはSSの責任を経験していますからね。判断基準も独特でしょう。

成田 そういうのも当然ありますね。

前田 成田さんが「強烈だな」と思う追い込み選手といえば誰ですか?

成田 たくさんいるのでわからないですね。みんな強烈。慎太郎さんは対戦相手ではないけど強烈。これは言うまでもない。小倉さんもすごいし。うーん、思い浮かべてみてもゴロゴロいますよ(笑)。強烈っていうと、やっぱある程度パワー系の顔が出てきます。

前田 パワー系といえば過去対戦でブロックを受けて「えげつない!」って思った選手はいますか?

成田 小野俊之さんが思い浮かびます。何回かブロックを受けたことあるんですが、頭なんかも巧みに使って当たってきたり、ひっかけてきたり。すごいパワーでブロックに来るので、それこそ強烈なイメージがあります。

前田 「小野さんの横は通れん!」みたいな雰囲気を感じることも多かったです。やっぱ競輪談議は楽しいです。(後編へ続く)

次回インタビュー後編では成田選手の「日本選手権競輪への意気込み」を中心にお届けします。※4月27日(木)18時00分公開(予定)


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