2023/02/01 (水) 12:00 37
1月29日の豊橋競輪「開場73周年記念ちぎり賞争奪戦(GIII)」の最終日、12Rの決勝戦は物議を醸した。前受けになった脇本雄太(33歳・福井=94期)がそのまま逃げて、押し切って優勝。古性優作(31歳・大阪=100期)が差せずの2着で近畿ワンツーだった。
2車単140円、3着が坂井洋(28歳・栃木=115期)で3連単450円という人気に応えた。初手で8番手になった山口拳矢(27歳・岐阜=117期)が、一度脇本を抑えてレースを動かし、後方において…かと思われたが、山口は動かなかった。
もはや動けなかったのかと思う。
優勝を考えた時に、その可能性が減じると体が感じてしまったか…。ここにレースのポイントはあったのだが、まずもってそういうことを感じさせた脇本の勝ちだったと思う。シリーズの間、またこれまでをもって「どうやったら勝てる」から「何をやっても勝てない」に対戦相手のマインドを落とし込んでいる。
とはいえバンクコンディションも厳しい状況の中、古性からも押し切った走りは圧巻の一語。ここまで強い選手を見ることは、もしかしたら今後数十年ないかもしれない。「何だったんだ、あのレースは!」と思う以上に、そのすごさを感じ、脇本の走り、戦いに目を向けてほしいと思う。
3番手にいた坂井洋(28歳・栃木=115期)もサラ脚の状態。タテ脚でGI上位で戦っている選手ですら、まるで及ばなかった。
イヤになるほど強い選手を見られるのは本当に今だけかもしれない。かつて大相撲の「北の湖が強過ぎて面白くない」と相撲ファンがその取組にあまり興味を持たなかったほどだと聞く。その逸話が思い出されるほどだ。
加えて競輪はファンの車券を背負っている。上述の人気ぶりに応え切った脇本の価値は容易には評しようがない。今回、すぐに迫る奈良競輪「開設72周年記念春日賞争覇戦(GIII)」は2〜5日の4日間。どれだけ強くて、どれだけすごいことをやっているのかを感じてほしい。
豊橋の脇本を見た後、対戦選手たちが問われることになる。この奈良記念でどう抵抗するのか。昨年の決勝は後方において不発にしたケースもある。平原康多(40歳・埼玉=87期)や新田祐大(36歳・福島=90期)と佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)は脳内で様々な考えを巡らせていることだろう。
今年のGIタイトル奪取にすべてをかける小松崎大地(40歳・福島=99期)にしても、脇本に勝たないとそれはないことは明白。「オレならこうする」を準備してくる。そう、コマツザキ。昨年、競輪祭で新山響平(29歳・青森=107期)がタイトルを手にしたことで、次は…と北日本のファンは願う。
打倒近畿の一手を打ち、小松崎が今年の看板選手になれるのか。今節の注目ポイントになる。新田、慎太郎との並びや思惑がこの先にどうつながっていくのか…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。