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平原康多の勝ちペダル

【#31】“関東の成長”を考えるがゆえの葛藤「平原康多は優しすぎる!」ファンからの声に…

2023/01/26 (木) 18:00 61

2023年も『平原康多の勝ちペダル』よろしくお願いいたします!(撮影:島尻譲)

オフのない競輪選手は、お盆も正月も関係ありません。その中でも平原康多選手は、年末がKEIRINグランプリ、年が明けたら立川G3、地元の主力として臨む大宮G3。こんなハード過ぎるルーティンを10年続けています。今年最初のコラムは、地元記念を終え、ようやくひと息ついたところの平原選手に、現在の心境を語ってもらいました。

◆“また今年も頑張れる“感触を掴んだグランプリ

ーー毎年のことながら、気の休まらない年末年始お疲れ様でした。

 お疲れ様でした。年末年始だけでなく、今年は大変な1年になりそうです。

ーーといいますと?

今年は僕、本厄なんですよ。いつも立川記念が終わると、家族で氷川神社に初詣に行くんですけど、今年は特に念入りにお祓いをしてもらいました。ははは。

ーー初詣くらいしか家族とゆっくりする時間は取れないですよね。

 コロナ前は、競輪祭から関東の地区プロが終わると、海外旅行に行っていたんです。グランプリ前にいったん心をリセットしたいし、家族サービスも出来るので。

ーーこの数年はそれも出来ていないでしょう。

 ですね。でも、クリスマスはケンタッキーをバケツで買って家族で食べて、大晦日はどん兵衛の天ぷらそばを食べました。

ーーめちゃくちゃ庶民派アピールじゃないですか(笑)。

 ははは。セレブな生活なんて送っていませんよ。普通です、普通。

ーー海外旅行にも行けず、年末年始の結果も思い通りとはいかなかったですね。

 う〜ん、うまくいかないなあというのが正直な気持ちですね。

ーーまず、単騎で臨んだグランプリはいかがでしたか?

 新山の後ろを狙うつもりでした。だから初手で郡司(浩平)よりは前にいたかったんです。スタート勝負で負けて、優勝の可能性がほぼなくなってしまいました。優勝を狙うレースじゃなければ、他の選択肢もあったけど、勝ちにいったので。

ーー勝った脇本雄太選手は前日の夜間練習から突然、本調子になったと古性優作選手が言っていました。

 周りをあざむくとかじゃなく、それがワッキーの調整方法なんでしょう。

ーーしかし、強かったですね。

 自分1人の力だけで勝てるのは脇本しかいないですからね。僕たちはラインの力を合わせて、これからどうやって倒そうか考えないといけない。でも、グランプリは切り替えて付いていけたし、また今年も頑張れるなという感触はつかみました。

昨年のグランプリは単騎で挑んだ平原選手(撮影:島尻譲)

ーーグランプリの後はどう過ごしましたか?

 大晦日だけ1日休んで、元旦から立川に向けた練習を開始しました。

ーー本当に休めないですね。その立川G3ですが、東北勢の勢いを感じました。新SS班の新山響平選手の印象は変わりましたか?

 変わっていないから強いし、チャレンジャーの気持ちを失っていないから怖いです。

ーーそれって難しいことなんですね。

 変わってしまうと守りに入るし、守りに入ってしまうと、レースでやるべきことが出来なくなってしまう。新山はやるべきことが出来ていた。もちろん結果は重要ですけど、やることをやっていれば、たとえ勝てなくても競輪のお客さんは賞賛してくれるじゃないですか。

ーー確かにファンは車券が外れても、この選手を買って良かったと思うレースはあると思います。

 ファンにも気持ちが伝わる走りが出来ていれば、選手だって着の良し悪しだけじゃなく、気持ちよく終われることもありますから。

ーー地元の大宮G3ですが、南関の郡司浩平選手、深谷知広選手の並びはどう思いましたか?

 ああ並んだ以上、決勝で郡司が腹をくくったレースをすることは分かり切っていました。だからこそ僕たちは新山を出したらダメでしたね。ホームで大バックを踏まされたし、南関が行ってしまった時点で、どんなに頑張っても僕の優勝はなかったと思います。

「…だからこそ、僕たちは新山を出したらダメでした」(撮影:島尻譲)

「この人のためなら頑張りたい」と思われる選手に

ーー深谷選手が優勝し、新田祐大選手も息を吹き返しました。数年前の競輪に逆戻りしたような感じですが…

 毎年言ってますけど、今が最高潮にレベルの高い競輪をやっていますよ。自分としてもやりがいがありますし、やらなきゃいけないこと、考えなきゃいけないことが山積みです。

ーー今一番、考えなきゃいけないこととは何ですか?

 自分が自力で戦うだけなら考えることは1つだけど、プラス今はラインの意思疎通を考えないといけないので。

ーー自分が前でやりたいのに、後ろを回らないといけないケースもあるでしょうね。

 自分が我を通せば、その場の結果はいいかもしれないけど、ラインとして見映えが悪くなることもある。逆に任せれば、自分だけじゃなくラインの成長につながることもある。常に心の葛藤はあります。

ーー平原選手は優しすぎるという論調もあります。もっとわがままを言えば、タイトル数も増えるのでは? という意見もありました。

 それだと僕の競輪人生が納得のいくものではなくなってしまうんじゃないかな。

ーー今後の競輪人生のビジョンは?

 いつかは弱くなっていくと思うんですけど、周りの後輩達に「やっと弱くなったか」と思われるよりは、弱くなっても「この人のためなら頑張りたい」と思われる選手でいたいですね。

弱くなっても「この人のためなら頑張りたい」と思われる選手でいたい(撮影:島尻譲)

ーー実に平原選手らしい考え方ですね。もうキャラ変は無理ですね(笑)。

 無理でしょうね、ははは。

ーー今年は大変な1年になるという話でしたが、確かに例年なら立川か大宮、どちらかの記念を勝ってスタートダッシュを決めていましたよね。

 相手がいることなので、うまくいかないこともあります。今は「運をためている時期」なのだとポジティブに考えていますよ。

ーーここからの反撃に期待しています!

 葛藤があった分だけ成長出来ると思いますし、遊びで競輪をやっているわけではないので、これからもきちんと勝負をしていきます。勝負をすることで、ライン全体にもチャンスが広がりますから。


埼玉のプリンスへ聞いてみたいことをどしどしご応募ください!

(文中敬称略)

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平原康多の勝ちペダル

平原康多

Hirahara Kota

埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。

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