2022/12/25 (日) 12:00 28
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
伊東温泉競輪開設72周年記念椿賞争奪戦、決勝メンバーが出揃いました。ライン構成、車番は以下の通りです。
①渡邉雄太(静岡・105期)
②嘉永泰斗(熊本・113期)ー⑤山崎賢人(長崎・111期)ー⑨中本匠栄(熊本・97期)ー⑥田中誠(福岡・89期)
③中野慎詞(岩手・121期)ー⑧大川龍二(広島・91期)
⑦野原雅也(福井・103期)ー④村田雅一(兵庫・90期)
今節のシリーズリーダーは深谷知広(静岡・96期)が務めましたが、二次予選で脱落したため③中野が準決勝のメインを務め人気に応えました。③中野は9月の青森記念の決勝に乗ったものの、位置取りの甘さが裏目に出て決勝9着。その後も9車で走る名古屋の共同通信社杯で結果が出ませんでした。コロナ禍で始まった7車の競輪ではレース展開がよく分からなかったのだと思います。7車だと脚力で強引にねじ伏せるレースができても、9車になるとレースの波も違う上に、走るメンバーも上位選手が多くなるので慣れるまで時間がかかります。スーパールーキーと言われる③中野ですらそうなので、他の選手はさもありなんですよね。
7車が売れるからそのまま続けるのではなく、9車の走りに慣れさせた新人選手をS級で走らせないと、真の実力が分からないまま車券を購入するファンは戸惑うと思います。7車と9車の区別をはっきり付けることが必要でしょう。
その中で、③中野はグレードレース3場所目でレースの流れをよく掴んだと思います。準決勝で中団を並走してでも山崎賢人に譲らなかったことは、リスクも伴いますがこれをするようになると外の選手は並走を嫌がって前に動きます。誘導のペースが上がり、誘導員を切るラインが遅くなった今の競輪には有効な手段だと思います。
決勝はどのように動くでしょうか。九州4車並ぶ先頭の②嘉永は前を取ると巻き返しは難しいと思います。ダッシュに難がある上に、後ろから押さえにくるのは勝負根性が座った⑦野原だからです。突っ張れば、⑦野原と踏み合う可能性がありヨコができる野原は⑤山崎のところに降りる可能性もある。そうなれば九州全滅です。できれば中団か後ろと考えるはず。まずは1番外枠の⑦野原が前受けでレースを考えました。
S.⑦④ ②⑤⑨⑥ ① ③⑧
③中野はこのラインなら優勝を狙っていると思うので早駆けの可能性は低いと考えました。中団から③中野の動きに合わせて②嘉永が動きます。
←③⑧
2.←②⑤⑨⑥ ①
⑦④
←③⑧
H.②⑤⑨⑥ ⑦④ ①
←③⑧
←⑦④
B.←⑤⑨⑥ ①
②
本線
⑤山崎が番手を有利に生かして
5ー9ー174
5=7ー491
今度は③中野が前受けで考えます。後攻めの⑦野原がレースを動かします。この初手なら⑦野原が九州分断に動くかもしれません。
S.③⑧ ②⑤⑨⑥ ① ⑦④
2.←②⑤⑨⑥ ① ③⑧
⑦④
←③⑧
H. ⑤⑨
⑥ ①
②⑦④
←③ ⑧
B.←⑦④ ① ⑤⑨⑥
②
別線
3=7ー4198
九州が先手を取って⑤山崎優勝!となるのか、スーパールーキー③中野が初優勝するのか、それとも…と興味深い一戦となりました。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。