2022/12/18 (日) 12:00 33
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
広島競輪開設70周年記念ひろしまピースカップ決勝メンバーが出揃いました。ライン構成は以下の通り。
①松浦悠士(広島・98期)ー⑥山田敦也(北海道・88期)
②坂井洋(栃木・115期)ー⑧田中晴基(千葉・90期)
④原田研太朗(徳島・98期)
⑤寺崎浩平(福井・117期)ー⑨石塚輪太郎(和歌山・105期)
⑦犬伏湧也(徳島・119期)ー③久米良(徳島・96期)
徳島勢が2つに分かれ、⑦犬伏ー③久米と並んで④原田が単騎となりました。これは10月の京王閣記念で原田が「これからは単騎で走りたい」とコメントしたことが始まりです。準決勝が終わり検車場に行くと、松浦を含めた4人で話をしていました。多分決勝の並びのことだったのでしょう。割り込んで話を聞ける雰囲気ではありませんでした。時には久米と原田が話し込み、松浦と原田だったりと各々が思う事を話していたのだと思います。いろんな意見を交わした後、決め手になったのは、原田が「今の自分を貫きたい」の一心でした。それを3人が了承し、久米が犬伏、松浦が単騎の選択になり並びが決まりました。
私は原田に話を聞きたかったのですが、最後まで険しい顔だったので控えました。今年後半からのスランプは、彼を大きく成長させたと思います。後ろを回るとか回らないで値踏みされ、レース内容を評価される世界を自ら卒業したことで、皮肉にも原田はプロとして評価を上げることになったのです。ここに若手が成長するヒントがあると思います。
それでは、レースはどのように進んで行くのでしょうか。①松浦が連日言っているように調子は万全ではないと思います。特に腰を上げて踏み込む時の初速が物足りないのは「車輪が原因なのかもしれない。ただ落車の影響ではない」と自ら分析しています。車輪は実践で走らないと分からない部分も多いので、松浦の初速はいつもに比べて良くないことだけを認識して予想するのがいいと思います。
①松浦の今節の動きでは、前受けして緩んだところを仕掛けるレースは不安が大きいと思います。さらに、グランプリを控えた立場であえてリスクを背負って地元記念を走ることは、どんな手段でも優勝することが唯一と考えているのでしょう。だから初手にはこだわると思います。先行する可能性は⑦犬伏が高いので、その前後が最善です。犬伏が前受けならその後ろ、後ろ攻めならその前です。ここでは一発を狙う⑤寺崎が、前受けでムダ脚を使いたくないと考えて⑦犬伏後攻め①松浦後ろ中団で考えます。
S.⑤⑨ ②⑧ ①⑥ ⑦③ ④
④原田は脚を溜めて捲りたいので動きません。⑦犬伏が動こうとする所を①松浦が動いて3番手を取ります。
打鐘〜H.⑦③ ①⑥ ②⑧ ④ ⑤⑨
←⑤⑨
←①⑥ ②⑧
B.⑦③ ④
調子が悪い中でも優勝を掴むのは①松浦と予想しました。⑦犬伏先行の番手③久米や、①松浦の番手⑥山田が2着に絡むのは想像しづらいので対抗は②坂井です。
本線
1=2-3685
1-3-672
この初手で①松浦が負けるパターンを考えると、前中団の②坂井が⑦犬伏を叩きに行く時だと思います。
←②⑧
H.⑦③ ①⑥ ④ ⑤⑨
この時は、混戦になる可能性が高いので⑤寺崎の出番だと思います。
別線
5-9=1
5-9-4
単騎を選択した④原田、それを尊重した①松浦③久米⑦犬伏。そこに急成長した②坂井⑤寺崎がいて楽しみな決勝戦となりました。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。