2022/10/23 (日) 12:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は前橋競輪場で開催されている寛仁親王牌の決勝レース展望です。
【寛仁親王牌】が行われている前橋競輪場が、屋内バンクとして新規オープンしたのは1990年。その際、400バンクから333バンク(正確には335m)に距離も改められています。
その際、こけら落としの大会としてS級シリーズの大会が行われました。自分も斡旋してもらったのですが、まるで記念大会のようなメンバーが揃った中、決勝に進出した自分は2周ほどの距離を先行して、優勝したのを思い出します。
最初に屋内バンクを走った時には、それまでの屋外のバンクとは空気の重さがまるで違うと思いました。しかも、前橋競輪場は小回りバンクですが、先行有利とならないレースも多く、自力型の仕掛けが早くなると、展開がガラッと変わってしまう難しさもあります。
特に【寛仁親王牌】は全プロ競技で活躍した選手が出場できる大会だけあって、他のGIよりも若手の自力型が揃いました。
レースによっては誘導員が外れる2周半から先行争いが始まった結果、若手選手が失速する一方で、その後ろを走っているベテラン選手たちが決勝に勝ち上がってきました。
決勝の並びは古性選手-稲川選手の大阪ライン、吉田選手-平原選手の関東ライン、松浦選手-井上選手の広島長崎ライン。そして、3車となった北日本ラインの並びは新田選手-小松崎選手ー守澤選手と四分戦になりました。
この決勝は先ほども書いたように、若手の自力型が不在となったどころか、徹底先行をする選手も見当たりません。
その中で3日間を通してバックを取ってきたのが、【寛仁親王牌】を優勝すれば、グランドスラム制覇となる新田選手です。スタートの並びは大阪ライン、関東ラインに続く5番手になりそうですが、新田選手はそこから先行態勢に入っていくはずです。
その時、吉田選手がカマしてきて3番手になったとしても、後ろに小松崎選手と守澤選手を引きつれていますし、ラインの長さも行かずべく、そこから巻き返していけるのではと見ています。
新田選手がレースの主導権を握った時に、初のGI制覇が見えてくるのが小松崎選手です。【寛仁親王牌】は2018年の決勝で5着、2019年は4着に来ているように相性のいい大会でもあり、前橋バンクとの相性もいいのでしょう。
今年も【高松宮記念杯】、【オールスター競輪】とGIの決勝に進出。トップクラスの選手たちとも互角の脚力を持っていることを証明しているだけでなく、この決勝でも同県である新田選手の番手かつ、後ろは守澤選手という、最高のポジションとなりました。
福島所属の小松崎選手ですが、自分と同じ千葉県の出身。頑張ってきた姿も見てきているだけに、ここでタイトルを取って欲しいとの思いがあります。
ただ、吉田選手がそこから突っ張り先行を見せていくと、連日に渡って余裕のある走りを見せている平原選手も侮れません。また、同じくS級S班の古性選手と松浦選手も、調子の良さに加えて、レース感も冴えているだけに、道中の位置取り次第では優勝の可能性も出てきます。
今大会を含めて、残るGIはあと2つ。優勝して出走権利を掴み取りたい選手も多いだけに、道中の展開は目まぐるしくなりそうなだけでなく、ゴール前でも激しい争いが繰り広げられるはずです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。