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【共同通信社杯】ブレイク間近の若手が語る「俺の先行スタイル」Vol.4 石原颯選手

アプリ限定 2022/09/14 (水) 18:00 23

若手の登竜門とされる「共同通信社杯(GII)」が16日から名古屋競輪で開幕します。netkeirinでは先行で売り出し中の若手4選手に注目。最終回は四国・高松をホームバンクとする石原颯選手。先行のやりがいから辛い部分までぶっちゃけて話してくれました。記念競輪では今年2度の決勝進出と成長著しい22歳の本音がここに!(取材・文=netkeirin編集部)

バック回数にこだわって走る理由

人懐っこい“颯スマイル”が印象的(撮影:島尻譲)

ーー今年ここまでを自己評価するといかがでしょうか?

石原 落車の事故が多かったですね、“自己”評価なので(苦笑)。3月のウィナーズカップ(GII)と6月の高松宮記念杯競輪(GI)と2度の落車骨折がありました。特に宮記念杯は調子が良かっただけにもったいなかったです。

高松宮記念杯競輪2日目の西日本二次予選は逃げて1着(3番)(撮影:島尻譲)

ーー宮記念杯は初日から2着・1着での準決勝進出でした。準決勝は巻き込まれる形で…。

石原 避けられなかったです。レース後に映像を見ると「バンクの高い所に避ける」一択だったと思いますが、実際は自分の走路に落車した選手が滑り落ちてきたので、「どうしよう、どうしよう…」と考えているうちに突っ込んでいました。

ーー先日の久留米(FI)2日目は1着でしたが、ひやっとするシーンがありました。

石原 寸前で回避しましたが駆けたいタイミングだったので、緊張して身体が固まってしまいました。

ーー2度骨折がありながら存在感を示していたと思います。6月の取手記念準決勝は強力な自力選手が揃った中で、決勝進出を決めましたね。

石原 ウィナーズカップで鎖骨骨折をしましたが、その後に調子が上がって取手は良かったと思います。記念は決勝に乗りたいですよね。

ーーさらに遡ると、1月の高松記念は3勝、2月の奈良記念は決勝まで進み5車ラインの先頭をまかされました。

石原 高松は地元だったので決勝に進めず残念でした。奈良はラインのために走ったレースですから…仕方ない部分はありますね。記念はまず準決勝に乗ることを目標に置いています。

2月の奈良記念では中国勢4車と連係し、ラインのために先頭で駆けた(桃)(撮影:島尻譲)

ーー準決勝進出を1つの目標に置く理由は?

石原 二次予選は特選メンバーが1人か2人出てきますよね。そこで4着までに入ると自信になります。GIに近いメンバーが揃う準決勝では、自力を出してラインに貢献することを考えているので、挑戦者の気持ちが強い。今年2度の決勝進出はたまたま残ったという感覚が強いです。

ーー逃げ回数、バック回数の数字にこだわりはありますか?

石原 ホームバックを取って逃げの決まり手をつけたいです。バック回数は先行選手としての評価につながると思っていますし、自分自身、相手のバック回数が多いと嫌なので。

ーーベストレースとワーストレースを教えてください。

石原 ベストは取手記念の準決勝(2着)です。自分が持つペースではないペースで駆けましたがゴール前まで持ったレースで、「意外といけるな」と思いました。他ラインの自力は吉田拓矢選手、和田真久留選手、坂本貴史選手とGIのようなメンバーの中で打鐘前から発進して逃げ粘れたのは自信になりましたし、その後の宮記念杯につながったと思います。

ベストレースとして振り返った取手記念準決勝は打鐘前発進から逃げて2着に粘る(赤)(撮影:島尻譲)

ーーワーストも教えてください。

石原 8月のオールスター競輪(GI)初日、9着に終わった一次予選です。佐々木悠葵選手に先切りさせて叩こうと考えていました。脚の消耗を考え、先切りに行ってもらうくらいの感じで切りに行ったら、佐々木選手も渡邉一成選手と踏み合いをして中団が欲しかったみたいで(苦笑)…僕と佐々木選手がお見合いし、結局、一成さんが突っ張って終わってしまったレースでした。

ーー中途半端に終わってしまったと。

石原 宮記念杯以来の復帰戦で脚の感じもわからなくて、競走が久しぶりで頭が追いついていなかったです。自信の無さが出たレースでした。

先行にこだわり始めた理由は熱心なファンが原因!?

ーーデビュー前から徹底先行で活躍したいと考えていたのでしょうか?

石原 先行へのこだわりはなかったです。養成所でも流れ込みで捲っていく事が多かったので。

ーーいつ頃からいまの競走スタイルで勝負しようと思ったんですか?

石原 本デビュー後に同期をエゴサーチすると捲りに対して批判的なコメントを目にしました。捲りはダメなんかな〜と思って、叩かれるなら先行で勝負してみようと(笑)。

ーー熱心な競輪ファンの期待に応えた(笑)…先行は大変だったりしませんか?

石原 いつも、しんどいなと思っています。だから、たまに嫌になるんですよ。嫌になって捲りに変えようとしても着を取れないので、やっぱり先行しなきゃダメなのかと思って先行しています。自分より強い人が先行すると捲れる気はしないので、だったらベテランの選手や仕事をしてくれる選手に後ろに付いてもらって先行したほうが、強い人が飛び、自分のラインで決まる可能性もあります。しんどいですけど先行の良さはありますよ。

ーー先行選手としては170cmと小柄な部類だと思いますが、ストロングポイントは何でしょうか? パワーに優れている?

石原 自転車はパワーじゃないと思います。ゴール前まで脚を残せるペース配分が自分の強みだと考えています。まだ出たとこ勝負の競走はありますが(苦笑)。

ーーレース中、出切った後はひと息つけるものなのでしょうか?

石原 ゴール前まで脚を残し、ハコに差されないようするため、出切った後はひと息つきます。踏み上げていくのが理想ですけど、それまでに脚が残っていないことも多いので、同じペースで踏む時が多いですね。

ーー出切った後にスピードを落とすことはない?

石原 自らスピードを落とすことはありません。出切ったら同じスピードで回すか、踏み上げていくかですね。ただ、同じスピードで回すのは気持ちが弱い時、出て踏み上げた方が脚は楽だし、持つことが多いです。

ーー後ろに付いてもらって走りやすかった選手はいらっしゃいますか?

石原 ここで何人かの名前を挙げるのは正直難しいです。これまで色んな選手に付いてもらってお世話になっているので。誰に付いてもらっても自分の仕事をして後ろの選手に迷惑をかけないように走りたいです。

ーー走っている時に後ろの選手が仕事をしているのはわかりますか?

石原 めっちゃ、わかりますよ。自分のフォームは後ろ向き気味なので、後ろ選手の車輪とか見えますし、相手の動きを見て踏むタイミングを窺ったりします。

先行の難しさは仕掛けのポイント

ーー先行のやりがいは何でしょうか? 難しさはありますか?

石原 逃げ切ったら嬉しいですよ。やりがいは…正直そんなに無いかも。一番1着を取れる確率が高いから先行して逃げます。捲りが決まるなら僕、捲りたいですもん。

ーーそれは、なぜ?

石原 捲りは踏む距離が短いですし、先行はミスでズブズブを喰らう可能性も高い。個人的イメージですが、先行は泥臭い感じがしますね(苦笑)。脇本雄太選手のようなレベルであれば、何車身も離して華やかですが、自分はそんな事は出来ないので、泥臭く駆けるしかない。

ーー難しいと感じるポイントは何でしょうか?

石原 脚を使い切るパターンですね。先行一車だと中団で取り合いしてくれて、前が勝手に脚を使って僕がサラ脚とかありますが、先行2人以上になってくると、踏み合いになるし、出切っても捲りが飛んでくるので、仕掛けのポイントが難しいです。

ーー石原選手が意識している選手は?

石原 同期の町田太我選手です。プライベートで仲は良いですが、競走は負けたくない。同じ先行ですが、脇本選手のような華があるなと思っています。自分は高松、町田は広島とホームバンクは違いますけど、たまに山に行って一緒にマウンテンバイクに乗ったりすることはあるんですよ。

ーーそれは気分転換のため?

石原 違います(笑)、マウンテンバイクは立派な練習なんですよ。めっちゃ心拍が上がる。地脚を鍛える効果があり、ペダリングも綺麗になると思っています。北津留翼選手も乗られていると聞いたことがありますね。

ーー誰かのアドバイスでそういった練習を始めたんですか?

石原 競輪の自転車に少し飽きてしまった時期があって…ロードレーサーも競輪のハンドルに近い形をしているので、乗りたくないな〜と思っていたら、町田がマウンテンバイクを勧めてきたので、マウンテンバイクを買ったら楽しかったです。

ーーご自身の競走で参考にされている選手はいらっしゃいますか。

石原 尊敬できる方はたくさんいますが、自分と似た体格で凄く先行しているの選手がなかなかいないので…理想は太田(竜馬)さんですが、身体能力が違いすぎて…真似できません(苦笑)。

ーー今の課題は何でしょうか?

石原 町田と比べたらトップスピードもそうですし、もがける距離も短い。総合的な脚力不足です。乳酸が溜まった時でも踏めるような練習が必要だと考えています。

乗っていて楽しい共同通信社杯の自動番組

ーー新たに取り組まれている練習はありますか?

石原 オールスター競輪の時に分宿先にナショナルチームに所属している寺崎(浩平)さんがいたので、部屋に通い詰めていろいろ話を聞きウェイトを始めました。それまでは月1くらいのフィットネスレベルでしたが、寺崎さんがナショナルは週3って言っていたので頑張ろうかなと思って。3か月後ぐらいを楽しみにしておいてください(笑)。

ーー得意バンクと理由を教えてください。

石原 スピードが出るバンクが得意ですね。名古屋や岸和田、あと直線が短いバンクや33バンクも好きです。特に奈良は相性が良いんですが、FI呼んでくれないんですよ(涙)。

ーー7車と9車の違いはありますか?

石原 先日の久留米は3か月ぶりの7車でしたが違和感がありました。初日特選と決勝は二分戦で流れがなかったので、やりにくかった。9車だったら誰かが叩いてその上を叩いて…のように流れますが、7車の二分戦だと突っ張られて終わってしまうことも。決勝は打鐘で行って上田尭弥選手に突っ張られ1周で終わりました。

ーー今の競走スタイル、何歳まで続けますか?

石原 僕の理想は、松浦(悠士)さんや山田(庸平)さん、古性(優作)さんみたいな自在です。まあ、そんな事を言っているとコケるので、先行できるうちは先行します。

ーー先行を続け脚力を鍛えていく。

石原 先行を続けることで、将来自在になった時に、手札が増えると思います。石原は先行が無いと絶対に思われたくない。相手から目標にされても自力で何とかできるし、目標がいたら全力でサポートしますというのが理想です。タイトルは…まだまだ遠いです。1歩1歩行きたいですね。毎年競輪祭の権利を取れるようになったら、頑張ってみようかなと思うんですけど今年はまだ記念決勝で3着に入っていないので。

将来を見据えながら今は先行一本で勝負する(撮影:島尻譲)

ーー人の後ろに付くことについてはどう考えていますか?

石原 付けるなら付きたいですけど、ちぎれた時の迷惑かけが凄いので。昨年末のヤンググランプリでは町田の番手で走りましたが、自分は赤板で消えました。単騎2人みたいな感じでしたね(苦笑)。

ーー番手で走る機会は少ないと思いますが、番手は少しずつ勉強という感じでしょうかね。

石原 絶対に後ろに迷惑をかけると思うんですけど、そこは大目に見て頂いて、その分、先行して後ろの人に貢献することで何とか(笑)。

ーー共同通信社杯は2年連続2回目となります。昨年は9着・6着で3走目は落車棄権でした。

石原 初日の一次予選は、単騎が4人の細切れ戦で難しいレースでした。松浦(悠士)さんは位置を取る競走だから僕らのラインの後ろを取るのはわかっていましたが、単騎は誰がどこにいるかわかりません。だからとりあえず「頑張ります」と太田(竜馬)さんに言った記憶はあります。

ーー共同通信社杯の自動番組はいかがですか?

石原 乗っていて楽しいですよ。SSは一緒ですけど番組に思惑のようなものは無いじゃないですか。その方が報われると思うんですけどね。

ーー昨年の借りを返したい?

石原 昨年は調子が悪かったんですよ。落車する時はだいたい調子が悪い時で、普段しない動きをやってこけるというのが多い。今回は調子をばっちり仕上げて名古屋に行きます。久留米から間隔を取っているので100%まで仕上げていきたいですね。

ーー最後に意気込みを聞かせてください。

石原 4日間しっかり先行して頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします!

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