2022/08/08 (月) 12:00 11
8月9〜14日に西武園競輪場で「第65回オールスター競輪(GI)」が開催される。ナイター6日間の激闘で、ガールズケイリンの「ドリーム」、「アルテミス賞」もある。14年ぶりの西武園でのGIはどんな戦いが繰り広げられ、そしてどんな結末となるのか。
14年前…。
全日本選抜が2008年12月に開催され、優勝したのは、当時39歳の三宅伸(52歳・岡山=64期)だった。64期の大エースとして若くして、大ケガもありながらも、GI制覇は当然その手に届くものと思われていた逸材だった。だが、GI決勝に数多く進出しながら、優勝だけは遠い…。そうこうするうちに40歳を手前にし、石丸寛之(48歳・岡山=76期)のまくりを差して、悲願を達成した。その体はボロボロで、歓喜の胴上げを「腰が痛すぎて、断った」という逸話を残した。冬の西武園バンクが、何とも言えないぬくもりに包まれたシーンがある。
今回、取れそうで取れなくて、“取る”…シーンがあるのか…。
暑さはまた厳しいものだが、ナイター開催なのでそこは救いか。しかし、走る選手からすれば暑さは残るだろうし、日々のケアも重要になってくる。最終日最終レースに“どれだけの体力を残しておけるか”もカギになる。
西武園バンクは先行有利という特徴も熱戦に拍車をかけそうだ。長い距離でも先手を取った方が有利。先行選手の負担は大きくなる。脇本雄太(33歳・福井=94期)はどう出る?
現在のような完全体になる前のワッキーなら、とにかく逃げて勝負だっただろう。
今は実力と経験を備え、この選手相手なら強引なレースでなくとも、スピードで上回ることができる…、このレースは多少強引でも先行…、といったシリーズでの戦い方も熟知し、実行できるレベルにたどり着いている。
強いから、優勝候補なわけだが、強さに加えてのものも踏まえて、やはり優勝候補の筆頭だ。
強い相手を倒す時に、一番に思い浮かぶのが2段駆けだ。ラインで力を結集して、番手まくり、その後ろの3番手にいる選手が強い相手をけん制するなど、あらゆる手を尽くしていく。
しかし、現状のワッキーはスピードがすご過ぎて「単純にスピードを乗せてしまうと、その上を行かれる。それはワッキーの思うツボ」という指摘もある。ある時、選手たちがどうやったらワッキーを倒せるかと思案していた。
「ワッキーの前を走る選手を決勝に乗せるのが一番」
ハッとする作戦を口にする選手がいて、これは面白かった。ちょうどワッキーが番手を回って苦戦するレースを見せていたので、これは妙案だった。が、この作戦遂行は難し過ぎる。やはり、ラインの力でワッキーに立ち向かうしかない。古性優作(31歳・大阪=100期)もいて強力な近畿勢力を相手にどうするか。
近畿対他派、の構図が面白い。
石井寛子(36歳・東京=104期)はベテランの領域というより、『ガールズケイリンを作りあげてきた人』という次元だ。佐藤水菜(22歳・神奈川=104期)が究極の強さを身につけてきて、時代を築き始めている。
新しい世代が出てきているが、石井にはいつまでも頑張ってほしい。写真は平塚競輪場のオールガールズの開催前イベントの時。多くの著名人のメッセージが流された時の表情だ。「泣いてるのかな」と思ったもので、後で聞いたら「涙ぐんでたんですよ! うれしくて。それに友だちもたくさん出てきて(笑)」と、感極まっていたそうだ。
そのあまりにも美しい表情は、ガールズケイリンの中にある美しい精神が具現化されていたようだった。ガールズドリームレースは11日、アルテミス賞レースは10日に行われる。美しい戦いを、待とう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。