2022/07/06 (水) 12:00 17
福井競輪で7月7日から開幕する開設72周年記念「不死鳥杯(GIII)」。5月、いわき平競輪のダービーを制した脇本雄太(33歳・福井=94期)は「当面の目標は福井記念」と何度も口にした。
FIで福井を走ったのがダービーのすぐ後。しかし、初日特選で2着に敗れてしまった。
「クッソー、翼、オレの時だけやるんだよな」。
打鐘から仕掛けた脇本は裸逃げになってしまい、まくり追い込んだ北津留翼(37歳・福岡=90期)の上がりタイムは10秒8。凱旋シリーズだったが、北津留がいきなり土をつけてしまった。
意気消沈のファンの姿も見えて、「火が点いた」。北津留の一撃が、脇本の心のドアを強引に、もう一度、開けた。福井で…。
脇本は日本代表の立場となり、日の丸を背負い、今、競輪界を背負って戦っている。そこに行きつくまでは長かったし、流した涙は若狭湾から近隣の韓国、北朝鮮に中国やロシアにとどまらない。アルゼンチンもマダガスカルも近く感じるほどだ。
とにかく思い出すのは2010年大会の最終日。準決で5着だった脇本は、最終日の特別優秀を走った。前受けの吉本卓仁(38歳・福岡=89期)に突っ張られて終わり。9着だった…。当時吉本が26歳で、脇本は21歳だった。
脇本は涙を流して、悔しさを力に変えていった。初めて走った福井記念で、死にたくなるような思いをしたのだ。この場所でだけは、譲れない。ひたむきに、4連勝を、それでいて丁寧につかみにいく。
古性優作(31歳・大阪=100期)の参戦もあって、近畿独壇場の前振りだ。S班は宿口陽一(38歳・埼玉=91期)がいて、当初は清水裕友(27歳・山口=105期)があっせんされていた。
しかし、清水が欠場となり、追加あっせんは松浦悠士(31歳・広島=98期)。日本で一番「ワッキーに勝ちたい」と思っている男だ。「マジかよ! 」と脇本は叫んだかもしれない。清水も当然強敵だが、むき出しで挑んでくる松浦の参戦が、もう一度、心に火を点ける。
脇本は今回、燃える。ワッキーでない。“ワキモト”が燃える。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。