閉じる
前田睦生の感情移入

古性優作の優勝の裏にある岸和田の連係プレー、そして競輪を盛り上げるとはどういうことか…

2022/06/20 (月) 12:00 22

古性優作が誇らしい優勝を飾った

古性優作と岡崎智哉

 岸和田競輪場で6月19日に最終日を行った「第73回高松宮記念杯競輪(GI)」に浪花のドラマがあった。KEIRINグランプリ覇者として、グランプリジャージを着て戦う地元GIシリーズ。

「こんなに光栄なことはない」と古性優作(31歳・大阪=100期)は緊張していた。

 決勝に近畿から勝ち上がったのは古性一人。ただしこれは、“近畿の力で勝ち上がった”というところにすべてがあった。初日特選では野原雅也(28歳・福井=103期)の頑張りがあった。2日目の白虎賞、3日目の準決は岡崎智哉(37歳・大阪=96期)が前で戦ってくれて、1着を手にした。

 競輪選手なら誰しもが思うだろう。脇本雄太(33歳・福井=94期)のように強ければ…。圧倒的な力でねじ伏せて勝ち上がっていければ、どれだけいいかと。しかし、ワッキー以外の選手の実力は拮抗している。やはり、ラインの、仲間の力を必要とする。

古性優作の人間力

KEIRINグランプリ覇者の責任を全うした

 どんな開催でも主役は、また主役の候補は限られてくる。今回は古性。特に近畿勢からすれば「古性を…」「古性さんに…」「優作が…」という思いが、口に出すほど大事だった。

 そんな思いを背負って一人で戦った決勝を勝ち切ったすごさは、美しいとしかいいようがない。業務でバンク内でレースを撮影することになっていたので、レースを、そしてレース後の風景を目の当たりにすることができた。

 岸和田競輪場に満ちた祝福と歓喜の声。「コ!ショ!オ!、コ!ショ!オ!」。背中がゾクっとした。

 GI決勝はこれまで検車場で見ることにしていた。一緒に走っている選手たちの緊張感の中で見るのが好きだったし、そこで聞いたさまざまな声をファンに届けることを意識していた。

 コロナの影響でそれもできなくなり、距離を取ってみることが増えていた。緊張したが、それを上回る感動があって、足が震えた。

競輪の盛り上げ方

大阪勢は死力を尽くした

 まさにシリーズを通してドラマを生むことが、ファンにとって最大の喜びになる。各選手が力を出し切り、合わせ、熱いレースが行われることが一番だ。

 しかし、時代は先へ先へと進んでいる。今回、それを上回った男がいた。

 ラップ担当・岡崎智哉(37歳・大阪=96期)だ。自身のライフワークともいえるラップを選手紹介などで披露し、ファンの心を一気に惹きつけた。

 99%の熱い思いと1%の笑い。「俺たちとひとつになろうや」。岡崎のラップに導かれ、レースへののめり込み度は格段に上がった。競輪でも、こんなことができるんだ…。諸規制のことを考え過ぎて、なかなか踏み出せない一歩があるが、岡崎は「そうじゃない」ことを証明してくれた。

 ファンが競輪を楽しんでくれる、それを、やる。多くの関係者に、それを教えることになったはず。持つべき勇気を与えてくれた。

岡崎智哉(左)が輝いていた


Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のTwitterはこちら

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

前田睦生の感情移入

前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

閉じる

前田睦生コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票