2021/02/16 (火) 18:00 0 8
競輪の長い歴史の中で一時代を築いたレジェンドたち。彼らが当時のレースを振り返り、本年行われる同レースの見どころを話す特別企画「レジェンドインタビュー」。第1回目は、2005年に読売新聞社杯全日本選抜競輪で優勝した加藤慎平さん。当時異例だった「中部の別線」のウラ話や、今年注目の選手を語ってもらった。
2021年2月20日より開催される、読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)。本大会は1985年に全日本選抜競輪という名称で始まった。初期は夏季に開催されていたが、数度の変更を経て、現在は冬季に行われている。
全日本選抜競輪は、各都道府県で優秀な成績を残した者から選抜されるが、その条件は大変厳しい。競輪界での活躍だけではなく、トラック競技で活躍した者も選抜されるのが他のレースとの大きな違いだ。
全日本選抜競輪とは、競輪選手にとってどんなレースなのか。どういった思いで走るのか。2005年のタイトルホルダーであり、netkeirinでコラムを執筆する加藤慎平さんにインタビューした。
2005年、岸和田競輪場で行われた全日本選抜競輪 最終日S級決勝に出場した選手は、①海老根恵太、②小嶋敬二、③金子貴志、④山口幸二、⑤村本大輔、⑥小橋正義、⑦加藤慎平、⑧前田拓也、⑨合志正臣の9名。16年前に行われたレースであるが、今もなお第一線で活躍する選手も出場している。
ライン戦で4車並ぶと、3番手、4番手の選手はチャンスが少なくなってしまうので、誰もが平等にチャンスのあるレースができるようにと別線で勝負することになりました。これは誰かの意見ではなく、4人の総意でした。
どなたとも連携することはありましたが、直近のレースでたまたま小嶋さんと連携することが多かったので、自然と小嶋さんの後ろにつくことになりました。金子さん、幸二さんは中部の仲間ですが、そのときはライバルのラインとして意識しました。「二人ならどう動くか?」を小嶋さんと考えましたよ。
当時の中部は地域の繋がりがとても強かったので、普段チームで走っている人たちが別線になることは珍しかったですね。
とにかく小嶋さんの力を信じてついていくと決めていました。金子さん、海老根さんともに力のある自力選手でしたが、自分は小嶋さんが一番強いと確信していました。小嶋さんについていけば、どこかでチャンスがあるはず、と。
まくりでの勝負が多かった小嶋さんが、レースの展開で先行態勢に入ったとき、「これは最大のチャンスかもしれない!」と手に汗握りました。
位置取り争いののち、打鐘でまくり上げる小嶋ライン。小嶋さんは当時、日本一の先行選手と言われていた。(提供:岸和田競輪場 協力:公益財団法人JKA)
その頃は選手として一番充実していた時期で、どんな対戦相手でも1着をとれる自信があったんです(笑)。2004年末から2005年の1月にかけて10連勝を達成したり、GIの決勝に上がったりと波に乗っていました。競走得点もかなりの期間1位でしたし、周りからも「いつでもとれる」と言われていました。それでもGIをとることができない自分に苛立っていました。そんな矢先に大ケガをしてしまい、その後しばらくは療養のため欠場しました。復帰をしてからもある程度踏めていたけれど…難しい時間でしたね。
そんな状況を経て、「タイトルがとれると強く思っていても、とれないものなんだな…」という冷静な気持ちで全日本選抜競輪に挑みました。そういう風に思っていた時、とれたんです。
GIを獲得するには当然脚力や自信が必要です。しかしG1という特別なレースで勝つにはそれだけでなく、その日が“加藤慎平の日”でなくてはならないのだと思いました。出走する9人誰もが血のにじむようなトレーニングをしてレースに挑みます。だから勝つにはほんの少しの幸運が必要なんです。自分より確実に強い選手のいるなかで優勝できたからこそ感じました。まぁ勝負師としてはこんなことを言っていいのかわかりませんけどね…(笑)。
今思うと70点ですね(笑)。当時は根拠なく、とにかく練習を頑張ればなんとかなるだろうとすべて感覚で練習していました。体をいじめていただけですね(笑)。
後輩選手のサポートやフィットネスジムを経営するようになって、当時より客観的に筋肉を見られるようになりましたし、どの筋肉を強化すれば自転車を進ませる力が上がるか、根拠づけて考えられるようになりました。トレーニングひとつとっても、どういう意味があるか理解して取り組むことができる。強くなる為には色々な道がありますが、今なら最短距離で目標まで進める自信があります。若いときはこういうことに気付かないものなんですね(笑)。あの頃の身体能力に、この知識が加わっていたら…って、誰もが思うことだと思います。
ボディーメイク的な筋肉の付け方、ダイエットもお任せ下さい(笑)。
まず、愛知の吉田敏洋選手。僕の盟友です。同じ中部の選手で、数少ない同世代。僕の前で何十回も真っ向勝負を挑んでくれた人間です。苦しい年月を過ごしながらも今でも一線級で走り続けていますが、まだタイトルには縁がない。先日の豊橋記念で優勝して「吉田敏洋健在!」を見せつけましたが、彼の状況を考えるとレース1走1走をラストチャンスのつもりで走らなければなりません。現在、浅井康太の孤軍奮闘だけが目立つ中部勢。援軍は厳しい状況ですが、なんとしてもタイトルを1本とってほしい選手です。
もう一人は、茨城の芦澤大輔選手。ライン競走を大切にする昔ながらの追い込み・マーク型です。20代のときに関東でナンバーワン追い込みと言われていた頃もありましたが、重度の腰痛持ちで好調・不調に波がありました。それでも、持ち前の根気強さで何度も何度も復活を果たしてきたんです。ラインの切れ目から縦脚で勝負するような走り方はしません。関東筋の目標がいなければ、今でも先手の番手勝負を繰り返す。味のある、骨のある芦澤選手に、「競輪」をもう一度魅せてほしい!
当時の全日本選抜競輪はグランプリ直前に行われており、グランプリの出場権を手にするラストチャンスのGIレースでした。グランプリの最後の枠を賭けて戦うので、選手も士気が高まっているし、ファンの方々の注目度も高かったです。
今の全日本選抜競輪は、GIレースの開幕戦に位置していますね。グランプリ出場を狙う選手はここで決めておくことで、精神的に余裕を持って中盤戦に向かうことができます。なんとしても決勝戦に進出し、高額賞金を積み重ねたいのが本音でしょう。
GPの余韻冷めやらぬ中、新たなスターが誕生するかもしれません! 2021年最初のGIレース、楽しんでご覧ください!
優勝選手を予想してamazonギフト券を当てよう
▶全日本選抜競輪キャンペーン
netkeirin特派員
netkeirin Tokuhain
netkeirin特派員による本格的読み物コーナー。競輪に関わる人や出来事を取材し、競輪の世界にまつわるドラマをお届けします