2022/04/11 (月) 12:00 11
競輪で最も重要な情報は何だろうか。
おそらくその一番上にあるのは、“車券を当てるためにヒントとなるもの”だろう。誰が逃げて誰が有利に運ぶ。突き抜けて強いこの選手の勝つ可能性が高い。荒れ模様なので、手を広げた方がいい、など。
昔は競輪の並びに関するコメントはなかったので、どう並ぶかを当てられることが重要だった。競りになるなら、それを推理できる。先人たちの脳みそをのぞいてみたいと何度思ったことか…。
選手の性格、人柄、バンクの特徴を知っていることが武器だった。そして行われるレースの激しさに酔いしれていった。1948年から愛されている、かけがえのない競技が“競輪”である。
しかし、時代は変わる。必要とされるものも変わっていく。
報道媒体の進化と、特にインターネットの登場で選手の姿はファンにとって近くなった。もしかしたら、インターネットの登場と同時にファンとの間に壁を作り、並びのコメントは出さない、推理こそ競輪、という一手を打つ可能性もあったかもしれない。
しかし、情報を求めるファンの波は止められなかっただろう。選手は胴元、運営サイドの所有物ではなく、すでにファンのものだったからだ。
選手とファンが熱い時間を共有できることが、競輪の奇跡といっていい。追いかけている選手の車券を当てて、その晩に飲む酒のうまさに勝るものはない。たとえ負けてしまっても、冷蔵庫の奥でひからびた豆腐でも引っ張り出して、かみ砕いていれば味がする。
SNSは特にその流れを助長した。ファンが応援できる選手を見つける機会が倍増した。4月から記者など、個人アカウントでの投稿に規制がかかるという話が出てから、「えっ、もう何も見れなくなるんですか」「つまんなくないですか」という声を多数いただいたので、まずは「ご心配なく」とお伝えしたい。
取材記者は基本的にどこかの社に属していて、その社のアカウントなら投稿可能。私個人でいえばTwitterの「東スポ競輪班」というアカウントがあるので、そこで投稿できる。今までは、若干の下ネタや、わずかに下品、そこはかとなくいやらしい、といった感じのものは社として出すとカッコ悪いから、で個人アカウントを使っていた。
ほかの記者も面白いネタを拾ってくれるので、しょうもないものから、なぜあんな走りになったか、今回のレースへの腹の中の思いは…といったものは「東スポ競輪班」に集約して投稿していく。『規制』と聞くと悪いイメージが浮かびがちだが、対応すれば何というものでもない。
春と秋のない気候になって日常がとげとげしい。コロナやウクライナ侵攻といった悪夢が、事態に拍車をかける。いたたまれない心が不安を生んでしまうこともあるが、選手もファンも熱量は増すばかり。
選手とファンを信じて、記者は記者の仕事をする、ということだ。
Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。