2024/12/09 (月) 17:00
KEIRINグランプリ2024のメンバーが決定した反面、S級S班の座を守り通せなかった選手がいる。松浦悠士、佐藤慎太郎、深谷知広、山口拳矢の4人がそうである。それぞれの思いはあるだろうが、心に秘めているのは、来年の奪還であろう。
S級S班の座は12月26日まで。競輪祭後、S級S班の証しである赤いパンツを履いてレースには参加できる。以前はグランプリ出場を逃した瞬間から、赤いパンツを脱ぐ選手もいた。それは選手としてのプライドであると考えられていたが、逆に今の時代は、期間いっぱいS級S班として走る。これもまた責任感、プライドと言えるだろう。
昨年のグランプリチャンピオンとして今年1年、1番車を背負ってきた松浦悠士。変幻自在な動きは、ファンが喜ぶところでもある。だが今年はケガに泣かされ続けた。少し良くなってきたと思えば、また落車。1日たりとも満足いく日を過ごせたことはないだろう。競輪祭はドラマチックだった。脇本雄太が優勝で、松浦が2着なら逆転でグランプリの出場権を得たが、結果は3着。これもまた競輪だろう。
競輪祭終了後の大垣記念G3。優勝こそならなかったが、決勝3着の結果を残した。4日間の走りをみて感じたのは、悔しさより、新たな一歩をしっかり踏み出しているなという印象だった。もちろん、来年のS級S班にかかわることは、1月1日からなのだが、松浦はすでにスタートを切っているように思えた。ファンを第一に思う松浦だからこそ、自分の役割を理解しての走りだった。
「全国300万人の…」で始まる佐藤慎太郎。競輪祭は勝ち上がれず、4走目の特選で落車をした。そして欠場。佐藤ほどファンに愛される選手はいないだろう。48歳にして番手の仕事を完璧にこなし、返す刀でズブリと抜く。一部では年齢のことをあげるが、筆者は問題ないと考えている。なぜなら佐藤のボディーを見れば一目瞭然。どれほどのトレーニングをしているのかと思えるほど、鍛え上げているからだ。1年でS級S班に戻ってくる可能性は高いと見ている。
深谷知広も無念だろう。最後の最後まで地元・静岡のグランプリ出場を目指したが、一歩及ばなかった。
昨年のダービー王である山口は正直、今年は目立った成績を残せなかった。S級S班の重圧なのか、山口らしいキレが見られなかったように感じた。ただ、天性の素質は衆目が一致するところ。来年に期待を抱かせる走りだったと言えるだろう。
S級S班はプレッシャーとの戦いである。そのプレッシャーに押しつぶされた選手は何人もいる。その座をキープする難しさもある。だがそれは、2400人いる選手の中で9人だけの特権でもある。責任感とプライドを感じられるポジションなのだ。
Text/Norikazu Iwai
Photo/P-NAVI編集部
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター