2024/10/07 (月) 17:00
9月29日の青森記念G3決勝で、久々に激しい攻防、競輪が見られた。
優勝したのは伏兵の佐々木眞也。父は名レーサーだった龍也。兄と弟も選手という競輪一家の次男坊だ。
このレースの注目は、やはり地元の新山響平だった。KEIRINグランプリに向け、少しでも賞金を上積みしておきたい新山。決勝は高橋晋也というこれ以上ない目標に恵まれた。さらに守澤太志、永澤剛までいて東北は4人。盤石の布陣と思われた。
しかし、フタを開けてみれば、眞杉匠が打鐘から高橋の後位で新山と競り。それもただの競りではなく、これでもかこれでもかというほど、しつこく激しかった。新山も応戦したが決着はつかず、新山は内から、眞杉は外から捲り勝負に持ち込んだ。そこをサラ脚の佐々木が、7番手から捲り、嬉しい記念初優勝を決めた。
眞杉の戦い方だが、自力型として真っ向から勝負をして欲しかったと思うファンもいる反面、バランス型の眞杉だけに、競りも上等だという意見も聞こえた。眞杉が番手にこだわったのには、関東の雄としての立ち位置を意識したように思えた。自力だけではなく、こうやった激しいレースを見せておくことで、今後の戦いを優位に進めることができるのではないだろうか。ただの競りではなく、地元の新山に競ったことに、意味があると思える。寛仁親王牌、競輪祭だけでなく、12月30日の「KEIRINグランプリ2024」を見据えた戦い方だったと言えるだろう。勝った佐々木の強さも見事ではあったが、筆者はそれ以上に、眞杉の勝負に対する執念を感じた。まだまだ発展途上で、毎日毎日、進歩しているようにも思えた。
地元で敗れた新山だが、辛うじて賞金ランクは9位にとどまっている。この位置は毎年のことながら、ボーダーではなくボーダー以下だろう。優勝を義務づけられた地元記念は期待に応えることができなかったが、これもまた競輪だろう。意気消沈するどころか、悔しさを力に変えられるのが新山だと思っている。
小田原記念の南関東7車連携、向日町記念での近畿別線力勝負と、話題に事欠かない最近の記念だが、この青森もまたファンの脳裏に焼き付いたことであろう。
佐々木もこの思い切りの良さがあれば、もっともっと上のステージで活躍できるのではないだろうか。そのためにも次走(川崎G3)が大事なのは言うまでもない。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター