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近畿の新たな時代

2024/09/13 (金) 10:20

向日町記念を制した脇本雄太

脇本雄太と窓場千加頼がデッドヒートを繰り広げた向日町記念・平安賞は脇本の優勝で幕を閉じた。向日町競輪はこの後、大幅な改修に入り、リニューアルオープンは2029年とのこと。一時期は売り上げが低迷し、存続が危ぶまれたが、見事に回復した。生まれ変わる競輪場は、競輪だけでなく複合施設となる。ベテランにとっては、それこそ最後の地元記念になるかもしれないシリーズであった。

決勝には近畿から脇本、窓場、山田久徳が勝ち上がった。果たして、並びはどうなるのか?報道陣も固唾を飲んでコメントを待っていたらしい。出した答えは別線。窓場に山田の地元勢。脇本には関東の武藤龍生がつけた。

近畿は別線勝負を選択した
レースで先行したのは清水裕友。窓場は5番手、脇本は8番手。脇本が最終1コーナーから捲ると併せて窓場も捲る。向日町バンクの特性を考えるなら、脇本は届かないと思われた。
しかし、脇本は大外を伸びて、わずかに窓場を捕らえた。「どちらが勝ったかわからなかった」と、脇本が言うくらいの接戦だった。窓場も「勝ったと思ったが…」と悔しがった。しかし、どこか清々しい2人でもあった。
「近畿はガチンコ」と誰かが話した。脇本も窓場も連携することはあるが、決勝の舞台ともなれば、それぞれの思惑が交錯する。脇本と窓場の2人なら連携もあっただろうが、山田がいる以上、メンバーが決まった時から近畿の中では「別線」が当たり前のようにあったのだろう。
脇本は、これで大会3連覇(出場時)。初の記念制覇を惜しくも逃した窓場であったが、同地区が真っ向から勝負する姿は、これぞ競輪とファンを唸らせた。勝った脇本以上に、窓場が得たものは大きかったように思える。脇本・窓場・山田で並ぶと考えたファン、報道陣もいたはずである。それを覆し、脇本とガチンコ勝負を選んだ窓場は素晴らしいと思う。
窓場千加頼
脇本、古性、これに窓場が加わった近畿は、新たな時代を迎えた。
窓場はいつタイトルを獲ってもおかしくないほど、成長を遂げた。これによって脇本、古性も精神的に楽になったはずである。窓場の現在(9月13日現在)の賞金ランクは9位。グランプリ云々の話をする報道陣もいると聞くが、窓場自身は賞金での出場は考えていないように感じる。だからこそ、決勝で脇本との別線勝負を演じたのだろう。残りのG1は寛仁親王牌と競輪祭。今の窓場の勢いを考えれば、どちかで優勝してもおかしくない。
今回の向日町記念で窓場が選んだ道は、必ずや近いうち、実を結ぶだろう。

Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部

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岩井範一

Perfecta Naviの競輪ライター

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