2020/11/16 (月) 09:08
11月18日からいよいよ『KEIRINグランプリ2020』(平塚競輪場)最後の椅子を巡る争い第62回朝日新聞社杯G1競輪祭(小倉競輪場)が始まる。ナイター6日制、予選ポイント制になってから今年で3回目。誰が勝って?誰がグランプリに滑り込むのか?開催が始まる前からワクワクしている。競輪祭については次の機会で詳しく書こうとしよう。
11月12日、深谷知広(愛知96期)が愛知から静岡への移籍を自らのブログやSNSで発表した。東京五輪を目指し、拠点を伊豆に移して活動していただけに、地区的な驚きは感じなかった。しかし、まさか移籍するとは思いもよらなかった。ビッグネームの移籍で思い出すのは群馬から東京へ移った後閑信一(東京65期・引退)だ。しかし、後閑の移籍は家族の進学問題などの要因があったと、記憶している。深谷の場合は2024年パリ五輪を見据えてのことだろう。言うまでもなくナショナルチームの拠点は伊豆ベロドロームだ。新田祐大(福島90期)も脇本雄太(福井94期)も本拠地を離れての活動になっているが、登録地は変更していない。そのように考えると、深谷もこのまま愛知籍で構わないうとも思うのだが、彼なりの考えがあったのだろう。ブログの文章を読んでみると、競輪選手としてもう一段階上のステージを目指したい、その気持ちが強く感じ取れた。環境を変えることによって、成績が大きく伸びることは多々ある。
プロ野球界での例になるけれども、今年、楽天イーグルスから読売ジャイアンツに移籍した高梨雄平あたりはそれに該当する。貴重な左腕として能力は高く評価されていたが、楽天では出番がなかった。それが7月にトレード移籍すると、抜群の安定感で読売の2連覇に大きく貢献した。もう少し前ならば読売から北海道日本ハムファイターズに移った太田泰示だろう。読売では期待されながらも結果を残せなかったが、日本ハムに移籍したらホームランを量産。押しも押されぬ中心選手になった。他にもプロスポーツ界において同様の例はたくさんある。
トップレーサーの深谷だが、G1タイトルは『高松宮記念杯』と『寛仁親王牌』の2つである。2つ獲るのも容易なことではないが、深谷クラスならばもっと獲っていてもおかしくない。ライバルとも言われた脇本は東京五輪の代表に加え、G1でも圧倒的な強さを見せている。G1タイトル数はこの2年で5つ。同じく代表の新田は今年こそ無冠だが、存在感を随所で見せている。五輪を見据えた深谷の移籍ではあるけれども、やはり、重きを置いているのは競輪選手としての成長だと感じる。
競輪祭は愛知県の深谷として出場し、静岡への移籍はその後になるらしい。南関東勢にとって、これ程までに喜ばしいことはないだろう。だが、一つだけ気になるのは南関の追い込み屋たちが果たして深谷のダッシュにつけ切れるのかということだ。ナショナルチーム仕込みのダッシュは想像以上に爆発的だ。離れたりしたら、それこそプロとして恥ずかしい。深谷の移籍によって、南関の選手たちが自らを見直す機会を得たとも言える。惰性で今の地位に甘んじている選手がいるとしたら、喜ばしいよりも良い刺激になるだろう。もっと簡単に言ってしまえば__タイトルに物凄く近い位置を回れるということだ。それを生かすも、殺すも自分次第。深谷だけでなく、今後は南関地区の選手たちにも注視していきたい。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター