2020/10/29 (木) 16:00
10月18日に終わったG1第29回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントは、脇本雄太(福井94期)の強さが際立った。手がつけられないとは__このことを言うのだと改めて感じた。2着は新田祐大(福島90期)。来年の東京五輪でメダルへの期待が寄せられる両者のワンツーであった。世界の脚と、言ってしまえばそれまでだが、力の違いをまざまざと見せつけられた。今回の決勝はネットで観戦したのだが、画面越しにも“脇本無双”だと思えた。
ただ、脇本、新田以外の選手は一体、何をやっていたのか?とも感じた。3着の東口善朋(和歌山85期)は必死に脇本に食い下がっていた分、頑張ったかなと、思う部分はある。新田と連携した5着の守澤太志(秋田94期)も同様。話題を集めた山田英明(佐賀89期)、庸平(佐賀94期)の兄弟、初タイトルを狙う郡司浩平(神奈川99期)。そして、旬の松浦悠士(広島98期)らは最も強い脇本が逃げて、それを捲る作戦だったのか。もちろん、彼らもプロだから思惑はあっただろう。しかし、見せ場がないと、ファンは納得しない。そういう筆者もネット観戦をしていて、脇本が主導権を握った時点でレースを見る気を失った。もう少し駆け引き、動きがあることを期待していただけに寂しく感じてしまった。まさかとは思うが、もしもグランプリ出場を考えての競走ならばプロとしていかがなものだろうか?単純なレース展開はファン離れを引き起こす原因になるかも知れない。
さて、今年のグランプリ出場争いだが、賞金ランキングで平原康多(埼玉87期)、郡司は安全圏に入ったと、言えるだろう。しかし、10月23日現在、6位の和田健太郎(千葉87期)以下は気が抜けない日々が続く。10位の新田にしても、このままならグランプリ切符を手にすることはできない。新田は競輪祭が最後の決戦とのことだが、それまでの他選手による記念戦線が重要になってくることを忘れてはならない。しがみついて権利を取るのか、それとも勝ちにいって取るのか。ここにプロとしての心構えが分かるというものである。
大会自体は大成功、売上も目標の85億円を超え、85億4,077万4,100円で前年比126.1%。ただ、筆者は前年比に関して、あまり重要視していない。目標に届かなくても前年比プラスというところもあるが、それは結局のところ、言い訳だと考えているからだ。
決勝はネット観戦だったが、実は開催2日目だけは競輪場で勝負していた。そこで「ソコソコ前橋はファンが入っているな」と、感じた。ファンの熱気でドーム内が暑かったくらいだ。コロナ禍以降、ネット投票を利用するファンも増えていて、それは業界的にマイナスではないのだが、やはり、現地でレースを楽しむのは公営競技の醍醐味の一つであることを再認識した。
不満を言えば喫煙所だ。筆者は煙草を吸わないが、歩いていたら、場内の喫煙所に相当な人数が入っていることに気づいた……まさに密。喫煙所の入口には人数制限などの注意書きはあったのだが__。その時は警備員も喫煙所前にはいなかった。売上は目標を上回り、ファンの熱気も感じていただけに、これだけは残念でならない。検温、消毒は当たり前のこと。本当にコロナ対策を謳うならば密になりそうなスペースにはさらなる配慮が必要だろう。些細なことかも知れないが、こういったところをもっとシッカリやっていくことで、いつしか世間の競輪を見る目は変わっていくのではないだろうか?
競輪祭は前橋と同じドームの小倉競輪場で行われる。入場者制限のため、現地へ足を運ぶことはできないが、喫煙所を含め、場内のコロナ対策は万全であったかを知人に聞くつもりである。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター