2019/01/09 (水) 16:50
場内観客22,000人と全国の競輪ファンが熱狂したKEIRINグランプリ2018(静岡)、売り上げは目標に届かず、前年を下回ってしまった。それでも、初めての静岡開催はまずまず成功と、言えるのではないか。もちろん、課題も多くあった。運営面ではないのだが、知人が外の飲食ブースでトラブルがあったことを教えてくれた。
「あるブースにズーッと、並んでいたんだけど、ようやく自分の番になって注文したら、そのメニューのもの既に売り切れたって。それならば売り切れとか分かるようにすればいいものを、優しくないよね。結局、他のブースへ並ぶことになったんだけど」というような不満を漏らした。お客様を第一に考えるならば、サービス業こういったところからシッカリやるべきであろう。
肝心のKEIRINグランプリ2018だが、ご存知の通りで優勝したのは三谷竜生(奈良101期)だった。近畿4車が前を取るだろうという大方の展望だったが、結果的に近畿は後ろ攻めを選択。赤板の第2コーナー過ぎ、脇本雄太(福井94期)が三谷、村上義弘(京都73期)、村上博幸(京都86期)を連れて発進した時は、近畿で上位独占の青写真ができていた。しかし、そう簡単に事態は進まない。三谷は絶好の展開を活かしたが、3番手の村上義が平原康多(埼玉87期)と接触して落車。後方から捲ってきた浅井康太(三重90期)が2着、新田祐大(福島90期)が3着となった。
優勝賞金1億160万円(なぜ160万円という半端な数字が出てくるのかは分からないが)を加え、三谷の獲得賞金は2億5,000万円を超え、史上最高となった。ただ、注文をつけるなら、三谷は2018年のG1レース2勝とグランプリ、全て脇本の先行を利してのもの。追い込みが悪いと言っている訳ではないが、今年こそは自力でタイトルを獲ってもらいたいものである。
三谷が歓喜のゴールをしていた頃、まだゴールに到達していなかったのが平原だ。落車した村上義は棄権したが、平原はひしゃげた自転車にまたがりゴールを目指した。ゴール線30m前までくれば、担いでも、引きずってでもゴール可能。しかし、それ以前は自転車に乗らなければならないルールになっている。自然と場内は一部の「頑張れ!平原」から「ひーらはらっ!」コールの大合唱に変わった。どんな形でもゴールしたい、それがプロとしての責任でもあり、応援してくれたファンのためでもある。痛々しい姿も、必死にゴールを目指す平原の姿には感動を覚えた。これが他の競技だったら、こんなことはあるのだろうか!?これこそ競輪の魅力の一つではなかろうか。ファンに一礼してから引き揚げた平原の姿は大袈裟ではなく。神々しく映った。やっぱり、競輪はいいと、思った瞬間でもあった。
浅井の巧さ、新田の爆発的なスピード、他の選手も持ち味を出し切ったKEIRINグランプリ2018、その中でも清水裕友(山口105期)の健闘は光った。初出場ともなれば、緊張して自分の考えるレースができなくなるのが至極、当然であろう。ところが、清水は違った。百戦錬磨の8選手を相手にスンナリ近畿の後ろ、5番手を確保してしまう。そこから一か八かの捲り勝負。優勝を狙うなら第2センターくらいから踏んでも良かったのだろうが、バックストレッチ前から仕掛けたところに自力選手としてのプライドが垣間見られた。表彰台には僅か届かない4着だったが、2019年の飛躍につながる走りだったように思える。
脇本、新田は昨年以上に競輪への参加は少なくなりそうだが、逆に言えば、清水世代にチャンスが転がり込んできたとも言える。果たして、今年は誰が一番目立つのか?売り上げ低迷にあえぎ、将来像がハッキリ見えてはこない現実。だが、今年こそは堂々と、頑張った!そのように胸を張って言える競輪業界であって欲しい。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター